作品タイトル不明
希望は…抱いてはいけない
学園に通うのも残り僅か。
『ねぇ、王子の婚約者と側近は誰になるのかな?』
ここ数日、その話題で持ちきり。
その二つの問題は自身が喩えその問題の当事者になる可能性がないとしても、現在婚約していない高位貴族は多数存在。
王子の婚約が決まった瞬間、貴族令嬢達の婚約のシーズン到来。
伯爵家以上の令嬢は王子の婚約者候補となっているので、幼い頃に婚約者がいる者を除けば王子が婚約するまで誰とも婚約が出来ない状態にある。
王子と年齢の近い令嬢達は王子との婚約の可能性を考え婚約者を決めていない貴族が多数存在している。
なので、王子の婚約が決まった瞬間一斉に婚約者探し…では遅く、水面下では既に婚約の話が持ち上がっている令嬢もちらほら存在している。
そして、令息の方も側近となれば自身の爵位より高い令嬢との婚約が可能になる。
可能性がある者は普段声を掛けるのさえ躊躇ってしまう自身の爵位より高い令嬢に存在を誇示し、
側近として可能性の無い者は爵位に釣り合った令嬢にいち早く贈り物などをし自身の存在を売り込み動き出している。
だが、全ては水面下なので王子の婚約が発表されるまでは分からず、婚約や側近が発表されてからも相手の心変わりを考えると気が抜けない状態だ。
今のところ王子の考えを読み取るのは難しく、常に側にいる時間だけで判断するのなら婚約者はローレルであり側近もマグドイアの名前が上がるだろう。
それは過去と同じように。
それでも過去と違い決定打に欠ける。
婚約者ローレルの場合、意気込みは認めるが他の候補者達と比べ圧倒的に能力は劣り公爵令嬢と言えど生粋の高位貴族ではない事。
そして、一年生から評価は悪かったが最近になり更に本人の悪評が目立つようになり他者からの…特に下位貴族と平民からの支持はとても低い。
『平民風情が調子乗ってんじゃねぇ』
側近のマグドイアの場合は、最近では焦りからか優秀な平民への無意識の差別発言が噂になり人気が急激に低迷し始めていた。
そんな噂が囁かれるも婚約者も側近も私には関係ない。
関係ないのだが、廊下などですれ違うと視線を感じる。
結局婚約者候補辞退宣言は叶わず、候補のままなので勘違いをさせてしまっている可能性がある。
私としては今からでも否定したいが、王族の面子もあり難しい事を知らされた。
『私には関係ない』と言い聞かせ普通に過ごしてはいても周囲の誰が婚約者になるのかを予想する会話の中に私の名前が挙がることがたまにある。
爵位では可能性はあったとしても、私の「出生」が邪魔をしていた。
周囲には「出生」を言い訳にしていたが、一番の理由はあの男が私を王子の婚約者になど認めるはずがない。
何がなんでも私が婚約者になる事を阻止するはず。
そして、溺愛する娘を婚約者に。
過去を考えれば私を苦しめる事が出来るなら、「殺す」事も厭わないと言える。
それ程私はあの男に疎まれている。
あの男が愛する女の命を奪った私が幸せになることを決して許しはしない。
過去、私は捨てられたので、今回の人生では私があの家族を捨てて家を出ていく。
私の意思で「捨てられる前に捨ててやる」と意気込んでいるが、彼らにとっては不要なものが漸く「消えてくれた」としか思わないだろう。
後悔も喜びも感じない…きっと、今まで通り家族四人で過ごしていく…
あんな家族に「囚われたくない」という思いから、救いを求めるようにルディルの事を考えてしまう。
卒業してしまえばルディルとも会えなくなると思うと、視線が彼を探してしまうが目が合うのは何故か王子だった。
婚約者候補の一人として会った時に、「ドレスを贈る」と向こうから口にしたがドレスは今のところ届いていない。
欲しいわけではなく、「やはりあの人の言葉は信用できない」と。
私が選択肢を変えた所で「人生は変わらないんだ」と再確認しただけ。
いくら別の選択をしても、結局私に友人はいないし、誰かに認められることはない。
きっと卒業式でも私はあらぬ罪を押し付けられ屋敷を追い出されるんだろう。
そして、一ヶ月もしないうちに私は…
死ぬ。