軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

放課後

「卒業試験は平気なのかしら?」

ローレルはドレスの事で頭がいっぱいだが、もうそろそろ卒業試験が控えている。

三年間の集大成の試験なのでこれに落ちると卒業資格は与えられない。

貴族が学園を卒業できないとなれば笑い者にされ二度と社交界に復帰は叶わないと言われている。

過去の貴族達を思い出すと、卒業試験だというのに多くの者が余裕な表情で焦った様子はなかった。

きっと、点数が悪くても最終的に成績を買えば問題なく卒業できると確信を得ていたので真剣に試験と向き合う者は少なかったのだろう。

過去の今時期には彼らは焦ることなく、卒業パーティーでどの令嬢をダンスに誘おうかと物色していた。

だが、今回は学園の雰囲気が全く違う。

金銭を受けとり不正に手を染めていた教師は学園を辞めさせられ、学園側が試験の不正に対して神経質になっている。

今、卒業試験で不正を考える貴族はいない。

その為、皆が卒業試験を突破する為に図書室に入り浸ったり教師に何度も訪ねにいったりする姿を目撃する。

私としては二度目の卒業試験なので緊張もなければ、勉強しようという気力もない。

合格点を取る自信はあるし、万が一不合格であっても社交界に興味のない私には痛手でもなんでもない。

そもそも、貴族でいるつもりはない。

「寧ろ、わざと落ちようかなぁ」

そうなれば私のいらない名声もがた落ち。

貴族社会で笑い者として語られるはず。

そうなればきっとあの男は怒り狂うだろう。

だけど、過去に試験の不正があったのは確かで私が無回答で提出すれば今回も誰かの仕業だと調査が行われる可能性がある。

私が考えなしに首席を取り続けた為に『今回の試験分かりませんでしたぁ』なんて言っても教師陣は信じないだろう。

再試験を受けさせられたり、誰かの陰謀だとして再び騒がれ注目を浴びてしまうことも。

これ以上目立つようなことはしたくない。

「……私って……今でも首席に拘っていたのね……」

過去の私は首席になりたくて寝る間を惜しんで勉強していた。

それが漸く叶った時、認めたくないがやはり手放したくないと首席である事を維持し続けた。

やり直しても根本に有るものはそう簡単には変わらないらしい。

首席になったところで誰も……あの男は私を認めたりはしないのに……

「何やってんだろうな……」

神様はどうして私にこの様な機会を与えたのだろうか?

私よりも人生をやり直したいと思う人間は沢山いるだろうに……

「人生って何が起こるのか分からないな…」

何の思い出もないが、教室で物思いに外を眺めながら耽っていた。

「あっ……」

誰かの声で振り向くと扉付近で立ち止まっている人物がいる。

「……ル……」

そこにいたのはルディル。

クラスメイトなので教室で偶然鉢合わせることはあるし、問題ない。

けど、気まずさを感じた。

もう、あの事件を掘り返す人物は居ないとは思いつつも律儀に私達は距離を置いていた。

教室内ですれ違う瞬間視線が絡むだけで妙に緊張し、咄嗟に王子を確認してしまう。

今なら会話しても誰の視線もない。

私達は別に如何わしい関係ではないし、恋人でもなく、只のクラスメイト。

「ぁ……あのっ」

バタバタバタ

貴族が通う学園を走る生徒は珍しく、足音が響きルディルと私はその人物が私達の教室を通りすぎるのか入室してくるのかを待った。

「……あっ……私……忘れ物しちゃって……」

クラスメイトの女性が勢いよく教室に入ってきて、窓側で振り向く私と扉付近で立ち止まっているルディルの視線に圧倒されてか教室に戻ってきた理由を説明する。

「失礼しました」

女性は忘れ物を手に持ったまま急いで教室を出ていく。

「……俺も……もう行きます」

何も答えられず彼の背中を見送った。

過去に戻ってまで思い出作りをしたいなんて……

私には必要のない学園での思い出。

無駄な感情を払い除け、一人誰もいない教室を出て屋敷に帰る。