作品タイトル不明
過去と違う行動をしても結果は同じ
王子の忠告もあり、私とルディルさんが結託して『ローレルを陥れていた』という噂は立つことは無かった。
今、学園を占めている噂は……
『王子を追いかけ回している下品な令嬢』
『王子の隣を我が物顔で独占している厚かましい女』
ローレルが話題を独占している。
令嬢達の間では
「王子自ら婚約者候補者達と時間を取り『公平』に審査されているので、その期間は『邪魔』をすることはしない」
というのが、暗黙の了解となっていた。
にも拘らず、ローレルだけは令嬢達と対面する時間の昼休みや放課後、王子の後を追う姿が目撃されている。
それだけでなく、候補者達に会う部屋までローレルが一緒に訪れるんだとか。
『あの方、どうにかなりませんかね?』
『あの方とは?』
『あの方と言えば、ローレル様ですよ』
『あぁ……』
『候補者達との対面は王子と候補者の二人きりですが、終わるまで外で待っていらっしゃるのよ』
ローレルとしては芸術祭の汚点から挽回したい気持ちで焦っているのだろう。
今の行動が挽回になるのか甚だ疑問ではある。
「結局あの二人は婚約するのよね……」
過去のローレルが王子と婚約したのは私だけが知っている事実。
過去を知らない令嬢達もローレルの自分本位の行動を『止めるべき』『牽制するべき』と考えているようで周囲を見渡してローレルに突撃できそうな令嬢を探している。
彼女達の視線が私を捉えると、突き刺さる程の強い目力で私を射ぬく。
『あんたがどうにかしなさいよ』
『あんたの義妹でしょ』
面倒事に巻き込まれたくなく、令嬢達の視線の意味に気が付かないフリをする。
すると、令嬢達はひそひそと話す。
様子から、私の立場についてだろう。
認められない『公爵令嬢』の私。
公爵に溺愛されている『公爵令嬢』がローレル。
『行きますわよ』
諦めたように令嬢達は去って行く。
万が一ローレルに忠告をして公爵の逆鱗に触れてしまい、以前学園を追放された生徒達の二の舞にだけはなりたくない思いから令嬢達はこの状況に耐えるしかないのだろう。
「今日もなのね……」
二階の廊下から王子を取り巻く集団が目に入る。
この光景は過去にも何度が見覚えがあった。
王子の隣を我が物顔で寄り添うように歩くローレルに、王子の側近を狙う令息達ががっちりと王子の周囲を固めている。
その光景を目撃している生徒達は彼らに近寄ることもせず、無言で冷ややかに眺め続ける。
彼らの向かう先は温室なのか、ただの散歩なのか分からないが王子の歩調に合わせて歩く集団は時に通行の妨げとなっている。
彼らはきっと周囲に迷惑を掛けていることにも気付いていない。
王子の取り巻きにさえなれば周囲が道を開けるのが当然と考え、今も道を譲り彼らを避けた生徒がどんな思いをしているのかも気にもせず悦に浸っている。
『不埒な義姉よりローレル様の方がお淑やかで王子の隣に相応しい』
過去、私にその言葉を投げ付けた令嬢達はローレルには何も言わないでいる。
その姿を見ると、やはりどんな理由であれ王子の隣に相応しいのはローレルのようだと思い知らされる。