作品タイトル不明
乱入者
「それは許されないことだ」
私の独擅場だったところ、水を差すように割り込んできた人物。
一瞬で場を支配してしまう、根っからの権力者……
「不正は認められない」
王子、ラルフリード・オーガスクレメン。
今回の人生では私と王子はまだ出会っていない。
入学式で彼が新入生代表として挨拶したが貴族社会に疎い設定の今の私は相手が王子だと気付いていない無礼な女になろうと決めた。
なのでこれが初対面であり、彼が王子であるような特別扱いはせず同級生が急に会話に割り込んできたにすぎない対応をする。
「……本来ではそうかもしれませんが、何事にも例外はあります」
私が彼に対しても変わらず強気な姿勢を見せると、彼が王子だと知っている周囲はヒッと喉をならし驚愕する。
オーガスクレメン学園は王族が認定し、王族名が入った由緒ある学園。
その学園でしかも王族である王子に宣言している私。
巻き込まれた周囲は色んな事がありすぎて、何がどう悪いのか判断できないが漠然と『王子にそんなことを言ってはいけない……のよね?』と目を見合わせている。
「例外? 君達の順位を交換しなければならない例外とはなんだ?」
「……貴族が貴族であるために、最低限の秩序……規則は必要です」
「貴族の為に貴族以外が犠牲になるのか?」
「はい。それは貴族社会を維持していくには当然のものかと」
貴族に籍を置きながら、平民の立場でものを言う私に平民達は自分の事を言われていると思いながら聞いていた。
「当然か……君達二人は姉妹なんだろう?」
「はい、書類上では姉妹です。ですが、私と義妹では価値が違います。義妹と私を同等にしてしまえば、他貴族様の名誉を傷つけることになります」
「……価値……君も貴族だろう?」
「認められない貴族です。ご存じないかもしれませんが、私は……娼婦の娘です。私のような存在を貴族と認めるのは貴族社会では不名誉な事です」
「……どのような生まれであっても学園では平等、試験の不正は認められない。今回の件は私から先生方に報告をし調査も行われるだろう。詳細が分かるまで皆も今回の事については決して口外しないこと。それは家族であっても話してはならない。皆、いいな」
「「「「「「はい」」」」」」
今回の試験については王子が指揮を執ると宣言した為、これ以上騒ぎ立てる事が出来なくなってしまった。
私としては不満だが、多くの生徒が返事をしてしまったため同意するしかない。
返事をした生徒達は面白いネタだと盛り上がりたかったのが突然自身も『不正』に巻き込まれ、王子の登場により事なきを得て安堵している。
そんな中、ローレルだけは複雑な思いを抱えていた。
私の成績が事実だとは認めたくない。
公爵が本当に成績操作を行ったのか確認したい。
だけど、王子によって止められてしまった。
『家族にも話してはいけない』
公爵に確認したところで王子に知られることは無いだろうに、意外にも王子の言葉をちゃんと守るローレル。
これ以上巻き込まれたくない生徒は、そそくさとその場を離れ帰宅。
私も一人、馬車で屋敷に戻る。
「今回はどうなるだろう……」
私は私が不正をしていないことは分かっているが、私以外の人間が私が不正をしていないのを信じていない。
王子がどんな決断を下すのか興味はある。
今回もありもしない不正の証拠を出してくるのか……
「王子がどのような判断を下すのか見ものね」
今回の試験に不正が無いと宣言すれば、一位の私がFクラスにいることがおかしい事に。
不正があったと宣言すれば、貴族の試験結果は全て疑わしい事になる。
そうなった時、Fクラスの人間が学園に不満をぶつけるだろう。
Fクラスのほとんどが平民。
『努力したにも関わらず、貴族優先でFクラスを押し付けられ真っ当な評価を受けていなかったのではないか?』
そう、疑わずにはいられなくなる。
今回の私の不正している・していない問題は、私一人ではなくFクラスにとっては影響が大きい。
私が不正していると信じたい、ローレル。
不正は無かったと願うFクラス。
「ん? クラス編成時と今回の試験でどちらかが正しく、どちらかは間違っていたことになるってことは……どちらにせよ、不正はあった事になるのか? あれっ? なんかややこしくしちゃったかも…………よしっ、全ては王子に任せよう」
なんかよく分からなくなっちゃった。