軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

必要のないドレス

生まれてから一度も採寸されたことはないので、私は常に既製品の物を着用している。

サイズに不具合があったとしても私に一切興味のないあの男が分かる筈もない。

私の身の周りの物は全て、マイヤが担当している。

学園の制服も、貴族でありながら特注ではなくおおよそのサイズで作られていた。

その事に過去の私は不満を持つどころが気付きもせず、成長するのを見越して少しゆったりめに作られているのかなぁ? としか思わなかった。

数日後。

驚くことに前回とは違うことが起きた。

「こんなに……どうしたの?」

私宛に既製品のドレスが何着も届けられた。

これは何かの罠なのかと考え

『私のではないわ』

『必要ない』

『ローレルに全部差し上げて』

中身を確認せずに私の部屋から全て追い出した。

するとマイヤから

「あれらは全て奥様からお嬢様への贈り物です」

告げられるも尚更疑ってしまう。

過去のあの女は私にドレスを贈ったことはない。

唯一卒業式に用意したドレスは、ローレルと同じ生地のドレスを準備していた。

「姉妹なんだから似たようなドレスにしたのよ」

その言葉を信じ着用するが、ドレスを知らない私に渡されたのは時代遅れの野暮ったいもの。

ローレルのは流行りの形で、私はローレルの引き立て役にされていた。

何も知らない私は入場した際に貴族の視線や囁きで真実を知り、恥ずかしさと悲しみで苦しかったのを思いだす。

そんな女からのドレスなんて着たくもない。

それに今の私をパーティーやお茶会に誘う人間はいない。

いたとしても私のところに招待状が届く前に断りの手紙が相手に届けられている。

過去の私も王族主催のものと、卒業パーティーしか行ったことがなかった。

王族主催のパーティーを終えたので、私が参加するパーティーは残すところ卒業パーティーのみ。

なのでドレスは一着もあれば充分だし、卒業式のパーティーは……

「そうよっ、私は卒業パーティーの後すぐ屋敷から追い出されるんだった」

数枚の金貨の入った袋を頬に叩きつけられ郊外に捨てられる。

今回も追い出されるだろうから、お金は沢山持って行かないと。

別にあの時と同じように死んでも良いんだけど、今回の人生にはその後があっても……

「その後? 私……生きたいのかな?」

あんな惨めな人生でも……

誰にも必要とされず、誰にも気付かれない所で憐れに死んでいく人生の続き。

「違う、私は復讐がしたいんだ。あの男に復讐出来ればそれで良い。幸せな人生なんて私には必要ない」

その後、あの男は妻に泣きつかれたのだろう。

「ドレスがそんなに気に入らないのなら、お前はパーティーに参加する必要はない」

男がわざわざ私の部屋まで乗り込んできた。

きっと『贈ったドレスを気に入らないと突き返された~』とでも言われ、妻に泣きつかれたのだろう。

あの人の為なら、憎い私の元へやってくるのね。

「はい、私にパーティーへの招待状など届いたことは一度もないので問題ありません。パーティーに招待されない私にはドレスは不要ですので全て公爵様の大切な娘のローレル様に頂いてもらいました。その方が公爵夫人もお喜びになるでしょう」

「……お前は贈った人の気持ちが分からないんだな」

忌々しそうに吐き捨てる男。

私の中にも存在していた対抗心が沸き上がる。

「では、公爵様にお尋ねいたします。私が過去に毎年公爵様の誕生日に贈っていた似顔絵に詩、タッセルやハンカチはどうされていますか?」

今では贈るつもりはないが、記憶が戻る前は愚かにも毎年思考を凝らしながら贈っていた。

「……そんなもの、今は関係ないだろう」

男の言葉で私の贈り物は見向きもされずに処分されていたのだろうと分かる。

「そうですね、あんなごみの話は今は関係ありませんね。公爵夫人のお気遣いに感謝と共に謝罪も致します……これでよろしいですか? 他にも何かあります?」

挑発的だと分かりながら自身を止める事が出来なかった。

強がっていないと涙が溢れてしまいそうで……

「……お前は本当に不愉快だな」

男の言葉に泣きそうになるのを手を強くて握りしめて堪えた。

「……ぁりがとぅございます」

声が震えてしまったが、気付かれていないはず。

男は乱暴に私の部屋から出て行き、愛する妻の元へ。

その後、私は仕方なく夫人に謝罪する。

「先程は大変申し訳ありませんでした」

「いいのよ。あのドレスはニルヴァーナ様のドレスだから宝物庫に大切に保管してあるから自由に使用してね……」

切なそうに微笑む夫人の姿は端から見れば慈悲に溢れていたことだろう。

過去で学んだ私には

『そんな古びたデザインのドレスは可愛い私の娘には着せたくもない。パーティーに必要のないお前に似合いのドレスだ。誰にも呼ばれることのないお前の為のドレスを一生そこで眺めていろ』

にしか聞こえなかった。