軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話 何を浄化されたのですか?

その昔頻発した事件があったそうなのです。

気に入った護衛騎士がいると突撃して、責任を取ってくださいという聖女が……。

そう、神の力を失った責任というものを負わされる護衛騎士。

なので、互いに神から力を授かり、接触するとデメリットしかない聖騎士を護衛につけようと国が判断したそうです。

しかし、護衛が護衛対象に接触できないとなると、問題になるので、特殊な鎧が用意されたという経緯があるのです。

因みに今私が身につけている全身を覆う旅人の衣装も特殊な素材でできているので、人にぶつかった程度では問題になりません。それにフードもかぶっているので、顔も見えません。

ええ、浄化石を浄化しに行くときの必須アイテムになります。

「今、神聖女様を失うわけにはいきません」

「はぁ、祭りぐらいで大げさです」

「では、ここで何をしていたのかお尋ねしてもよろしいのですか?」

「うぐっ」

ここで何をしていたのかですって?

私は路地に不自然に積み上がった酒樽に視線を向けます。

誰かが祭りで飲むために用意したような酒樽が五つほど積み上がっているのです。

「ふふふ、秘密です」

と言ったにも関わらず、聖騎士ラフェシエンは積み上がった酒樽を剣で切ってしまいました。

あの? 酒樽って剣で切れるものなのですか?

そして、ぶどう酒が出てくるはずの酒樽の中から真っ白い灰が石畳にこぼれ落ちていっています。

「何を浄化されたのですか?」

その白い灰を手に取りながら、私に聞いてくるラフェシエン。

「だから秘密です」

私は手袋をした右手の人差し指を口元に持ってきて答えます。

祭りは楽しまなければなりませんからね。

「神聖女様! これは由々しき事態です! おわかりにならないのですか!」

ラフェシエンが声を荒げながら私に詰め寄ってきます。わかっていますよ。

「静かに。ねぇ、聖騎士ラフェシエン様。みんな楽しそうよね」

私は路地の向こう側の大通りを見ながら言います。この祭りを楽しみにしている人もいるでしょう。

田舎からわざわざ祭りを見に、王都まで来た者のいることでしょう。

「主神アクティース様の望みはどのようなものかしら?」

私は首をかしげながら問いかけます。

この祭りで祀り上げられている主神の名をわざとだして問いかけます。

「わかりました。神聖女様。人を連れてまいりますので、安全な場所まで移動いたしましょう」

違います。そのまま事を荒立てずに立ち去って欲しいということですよ。

「嫌ですわ。私はこのまま祭りを楽しむと言っているのです。目立つ聖騎士の方とご一緒だなんて嫌ですわ」

「私個人としましても聖騎士としましても、神聖女様をお一人にすることはできません」

話が平行線です。

このままだとパレードの時間になってしまいます。

仕方がありません。

「七色の光を神の名のもとに化現いたし給え……」

「フィエーラ様!」

「光は空間に溶け新たな道を開け『レレイエーラ』」

私は七色の光に包まれて、その場から消え去りました。

そして、トッと暗い石畳に足をつけます。

周りは先ほどの賑やかな光景とはうってかわり、薄暗い路地です。

その路地を足早に進みます。

確かに私がわがままを言っているのは自覚しています。聖女の役目を放棄しているとも捉えられます。

でも、聖女なんて役目をしていると、同じ日々の繰り返しで大した楽しみがないのです。

だから、今日ぐらいは聖女でなくてもいいとは思いませんか?

だって、神輿から花を撒くという役目をしたい聖女はたくさんいるのです。

だったら希望する方にやってもらうほうが良いではないですか。

私でなくてもいいのです。

路地の先が光に満ちて、人々のにぎわう声が聞こえてきてきました。

良かったです。

私は進む足をピタリと止め、路地に積み重なって置かれておる酒樽を見ます。

その酒樽に手を添えました。

「主よ。この良き日に人々から幸せを奪おうとする厄災を滅する力を与え給え『ヴァンレディオ』」

ふぅ。これで残り一つです。

パレードが始まるまでに間に合いそうです。

私は来た道を引き返し、路地の奥へ駆けていきます。

人々の往来が激しい場所は、外套をまとっているとはいえ、危険ですからね。

いくつかの角を曲がり、祭りのメイン広場となっているところに到着しました。

私は路地から一歩出て、周りに視線を巡らせます。

たくさんの屋台が並び、お肉を焼く匂いがここまで漂ってきます。

大道芸人が芸を披露していますね。

簡易的な舞台が設置され、演劇の公演が行われています。

人々が楽しそうに行き交う広場。

ありました! が、中央にある時を知らせる鐘の塔の中ですか。うっすらと黒いモヤが湧き立っています。

一日に八回鳴らされる鐘の塔があるのです。

昔は手動だったらしいのですが、近年魔道装置というのを設置して自動化されたので人の出入りがない塔なのです。

これ私が入ると怪しい人認定されてしまうではないですか。

「困りました」

「何が困ったのですか?」

「ふぉっ!」

すぐ近くからラフェシエンの声が!

横に視線を向けると、思っていた以上に近くに金色の目があるではないですか!