軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第69話 最年少の賢者と友達。

エール先生によると『賢者』とは一つの敬称であるようでもあり、この学園内ではある程度の権力を持つようだ。

強い魔法が使えるものは『魔導師』で、更に世を導くほどに賢いものが『賢者』と呼ばれる。

賢いだけで賢者とはならないのは賢いだけでは新たなものを生み出す力がないのだと。なにかの成果や推薦を受けるだけの人物でないと賢者にはなれない。

学内の研究資材の優先権や学内裁判の議席権、使ってない建物や部屋の優先使用許可などの恩恵がある。ただ5歳での賢者への推薦はこれまでになかったことで学内は騒然としている。

魔導師への推薦が14人、賢者への推薦が3人。

資格としては充分だが基礎学習をウンウン唸りながら学んでいる自分には過ぎた称号だ。

それと新入生との中でアーダルム先生と同じ賢者のローブは目立つことこの上ない。

「ミリー、新作ですどうぞ。皆も」

「ありがとうございます!!」

「フレーミス様に感謝を」

「感謝」

新型のペンをみんなに配る。

金属製のものも開発を続けてもらって幾分マシになっている。ペン先のみ鳥の羽根が使われているものも出来ていたり……なんで原点回帰した?

キャップの性能も良くなってきてインクだれすることもなく携帯できるのは良い。

インクが内蔵できればもっと良いんだけどな。インク瓶ってインクが垂れて汚いし誰かがガチャンってこぼすのもよくある。袖が汚れるもの問題だが机の上の紙や本への被害が尋常ではない。

本の表紙が薄い紙ではなく分厚い板っぽいのはインクが溢れるのを想定して中の紙を保護しているのだと分かる………。羽根ペンはつけすぎても細いから大きくたれない。弾力があってそこそこ書ける。羽根自体の美しさや大きさが学生にとってのステータスになる。といった部分で優秀らしい。自作のペンを使っている私達は変な目で見られている気もするがそこそこ人気である。

ペンが乾くのを待つ前に布でくるんで持ち運ぶのに比べるとキャップもあって携帯性は確実に勝っている。

洗濯用過酸化水素水も漂白剤だけあって洗濯には大活躍である。

リメイクして売る賭場の服飾部門もうまく行っているみたいだし今度このグループの子を連れて行こうかな……タラリネは元気だろうか?

この学園内の暗黙のルールも分かってきたのだが「貴族は平民の生徒たちに施す」ようにして助ける。この行為には意味があるようで自分のグループの人のものは私ができるだけ支払うようにしている。もはや完璧にフリムちゃんグループだ。

食堂でも無料のものをもっさりとって、有料のものも人数分頼む。

いや、うん。慣例だ。だからそうするべきだ、しなければ侮られるとエール先生には強く言われた。

そもそも、王様からの報酬もまだまだ残っているし伯爵の年金によって懐具合は悪くはない。

新しく増える配下による支出。騎獣の食費に情報工作費用……。お金を使わずに貯金していた小市民な気質もある自分にとっては毎日出る金額も微妙な気分がする。誰かに奢るなんてこともしてこなかったしね。必要経費と割り切りたいがやはりストレスである。

周りからの視線は多いが「敵対しているかもしれない」っていう前提があるのはとても怖いものだ。現代では道を歩く人なんて気にしたこと無いのにな。まぁそれよりも媚びてくる視線が多い。

跡取りではなく現役伯爵が学生として入ってくる事自体が珍しい。しかもできたてホヤホヤで人材不足。だからこそ就職先として優秀と見られているのか廊下を曲がると「雇って欲しい」と膝を折ってお願いしてくる人達もいる。フリムちゃんは詳しくないけどホストクラブの「いらっしゃいませご主人さま」ではないだろうか?いや「お嬢様」か?…………かなり精神が削られているのを自覚する。慣れない。

いや、貴族と平民で差別やいじめが当たり前な学園生活よりはよっぽど良いがフリムちゃんへの精神的ダメージは計り知れない。キャイキャイ喜べる5歳児精神だったらどれだけ良かっただろうか。

うちのグループだけではなく見かければ他の平民のものを支払う。うちのグループでなくとも傘下のグループが出来ている気がする。水飲もう。

「リーザリー達はどうして私と一緒にいてくれるの?」

「初めはドゥラッゲンと付き合いがあることに文句を言いたかったのですが貴女を見てるとヒヤヒヤして放っておけないのですわ。そこの火の駄目女と一緒でね」

「リーズ酷い」

「だまらっしゃい。せめてシャツをまともに着てちゃんとスカートはいてからおっしゃいなさい」

「火の魔法はスカート持ち上がる。リーズはやらしい子」

「んなぁっ!!?」

リーザリーの家名はタロース、土の名家でドゥラッゲンとは大家の座を争っているそうだ。

テルギシアは入学試験からスカートを履かなくなった。スカートを履かないのは持ち上がることを嫌がったのか。火の使い手なりの悩みなのかな?

「じゃあ髪が短いのも?」

「そう、髪は燃えるから」

「嘘おっしゃい!貴女の家でそんなに短いのは貴女だけでしょう!?お母様に何度注意されていたんですか!!?」

「リーザリーさん、どうどう……公衆の面前です。落ち着いて」

「はぁはぁ……すいません、はしたなかったですわ……それとリーズとお呼びください。伯爵なのですからフレーミス様も人を呼ぶ時に気をつけるべきです。平民達相手にも」

「わ、わかりました。二人も私のことはフリムで良いですよ?」

「わかりましたわ」

人をさん付けで呼んでしまうことがあるがエール先生にも注意される。私が親分さんやローガンさんと呼ぶのはとても良くないことらしい。

こちらの言葉では名前の前にミスターとつけるみたいな意味があるとか。

貴族であるからこそ身分があるからこそ必要な序列や秩序があって、言葉一つで国の威厳にもつながるとか……。そういうのはなかなか慣れない。現代で染み付いた常識で歳の上の人を呼び捨てっていうのは難しい……少しは理解できるが慣れるのはやはり時間がかかる。

それはそれとしてなかなか学園生活にも慣れて来た。立ち振舞いを要求されたりお金の支払いはストレスだけど友達もできたし魔法や精霊、未知を学ぶことは楽しい。

リーザリーは世話焼きなお嬢様だし、テルギシアは小動物のようで見ていて面白い。

ミリーは元気なお姉さんでダーマは無言で私の周りに目を配ってくれていてミキキシカもそれとなく守ってくれているように見える。リコライはワタワタついてきてくれる。

他にも挨拶したり友達は増えた。予想していた貴族と平民で「おっと足が!」「平民は鈍いな!」「そら!拾え!」とか言ういじめはなかった。この年頃の少年少女なんて力を持っていれば当たり前にそういう事があるものだと思っていたがそうでもなかったらしい。

授業の体育だけは私にとっていじめなんじゃないかと思ったが……。戦わなくてもいつか体力は必要かもしれないからね。

ミリーは走るのも速い。私は体育ですぐバテて歩くが彼女は多分車よりも速い。

「相変わらず速いわねー」

「ぐぅ」

テルギシアは負けず嫌いなのか倒れるまで走る。この娘は歳上で無口なのになぜか小動物のようで面白い。

「お水いります?」

「うん」

「わーたしもー!!」

「ミリー!砂埃が入りますわ!」

「ご、ごめんなさい?!」

多分オリンピック選手よりも速いスピードでミリーが走ってきた。しかも抑えたスピードでこれだ。

筋肉がめちゃくちゃついているわけではないのになんでこんなに力が出るんだろうか?

「貴方も淑女としてもう少し慎みを持ってくださいまし!」

「わ~おばあちゃんみたーい」

「せい!!」

「いったーい!?」

リーザリーにお尻を平手で打たれたミリー。

この学校は平民でも才能を拾い上げようとする部分があるし、この娘は学力はともかくこの体力で入学出来たのかな?

「ニシシ、伯爵!私もお水いただいてもよろしいですかー?」

「どうぞ」

ミキキシカさんはかなり運動ができる。走った後は自由鍛錬の時間によく弓を使っている。勉強はそこそこ。糸目で胸は普通の女性。

グループでは私の荷物を持ってくれたりと気の利く下っ端ムーブをしているようだがなにかあるのだろうか?

「ミキキシカさんはなにか特技があるんですか?」

「私ー?私はこの目でーす」

ミキキシカさんは私に近づいてきて両目を開けた。

全体が白に青緑にグラデーションがかかっていてとても綺麗である。本来あるべき白目の部分はない。

「よーく見えるからね。貴族様でも偶にこーなる人がいるから調べたいんだってー」

「へー、とても綺麗ですね」

「ありがとー、そんでこの目は君たちについて行けって言ってるわけさ!だからこれからもお世話になるからお世話するよ伯爵!」

お世話になるからお世話するって面白いなこの娘は。

目が喋る……その目は精霊や魔法が関係してるのかな?

「よろしくお願いしますね」

「あ、できればダーマもよろしくお願いします!」

「ダーマさんも?」

ダーマは背が高い男の子で剣を使う。

単純な剣技だけであれば騎士志望の背の大きな子と張り合えるだけの力はあるように見える。

「はい!あいつ私がいないと何も決められないんで!」

「ダーマさんの意思もあると思いますが……」

「このままじゃダーマは使い潰されて終わりなんですよ。適正ってやつですかね」

ダーマは体格が良い。傭兵の息子で計算もできる。その力を認められて入学を勧められたそうだ。

ただ魔力などは無いし、このままでは魔法を使える騎士に使い捨てにされてしまうのが落ちなんだとか。

よく人を見ているというか、ミキキシカさんは計算高いな。

「昔っから自分じゃ決められないって言ってて……なのに私の学園行きが決まったら俺も行くって聞かなくって」

ん?これは?

「なるほど、私は新興の貴族で人が足りていません」

「ではっ!」

嬉しそうなミキキシカさん、私もニヤつきそうになるのを我慢してちゃんと伝えないといけない。

「ただ私は仕事をしながらとは言え貴族科に進学予定です。騎士科へ進学とは言わずとも学力でついてきてもらいたいです。私の役に立ち、私に忠誠を誓うのであれば私は彼を登用しましょう」

「ダーマの分まで私が頑張るっていうのは?」

「ありです」

「がんっ!ばりっ!まっす!!」

「ただ、できるだけは手助けさせてもらいますよ。はい、水!」

「いただきまっす!!」

これは、明らかに恋ではなかろうか?

私は憧れを持ったことはあるが恋までしたことはないが……十数歳の恋なんてすぐ散るものかもしれない。

身分社会や彼女の希少性を考えればきっと彼女は望む結婚なんてできないんじゃないかとも推察できる。

もしもうちに来るというのなら、働きによって彼らをくっつけることぐらいなら出来るのではないだろうか?いやー、ニヤニヤしてしまいそうだ。これがマンションの周りにいたおせっかいおばさんの心境だったのだろうか?

走るダーマのもとに駆け寄って背中を叩くミキキシカさん。いや、ミキキシカ。

色々と面倒もある学生としての生活だが、全部が全部投げ出したいほどに嫌というわけではないな……私も走ろっと!