軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第366話 シャルルとガリアス君(ネーサン?)

このお茶会、数回も続けるとギスギスした雰囲気は軽減されてきた。

なにせ「王家相談役」の肩書を持つ私がこのお茶会を主催することで一応公的なものになっている。しかもお見合い大会参加者のペーパーテストの時間は明確に減る。

私がいない間はストレスから衝突もあったようだがそれも激減した。

お茶会には男性もそれなりに参加してもらうことで同性だけだと歯止めが効かなくなることを防いでいる。

小国からの参加者を虐めたりすれば女性社会とは別の社会を生きている男性からすぐに噂になってしまうし、同じく男性同士で虐めがあればそれを令嬢は見抜くものだ。ある意味相互監視になり、争いは防げている。

まぁどっちにしろなぜかシャルルの横に居座る私へのヘイトは計り知れないのだが……。

「我が国においてこの茶は『身分無くして飲めぬ』と称えられております。高位貴族でもなかなか飲めるものではないほどには品位があるものでして……この催しに参加している平民の方々は二度と飲めるものではないでしょうし、味わって貰いたいですわ」

若干棘があるな。

身分の区別された社会だし、こういうこともある。多分彼女的には「平民にも寛容にしている」というアピールだろうけど……メモメモ。

他国の文化を知れるきっかけにもなるし、特産品の紹介をいれたりと面白い。

商売っ気のある人は物販まで許可を求めてくる。自分の身分や国の成り立ちなんかの歴史をつらつらと語る人もいれば……お見合い大会らしく、シャルルへの「愛の詩を読み上げる」なんてこともある。なんか凄い恥ずかしい。

ただ問題も少なからず存在していた。

それなりに近くの席の人と交流することもあってかなり打ち解けてきたわけだがオベイロスの有力な子弟の引き抜きが行われている。

このお見合い大会には貴族だけではなく有力な商人の子弟や特殊な能力で参加している平民もいる。

ミリーは希少な光属性、ミキキシカには精霊の目がある。そのため引き抜きのためのお誘いが多いこと多いこと……断ってくれているようだけど、そもそもうちの人材を引き抜かないで……。

他にもお見合い大会における虐めやストレス回避のために目安箱を設置しておいたのだが、沢山の……全く遠慮のない意見が来ている。

オベイロス王と話す時間を増やしてもらいたいというのは理解が出来るが……「謝礼を渡すので正妃に推して」「あの正妃気取りの女をどうにかしてください」「女性怖いからもっと時間減らしてお願い」「その席譲って」「自国の茶器が使いたい」「茶と茶請けの専門家を国元から呼び寄せたい」「フレーミスのあの態度どうにかなりませんか?」「不参加にしたはずなのに鎖で縛られていて逃げられないのじゃ。もっと酒よこせ」「王よ、今晩中庭にてお待ちします。貴方が来るまでいつまでも」「「お茶きらーい!もっとお菓子ほしー!!」」「平民なのに王族と話すの怖いです」などなど……。

可能な限り柔軟に対応しようとは思うけど、難しいなぁ。

私に対しての苦情も多いのは悪役令嬢としてフリムちゃんニッコニコである。

「シャルル、頬についてますよ」

「そうか?」

「こっちです」

シャルルの頬についた菓子くずをハンカチで拭う。

たまにこうやってシャルルと何か触れ合うだけで令嬢方はざわめく。何もなくともたまにいやらしーく、高圧的に見るだけで令嬢方は反応する。

私とシャルルが普通に会話するだけでも殺気が飛んできて……プロファイリングが進む進む。どうやらうまく悪役令嬢はしっかり出来ているようである。

もちろんこの程度で動じる令嬢はアウトだ。

あまりやりすぎると怖い気もするけど、これも『平和のための悪役令嬢』である。私が憎らしい動きをすればするほどシャルルの……いや、オベイロスという国の王妃の適性が見れるのだ!良い事してるなぁ!

改めて考えると悪役令嬢が良い事ってなんだろうか?…………いや、私の生存圏を平和にするため、ひいては国の未来を考えての行為だから良いことのはずなんだけど…………まぁいっか。

手元の苦情を見直すと……シャルルとフィレーから苦情がきているがそこは無視である。

シャルルの場合、王の立場で本気で逃げられれば止めにくいけど国として世継ぎの問題はかなり重要だ。参加しないと貴族からどうにか参加させてくれと苦情が来るし、私もシャルルにちゃんとした相手がいるのは賛成だし却下。

フィレーはエンカテイナー家と学園の賢者からの要請だ。彼女の実年齢はかなり上の方だし、相手が居ないと不安な親と配下がいるのだろう。エンカテイナー家は家臣も多いし逃げるごとにエンカテイナー家から歴戦の家臣が拘束に来ることになる。要望のお酒は出せば出すだけ飲んでしまうから却下で。

ガリアス君達双子の要請は受け入れよう。彼らは食べ盛りだし、ミリーと同じく「いくらでも食べられる性質」に見える。綺麗に盛られたお菓子では足りないのだろう。

ちなみにガリアス君は私のことなど気にすることもなく、お見合い大会を無視して遊びまくっている。護衛や教育係から逃げて下働きの部屋で寝ていたり、騎士から逃げることを楽しみにしているそうな。

ピュリー・ライアーム・アウアレア・オベイロス、ピュリちゃんは本と花が好きで勉強するか庭園の土をいじっている。たまに鳥や猫を追いかけて、好きな場所で寝ているそうだ。

ピュリちゃんは基本的に私から逃げている。何をどうライアーム派で教え込まれたのか、私とは目も合わせないし気が付き次第逃走の体制に入る。フリムちゃんは怖くないヨ?

「俺の茶だ!飲むと良い!」

「兄様、まずは作らないと」

ガリアス君のくじが当たった。

「お茶、作るの初めてだけど多分こんな感じだろ」

「おい、大丈夫か?」

ご機嫌に、危うい手つきでお茶を作ろうとしているガリアス君にシャルルが声をかけた。

シャルルとガリアス君はものすごく似ている。猫耳、猫尻尾、ピンク髪なのがガリアス君だとすぐに分かるけど顔や体型がほぼ同じ。二人が一緒にいると一卵性双生児にすら見える。

ガリアス君と双子なのはピュリちゃんであって、シャルルとガリアス君の関係は従兄弟である。

二人に嫌悪や拒絶と言った雰囲気はない。なんならシャルルが心配して声をかけたほどだ。ただ二人の関係はライアーム前王兄殿下がシャルルに頭を下げて公爵位におさまっていない以上、まだ「政敵」と言ってもいい。

二人が近くにいるだけ、それだけなのに周囲は緊張していて――――空気が重くなったのは感じ取れた。

「大丈夫だって!これだな!」

「まずはこちらでは?」

「ありがと、ピュリ!」

ガリアス君とピュリちゃんは二人セットで常に行動しているけど……心配だ。

なにせ見かけは大人だけど行動が子供である。実年齢5歳ほどとなれば熱湯を使うお茶は淹れられないのではないだろうか?

「よし出来た!あっつ、あち!?」

ガリアス君茶器を興味深そうに眺めて、茶葉を手で掴んでIN。

ドヤ顔でお湯を注いで……かろうじてお茶を作ったガリアス君。ハラハラしながら見守っていると、コップに一気に注いで――――ドバッとこぼした。

「<水よ>」

ハラハラして見ていたけどやっちゃったか。火傷しないように水を出す。

「ありがとフレーミスのねーさん!」

屈託のない笑顔でお礼を言ってくるガリアス君。

もしかしたら別の場所にもお湯がかかってるかもしれないから首の下から膝上ぐらいの範囲を水で包んだ。

安全第一とはいえ前の席は水浸しになってしまった。

「ありがとうございます」

「いえ、大丈夫ですか?」

「うん!ほらっ」

ガリアス君は素早く上に着ていたものを脱いでしまった。

下まで脱ごうとして従者に止められている。筋肉はついていないけど無駄な肉もついていない、シミ一つ無い肌。令嬢方がざわついたけど火傷はしていないって証明にはなっただろう。

床や机の上は結構濡れてしまった。このまま水を操作して何処かに水を持っていっても良かったけどあまりこの場で魔法を使うのはよくないのだろう。

しかもリヴァイアスは復讐を忘れないとか言われるし、私の杖は「決闘杖」とか言われている。あまり不要な魔法は使わないようにしないとシャルルの騎士や従者がどう動くかわからずに怖い。

ジュリオンも席を立ってこちらに来る途中だったけど目で制しておいた。大丈夫。

「代わりに従者に淹れてもらいましょうね。ありがとうございました。……それとフレーミスは私です」

「…………は?ねーさんじゃないの??」

「ある意味お姉さんですね」

私は誕生日不明なのではっきりとはわからないけど1歳か2歳、ガリアス君に比べれば年上だしある意味お姉さんではある。

「じゃあねーさんだ!ありがとう!!着替えてくるね!」

キャッキャといなくなってしまった。

明るく元気な子である。勘違いしてるような気がしなくもないけど、まぁすぐに訂正しなきゃいけないような問題でもないだろう。