軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第351話 異形の巨人⨂巨大フリム

膠着状態が続いたけど……少し勝負に出ることにした。

なにせエルストラさんは水属性の魔法使いであり、精霊を介しての攻撃は出来てはいるけど消耗が激しい。ブレーリグスは余力がありそうだけど、それもいつまで続くかわからない。

結構な時間削りあいになったとは思うけど、スーリから出続ける異形に限りはなく、負担はなさそうに見える。援軍を期待したいところだけど、兵は遠ざけていたからすぐにこちらにはこれない。……このままではこちらが危うい。

それに今なら――――……一つ手段が増えた。

「フリム、危険です」

「無理をする気は有りません。大丈夫ですのでここで待ってください。……<水よ>」

エルストラさんから離れて一歩前に出る。魔法の使用感が戻ってきたとは言え繊細なコントロールは出来ていないし、エルストラさんへの誤射が怖い。

後ろで無言で両手を床についたままのユース老先生。城の中にあった武器や防具、家具に使えそうな道具などなど、壁や床を動かして集めてくれている。

その中に使えそうなものがあった。

大昔に王都でリヴァイアスの屋敷に入るのに使ったフルアーマーフリムちゃんⅠ号機だ。

元は単なる鎧だったけど私サイズの子供用でなおかつ全身を覆った板金鎧。

当時は「屋敷に入ると謎に死ぬ」とかのセキュリティがあった。それのためこれを着て……重量から動けず、台車に載せられて入ることで安全性をチェックしていた。

あの後、たしか魔導鎧の開発のために私の代わりに入れたりと実験に使って…………これ自体にも内部にゴムスーツを仕込んだりと改良した。結局重量もある上に内部がギチギチになりすぎて着ることができなくなった失敗作である。

ぶっちゃけゴミだが、なにかの開発に使えないかと捨てることも出来ずにいて……いつのまにかこちらに運ばれてきていたようだ。

これを着ることは出来ないが、このリヴァイアスの領地ならこの重たい鎧だって水で動かすことが出来る。これを前衛にして、皆に休憩の時間を作る。

「<水よ。行けっ!!>」

向かってくるスーリの異形。彼らは痛みを感じないようで生半可な攻撃をしても意味がない。

だから運ばれてきた武器の中でも大きな刃のついた長柄のバルディッシュをフルアーマーⅠ号機に持たせて吶喊させる。

武器は手で持つ以外にも外から水の腕を使って動かしているため、大きい方が動かしやすい。

こちらに向かってくる途中で壁にぶつかって転けたりしている異形に突っ込ませ――――薙ぎ払う。

異形も少し避けようとしたようだが、力の使い方に慣れてきた私がそれを許さない。一瞬だけ水で相手の動きを拘束し、鈍った瞬間に切り捨てていく。

「……気持ち悪いですね<水よ>」

確実な殺害。自分でも動揺すると思ったけど…………胴体で切り捨て、上半身と下半身に分かれても異形はそのまま動いている。

どんな攻撃にも痛みを感じるようなことはなさそうだ。三つ四つと、半月のような大きな刃を持つバルディッシュを振るうことで彼らを分解していく。

たまに距離感を間違えて壁ごと切って刃を悪くしている気もするが、武器の所有者は多分私だし問題ないだろう。

不気味に突っ込んでくる異形をⅠ号機でなぎ倒し、後ろに集められた武器を水の腕で手元に集める。Ⅰ号機に持たせたのは一番強そうなバルディッシュだけど、長柄の武器は通路で使うには向かないみたいだ。

「スーリ!抵抗はやめてください!!」

ルカリムと向かい合って身体を凍らせているスーリ。

もしかしてルカリムやオルカスがスーリを取り囲んでいるのは約定とかではなく、スーリを止めようとしているのかな。

「やめれば……やめれば言うことを聞いてくれるか!!」

「意味不明です!!」

「ならお前を捕まえて!言うことを、聞かせる!!」

身体を割って、通路いっぱいに一気に異形を作ったスーリ。

異形は生まれてすぐ、その全てがこちらを見て……無我夢中に走ってきた。

「<水よ!飛ばし!穿て!!>」

Ⅰ号機を突っ込ませたけど質量に飲み込まれてしまった。

集めた武器を水の腕に持たせて飛ばし、異形の数々を貫くも……勢いが止まったのは一瞬。むしろ異形はさらなる勢いで通路を埋め尽くし、雪崩のように押し寄せてきた。

ユース老先生が通路から柱を出して潰すもそれ以上の勢いで向かってくる。

「<水よ!押し流せ!!>」

思い切り押し返すように水を使う。

ここはリヴァイアスの領域で、だいぶん戻ってきた杖の使い心地――――なのに。

「ぐぐ……<水よっ!!>」

「フリム!下がりましょう!?」

私が押し流す以上に、異形は数を増し――――押し寄せてきた。

感覚がおかしい。先程まで水はそのまま異形に当たったのに、今は彼らの近くの水を操れず、何なら反発されている。

行き場を失った水は上下左右に弾け、異形の近くの壁が崩れる。

ユース老先生が彼らの前方の床を無くしてくれたし、その場で落ちてくれればいいのに……異形はそのまま突っ込んでくる。駄目だ。水での抑えが効いていない!?

「<雷精よ!薙ぎ払え!!>――――チィッ!!?」

勢い良く迫る異形の群れにブレーリグスが前に出て雷撃を放ち、そして……何故かブレーリグスに、エルストラさんと共に抱えられている。あ、私を回収しようとしたエルストラさんの回避のために一緒に運んでくれたのね。

ユース老先生が大きく壁を動かしてくれて通路は分岐したようだ。異形の群れは回送列車のように横をすり抜けていった。

「きゅ、急に水が効きにくく……ありがとうございます」

「俺は、エルストラお嬢様を助けただけだ」

ブレーリグスから降ろされて、新たに生まれてきた異形の群れと向かい合う。

スーリはあれだけの異形を身体から出したというのに全く問題なさそうである。

「少し引きましょう」

「手筈通りに引きたいとこじゃが位置がズレてもうた。下がるんじゃ!」

退路は確保している。だけど異形の群れの突進を緊急回避した結果、位置がズレてしまったようだ。

私の水で解決できそうだったらそれで解決したかったけど……今この場にはエール先生もジュリオンもいない。無理をする必要は無い。ユース老先生はこちらにリヴァイアスの兵を連れてきたいのだろう。壁を減らし、少しずつ部屋が広くなってきた。

「<水よ。氷龍よ>」

飛びかかってくる異形に対して氷龍をぶつけていく。

相手はまっすぐ突撃してくるし、当てるのに苦労はしない。時間がなくてガチガチではない氷の龍だけど、ぶつかってから凍った方が動きは抑制できそうだし都合が良い。

ジリジリと下がりながらとにかく当てていく。

いつの間にか歩いてこちらにきていたスーリ。全身の氷はまだ張り付いて入るけど砕けた四肢は元に戻っている。

「領主である人間。こちらは言うことを聞いてもらいたい」

「スーリ、こんなことはやめてください」

「止める意味がない。これでどう?」

異形の群れは集まり、それぞれ身体を寄せると二十や三十の……数え切れない異形が組み合わさって……大きな体ができあがっていく。

完成した異形の巨人。すぐにユース老先生が床をなくしたが、大きな腕の表面からまた腕が生え、その身体が落ちないようにしていた。

「<水よ>」

「<雷精よ!焦がし、焼き払え!!>」

向かってこようとしている異形の巨人に水の弾丸と氷龍をぶつける。

水の効果は先程と同じく効果が半減。氷龍はそのまま当たる。ブレーリグスの電撃は先程までは一時的に弛緩していたはずなのに、そこまで効果はなさそうだ。

相手が大きくなって、倒せそうにない。

建物のようなサイズのその腕が振るわれるが氷龍をぶつけ続ける。

氷が砕ける破砕音が鳴り響き続け、なんとか腕の一つを弾くことが出来た。

本体と思われるそこから……腕は無数に増えていた。

「<水よ。形作り――――その剣で薙ぎ払え>」

水で大きな私を形づくり、相応のサイズの氷の剣を作った。

剣の形状はしているが棒だ。切れ味はないしそもそもそれを当てるわけでもない。

その剣は単なる目印であり、その剣の直線状に今の私のできる限界まで水を圧縮して放出した。

――――……弾かれるなら、弾かれる以上の水をぶつけてみよう。

ウォーターカッターを巨大にしたようなそれで異形の巨人を切り裂く。

部屋が大きくなり、あれの後ろに何もいないから出切る行為だ。相手はそこまで頑丈ではなく……大きな体を袈裟斬りに出来た。

……しかし、あまり意味はなかったようで、上半身に見える部分が分かれていても異形は腰から腕をたくさん伸ばしてきた。

「くっ」

ウォーターカッターは、一方向に集中してなら使えるけど巨大フリムを迂回するように複数の腕を伸ばされると使えない。

巨大フリムを相手にタックルさせてまとめて凍りつかせる。身体に剣を突き立てると異形の巨人は後ろに倒れ、伸びてきていた腕は天井を貫いた。

「そうだ。ジュリオン・ヤム・ナ・ハーとエールの命が惜しくないのか?」

スーリから一番、言われたくないことを言われた。

二人の状態はわからないけど、もしかしたらなにか……「隷属の魔法」のようなものを仕掛けているかもしれない。

異形は動かなくなり、スーリがゆっくり前に出てくる。

「ふ、ふざけないでください!!」

「……これは有効なのか。じゃあ言うことを聞――――」

悔しいがスーリの言葉の効果は絶大だ。

攻撃するべきだ。だけど、殺せないこの相手を攻撃して……怒らせてしまえば、もしかしたら二人は、他の大切な仲間はどうなる?考えれば考えるほど動けなくなって、それをスーリは察したようだ。

少しうれしそうな顔をしたスーリ。

「 全 員 伏 せ や が れ !!!」

屈するしか無いのか、そう思ったが後ろからリヴァイアスの戦鎚を持ったドゥッガとパキスとディーンが横から現れ、スーリにレーザーのような水を当てた。