軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第329話 休暇Δジュリオン

「奴は見つかったか?」

「いえ、スーリに御懸念が?」

「まぁな、最大限警戒しろ」

「わかりました」

寝ているフレーミス様だがゆっくり休んでいただけるように注意しないといけない。

特に、あのハイエルフだ。

あの耳長は自傷によってフレーミス様を怖がらせた。それだけでも十分罰に値するだろうが――――戦闘中のヴァンディアズルへの一言は大罪に当たる。

「動きがおかしかったが何かあったのか?」

「……言って良いことなのかはわかりませんが『領主の首は簡単に折れそうだ』と、言われました。キャインキャイン!」

「…………」

その一言でヴァンディアズルは無理に攻撃して飛び出してしまい、反則負けした。

戦闘では相手を怒らせて攻撃を誘発することもある話だ。

法に照らし合わせれば一応無理やり殺すことも出来なくはない。だがそれではヴァンディアズルとリヴァイアス領、果てはフレーミス様の名誉まで傷つけかねない。

だから手出しはできない。そもそも無理に罪に当てはめればの話であり「本気ではなかった」「戦闘中の言だ」と言われればそれまでだ。何より勝手な刑罰はフレーミス様がお許しにならないだろう。

それはわかっているが私の中では首を捩じ切って余りある大罪だ。

エルフの中でも上位種は気軽に相手をできるものではない。そもそも世界を作ったとされる神の写し身――――『半神』とされる。

彼らは精霊と同じで何をするかわからない。人のいる場にいる事自体珍しいのになにかの目的がありそうだ。それもフレーミス様に関わりそうななにかが。

……奴らは災害と同じだ。何が起こるかはわからんがフレーミス様に害がないようにしないといけない。

報告によれば奴は、スーリは遠くからでもじっとフレーミス様を見ているそうだ。

それ以上何もしないのなら問題はないのだが……調べておくに越したことはないだろう。

しかし調べれば調べるほどおかしなことばかりだ。まず名乗った名前からして違う。

調べただけで10は別の名を名乗っていた。

エルフの国から行商に来たエルフに聞けば名前はスーリ・ルルニエ・ウン・ヴ・リリエール・タニアスだとされる。『その座に眠りし幹』と敬称まである。

以前からこの地にいたこともあって情報をまとめさせたが、スーリには善悪の区別がつかず、多くの問題を起こしている。元々奴隷となった理由もそれらしい。

商売人に「どうだい?」と見せられた果物を食べてはそのまま去る。人が食べていた肉串を食べ、掴みかかられては殴り返す。

当たり前だがそんなことをしていては犯罪奴隷になりかねないのだが、居合わせたゴーガッシュがその場で金を支払い、何やら交渉したようで契約の上で奴隷になった。

そのまま拳闘で優勝を果たした。

エルフに詳しいものに聞けば竜や精霊と同じで、ハイエルフもたまに好きに動いて好きに寝るものだとか。目的があって動くものもいるけどハイエルフだと1000年ぶりに起きて茶を飲んでそのまままた眠りについたなんてこともあるそうな。

目的も何もわからないが、とにかく危険な存在だ。

ヴァンディアズルをあしらった相手だ。それも目的もわからない相手であることも考えれば自由にさせておいて暴れられれでもすれば事だ。

そうすれば被害は大きなものになるだろうし、監視は過剰なまでにつけた。私の判断だが事前に手を打っておくのはフレーミス様の意に沿うはず。

「おい、準備はできてるか?」

「もちろんです。ちゃんと選抜しました」

「腕は落ちてないな?」

「治していただいたこの腕!現役時代よりも動くんでさぁ!」

「うむ、励めよ」

領の中でも荒っぽい連中を眺めつつ武装を整える。

フレーミス様には王都からリヴァイアスに戻っていただけて嬉しい限りである。

向こうでは行動に制限がかかっていた上に周りは敵だらけ、貴族からの襲撃を許してしまった。

あの王を信じた私が愚かだった。自責の念で潰されてしまいそうだった。フレーミス様が拒んだとてついていくべきだったかもしれない。

酷く後悔しているが、それでも起きてしまったことは変わらない。

それに頼りにならないのも当然だ。

元々フレーミス様にとって私は怪我人で、しかもきまりが悪い。

守護竜王との戦いでは決死の覚悟を伝えたのに剣を振るう前に終わった。

いつでも助けられるように準備していたのにライアーム派との戦いではフレーミス様は消え去り、役に立てなかった。

学園でも王宮でも、私は役に立たなかった。しかも魔力の当て合いでは守られる立場だった。

闘技場で勝利を勝ち取ると宣言したのに出ることも許されなかった。

とにかくなんでもうまくいかない。ただフレーミス様の命令に逆らいたいわけではないし、命令に従うのは忠義のはずだ。臣下としての立場をわきまえているはずで、間違ってないはずなんだが……ここらで挽回しよう。

「一気に決める。包囲は出来たか?」

「まもなくです」

「遅い」

「数が多いんでさ、これでも食って落ち着いてください」

「全員に回せ」

「はい」

失敗ばかり考えても仕方がない。大事なのはここからどうするかだ。

渡された肉の串。四角く分厚い肉になにかのタレがかかっている。

一口食べると風味が鼻を駆けた。肉の表面はサクリとして、噛むたびに肉の強い味に香辛料の香りが広がる。ほんのりも塩味も利いていていくらでも食べれそうだ。

「腕を上げたな」

「へへっ、王都一でさ!」

「領都だ、そっちより剣の腕を上げなさい」

「手厳しい!」

部下の思わぬ成長は喜ばしいが、こいつ、これでいいのだろうか?

全員肉を喜んでいるが……あ、最後の肉カレー風味だな?!ピリッとして濃い味が口に広がって――――美味いな。突入前なのに……まぁ仲間がわかりやすくていいか。しかし、やっぱり兵より店のほうが向いてるな。

笑い合ってる部下を見て帰ってきたんだと実感する。

出来ればフレーミス様にもリヴァイアスの地を愛していただいて……王都などに行こうと考えないようにしていただきたい。

そのお立場から仕方はないのでしょうが、それでも可能な限りはこの地にいて、安全に過ごして頂きたい。

そのためには弟たちと相談して、側近の仕事にお休みをいただくことにした。

周りに『ジュリオン・ヤム・ナ・ハーはかなり無茶苦茶な強者であり、逆らうだけ無駄だ』とわからせる。そうすればフレーミス様の安全のためにもなるだろう。

そんなわけで――――港の悪党を全て磨り潰しに行く。

ドゥッガもアモスも荒い仕事をするとはいえ、臣下としての立場がある。あまり無茶なことをすれば公平性に欠けるし、奴らはフレーミス様に領を任されるにあたり誠実であるように命じられている。もしもであっても失敗すればフレーミス様の面目に泥を塗りかねない。

外敵を倒すのは領主の仕事でもあるが、怪しい連中の集まっている場所への強制捜査はやりにくかろう。あくまでも怪しいだからな。

ついでに私のことを知らない見どころのある戦士を引っ張ってきて見てやろう。特にあのドゥッガの部下になった鬼人は使えそうだ。生意気言ってきたからしめてやったが悪くない力をしていた。

非合法の賭場に、金貸し、脅し屋に騙し屋……情報は集まっている。

久しぶりに家に帰ってきたんだ。主の居心地が良いように掃除するのも立派な仕事だろう。

「おぅおぅ!舐めた真似しやがって!!」

「助けてくれ!無理やり奴隷にされたんだ!!!」

「うちは真っ当な商売しかしていませんよ?お役人様にはご足労かけまして、いつもありがとうございます。こちらをどうぞ」

「俺等の後ろに誰がついてると思ってんだ!アァン!!」

「…………」

「やっちまえ!売れそうな竜人だ!!死なねぇ程度に痛めつけろ!」

「見ろ!『ぽいんとかーど』だ!俺達は優良商人だ!!す、少しぐらい見逃せよ!?」

元々ワーたちによって調べはついていたため、踏み込んで見ればどこも後ろ暗いことをしている悪党ばかり。

アモスはここまでゴミをのさばらせていたのか……折檻しないとな。

ワーとホーリーがいれば鼻の良さで大抵悪事がわかる。偽金があれば削りで臭うし、奴隷がいれば体臭がする。賭けをすればそこに出入りする香水が漂うというものだ。

そして悪さをしていた奴らは耳も良いのか逃げようとするが……リヴァイアスの船は城門内にある。無理に逃げようとしても城門さえ閉めてしまえば船が出ることはできない。

そもそも建物自体包囲しているから逃げ場もない。

「フレーミス様が考えてくださったぽいんとかーどの札……真っ当な商売をしていればよかったものを」

ぽいんとかーどの位が高いものも検査したが問題のあるものもいたな。少しやり過ぎかなとも思ったがちょっと過激なぐらいがちょうどいいだろう。

我らが主を甘く見るのなら、私が黙っていないと印象つけてやろう。

数件建物を潰してしまったがボルッソもいるしな。

途中ただ立って城を見ていたスーリを見かけたが一体何がしたいのやら。