軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第314話 入場前∠コロシアム

それにしてもボルッソファミリーはとても良く働いてくれている。

私の雑な都市開発計画は「十年や二十年で形ができればいいかな?」と考えていたのにあっという間である。もちろん「出来た!うまくいってる!」という報告書も届いてはいたのだけど実感はなかった。

魔法使いは自分の出した魔法ほど操りやすい。

別の人が発生させた水でも操れると言えば操れるが自分の水の方が良い。他人の魔法で出されたものは操りにくい。

相性というものがあるのだろう。伯父上の水は自分の領域範囲に入ればそのまま反撃に使えた。でも操作中の伯父上の近くの水は操りにくかった。同じ精霊や同じ精霊の系譜の加護を受けていれば操りやすさはぜんぜん違うのだとか。しかし、エルストラさんの水はルカリムの眷属の水であり、抵抗されていて……僅かだが使いにくかった。

クライグくんとリーズの土魔法では同じ土の系統とは言え対立している家であるからか同時に同じ箇所の土や石を操ることは出来ない。精霊か魔法の性質がタロースとドゥラッゲンで違いすぎるのかもしれない。

私と伯父上、エルストラさんだけではデータとしては足りないが、それでも実感できるほど『傾向がある』と理解はした。しかし……ボルッソファミリーの場合、ボルッソとボルッソの子どもで、そして皆同じタイプの魔法が使える。誰かが途中でやめてもその続きから兄弟姉妹が継続して作業を行うことが出来る。

連帯責任制度でほとんど罰は受けていなかったのだが報告書によれば「亜人を見下すように躾けられた子ども」がいて問題を起こしたことが数回あったそうだ。クリータにはオベイロスには珍しい人至上主義の神官もいたことから染められていたんだろうな……。連帯責任を受けて反省したらしい。それ以外に問題も起こしていない。

次に私がやるべきことは――――「外国から来るお見合いの対応」でもなく「食料品をふざけた価格で買うように言ってきている近隣領主に兵を差し向けること」でもなく『領民を安心させること』だ。

うちの領地では『精霊が一番』で各部族が崇める信仰をしても良いとしている。オベイロスの中央と同じスタンスである。そうしないと貴族として問題もあるしね。

クーリディアス地方ではまだ竜信仰が抜けない人もいるが……統治する上で宗教、いや何らかの「団体」の存在は頭を悩ます問題である。

領内で純粋な人族の家臣は裏切りを疑われて閉じ込めにあっていたし、彼らからすれば人の信仰のもとに数が集まればそれだけ自分の身を護ることにつながる。

信仰も精霊信仰とリヴァイアス信仰、竜信仰、亜人信仰、人信仰、自然信仰なんてものもある。他にも多数。

精霊信仰とリヴァイアス信仰は別で精霊を信仰しているのが基本ではあるがその中でも『リヴァイアスが上』という考えのある信仰である。

亜人信仰は亜人の中でも崇められる獣王や自分の部族の祖先を祀っていたりする。

領主が私となったので精霊信仰でなくとも他の宗教も認める。ただ、強制的な勧誘や他の組織への攻撃的行為は禁止としている。……のだが、かなり面倒なことになっている。

リヴァイアスは現在好景気というかとてつもない発展をしている。そこで一旗揚げてやろうと、様々な勢力も成長している。

押さえつけはしているものの……反社会団体もうまれているようだし、宗教団体同士での抗争も起きているし、利権の問題もでてきている。

「おいで、リューちゃん」

「キュクルルル」

私がジュリオンの肩に座り、リューちゃんを抱きかかえる。

彼女らがいるだけでも精霊信仰・リヴァイアス信仰・竜信仰・亜人信仰・人信仰の大多数を抑えることが出来る。自然信仰は過激ではないし問題ない。

人である私が領主であるだけで人信仰は納得するし、リューちゃん効果で竜信仰も問題なくなる。亜人は……なんか竜人であるジュリオンが従ってるから問題ないらしい。

亜人は多くの種族がいるが、「強ければ正義」「強いものに従う」という脳筋すぎる思想もある。その強さには身長や体重による階級なんてものはなく……現在将軍を務めているアモスが尊敬を集めているがそれ以上に強いと噂のジュリオンを従えていることで私も尊敬されているようだ。

「――――先に闘技場に行って参りますので、是非ご観覧くださいませ」

コロシアムにジュリオンが行くようで椅子にそっと降ろされて、頭を下げられた。

何をするのか、何をしなければいけないのか……領の問題を改めて見つめ直して城で政務をしていた。

領民を安心させるために、次はコロシアムに顔を見せにいかないといけない。

「はい」

「――――フレーミス様に勝利を捧げます」

「では人材発掘のためにも賞品は良いものにしましょう!」

恭しく頭を下げたジュリオン。

何をしているかはわからないがジュリオンは参加するようだ。

多くの団体がリヴァイアスには出来ている。種族・宗教・国籍など、自分たちの所属するコミュニティの優位性を得るために。群雄割拠と言うべき勢力拡大を狙うそれら団体に私や私の部下が強いと見せつけることで侮られず、円滑に統治を行うことが出来る。

ジュリオンには頑張ってもらいたいものである。無理しない程度に。

「ドゥッガは着替えてきてください」

「……失礼しました。先に報告をしなければと」

「いえ、よく働いてくれてありがとうございます。少しばかり働きすぎです。私の筆頭家臣として目立ったほうが良いでしょうしね」

「ありがとうございます」

人に向かって「着替えてきて」なんて失礼かもしれないが、クーリディアスを往復して働いているドゥッガ船長は忙しさからか賭場時代のマフィアファッションに戻っていた。ちょっと荒過ぎるし、部下へのお手本としてもうちょっと整えて欲しい。忙しかったのか風呂にも入ってなさそうだ。ちょっとくちゃい。

部下への手本としてよく働いてくれるのはすごく助かるけどね。

本当なら「顔見世」なんて急いで行うことではないかもしれないが……コロシアムは戦闘だけではなくリヴァイアスが覗きに来た時には演舞や式典を行う場所になっている。そこに領主が帰ってきたんだからと期待した領民が自発的に集まっているのだ。軽く雨も降っているというのに。

ドゥッガが着替えに行き……周りの人にも順番に着替えに行ってもらう。エール先生は服装チェックで忙しそうだ。

領民は既にコロシアムに集まっている。告知も何もしていないのに……神殿前と浜辺付近でも……風邪ひかないうちに帰ってほしいのだが何処かには顔を出す必要があるだろう。

そして、リゾート地に押し込んでいたディア様にお見合い参加者もこちらに来ている。雨は精霊由来のものであり、何なら皆建物外で雨を浴びていて……皆さん自発的にコロシアムに向かってきているそうな。

さっさと済ませて帰ってもらいたい。アモスにはコロシアムの観客席の中でも私の座る席の近くを貴族席として準備してもらうためにも先に行ってもらっている。

――――私も皆を安心させるために、あれを使うかな。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「申し訳ありません」

「仕方ないですって!ジュリオンは……そうですね。私の近くにいてください!」

「…………はい」

蚊の鳴くような声ではあるが了承してくれたジュリオン。

恭しく勝利を捧げると宣言したジュリオンだが闘技に参加できなかった。

「ジュリオンがアモスよりも強い」というのはリヴァイアスでは常識であるがこの領地における個人最大戦力の一角であり、私の傍にいつもいる彼女がもしも負けでもすれば権威に関わる。負けなくても力を測れるような人が見ていれば「護衛の戦力を算出できる」からとかいう理由でアモスを含める武官に引き止められてしまった。

そもそも目的が「コロシアムの闘技に参加して勝ってもらう」ことではなく「領主の無事を見せるための顔見世」だしね。出鼻をくじかれたみたいだけどジュリオンには近くにいてもらう。

観客側ではなく、闘技に参加する人のゲートから入る。

「行きますよ」

「はい。気合入れろよお前ら!!」

「「「「はいっ」」」」

ドゥッガに宣言するとドゥッガが部下たちに気合いを入れてくれた。

前にジュリオンとアモス。武力に富んだ配下に周りを固めてもらって入場する。

観客には他国の人間も入れたし……ちょっと危険かもしれないが、それでも、こうすることで皆は安心してくれるはずだ。