軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第300話 ラズリー▲ユースス

昼になっても列車は発車することはなかった。

私が寝ている間にこのソーギアーの領主が来て接待がされることになった。

内心では「列車が停まったから接待」とか意味がかなりわからなかったが、すごく偉い人が来たのだから接待をしないと貴族社会では失点としてボロカスにこき下ろされることがあるのだとか。

このソーギアーの地は現状他の貴族たちに狙われているそうだし、事情を知っているディア様は少し困り顔だった。それに現状では乗り物酔い初体験によってへたり込んで体力を使い果たした人たちにもう少し時間が必要である。

ライアーム息子たちをリヴァイアスで迎えるとはいっても余裕をもたせたスケジュールである。だから私としてもリヴァイアスに早くこられても面倒事は増えそうなのでここで急ぐ必要はないと思う。

ディア様も悩んでいたようだけど接待を受けることになった。

「じゃあお願いね。ヴァリエタース様を止められるのはフリムちゃんぐらいしかいないから…………本当にお願いね!?」

「がんばります。あと護衛にジュリオンを連れて行ってください」

「わかりましたわ」

私もシャルルの近衛に襲われたこともあるしジュリオンを護衛に連れて行ってもらった。彼女になにか事故や事件があれば騎士の責任ではあるが……二番目の責任者は私となる。だからこそ私からの護衛を付けてないとよろしくないらしい。微妙にジュリオンがエール先生を恨みがましい目で見ている気がする。

まぁ私は彼女が戻ってくるまでの間、貴族が無茶を言わないか見張っているだけでいいし、私にもディア様にも危険は無いはず。

そもそも安全管理は騎士の仕事であり、私は軽く無茶をする人がいればたしなめればいいだけである。……ディア様の懸念しているユース老先生はインフー先生と違ってそこまで無茶苦茶ではないはずだけど、あ、ラズリーさんもいたんだった。気をつけねば。

そういうわけでディア様はここの領主様による接待に向かい、私は列車周辺でお見合い参加者を監視することとなった。

ユース老先生を探してみると「周辺の地質」がどうとか言ってフラフラ歩いて行ったらしい。既に列車にはいなかったか。

貴族視点でボロ小屋が少しあっただけの拠点だったが、今ではそれなりに見れる建物がある。

休んでいる貴族子弟たちは快適さを求めたんだろう。なんか雑草だらけだったはずが謎に大きな建物が出来ていた。それだけならまだ良かったんだけど明らかに途中でやめた失敗作に、奇妙な独特すぎるデザインの建物もある。……競ったんだろうなぁ。

「この周辺にはなにがありますか?」

「……薬草畑と、森と山しかありません」

目隠れ毒吐きオドオド系女子ことカリュプさんを強制的に近くに置くことにした。

彼女は明確に嫌そうにしていたがこの付近の案内ができるのはこの領地の跡取りである彼女ぐらいだろうし、現場責任者である私の近くにいてもらわないといけない。すごい嫌そうだが。

「なるほど、ではここで休みましょう。気をつけるべき案件などはありますか?」

「当たり前ですが雑草の処理で簡単に森を燃やすのはやめろ……じゃない、やめてほしいです。……何なんですかあの人達、ほんとにブツブツブツブツ」

何やらストレスになっているようだ。

私が寝ている間に、きっとお見合い参加者たちからの圧力というか、なにかがあったのだろうな。ちょっと俯いていて長めの前髪でどんな顔をしているのか見えないがかなり毒を吐いている。

貴族には爵位という明確な地位が有り、立場としては一番下に近い彼女だ。きっとかなりのストレスがあったのだろう。

「リーズ、ミキキシカ。彼女をお願いできますか?」

「分かったわ」

「わっかりました!」

リーズは彼女と一緒にいたし仲良くなっていたようだ。それにミキキシカなら平民だけど特殊な技能があるからこの場にいる。2人なら彼女にとって良い話し相手になれるんじゃないだろうか。

ミリーはユース老先生についていってるみたいだ。

ユース老先生はなにするかわからないしディア様でも止められないがミリーはそれなりに信用されている節がある。いつの間にかミリーはユース老先生に気に入られているようである。

ミリーは稀少な光属性持ちであるから勧誘もそれなりにあるそうで、一応私のとこに来ると明言してくれているがそれはそれはしつこいらしい。近くにユース老先生がいればユース老先生が助けてくれるそうだ。

ユース老先生からすれば精霊によって力を得たミリーを親元から引き離されて可哀想と思っていて、逆にミリーは身分関係無くお爺ちゃんなユース老先生を助けなきゃと思っているそうで……なかなかいいコンビなんじゃないだろうか?

きっかけはダンジョン探索からである。その後、私の魔導鎧ちゃんの製作でも力仕事で役に立っていたそうな。流石ミリーである。勧誘した人にはきつく言っておかねば。

しっかし、地質がどうこうという目的では何処まで行ったかはわからない。探すのが難しいだろう。なにかあれば近くの騎士かミリーが大声を上げてくれると思うけど…………スマホ欲しい。

とりあえず貴族たちの人数をチェックして、変な場所に行かないよう伝えておく。

観察しているとセルティーさんが何も言わずともそう行動してくれていた。

「いつオッヴァーディア様が帰ってきても良いように動けるものは準備しておくように」

「「「はい」」」

「帰りたいと嘆くものには王命であることを言い聞かせて貴族である誇りを胸に頑張るように伝えなさい」

「「「はい!」」」

微妙に根性論な気もするが……まぁ貴族としてのメンツってのもあるか。ちょっと服を脱いで建設をしているような人もいるし少しは引き締めてもらって欲しい。

こちらのチェックは出来たし近くには珍しい薬草畑があるそうなのでそちらにも行ってみる。何にでも興味をもつユース老先生ならそっちに行った可能性もある。

見に行くと……別の人がいた。いや、頭が生えていた。

「何やってるんですか?」

「吾輩、捕まった」

「何したんですか?」

「ちょっと水畑と知らずに薬草を採取しててな」

「こ、ここに人が来ることはまず有りませんので驚いたのかもしれません。それよりなんで頭だけ残してっ!あぁ私の責任だ!?父さん母さん精霊の身元に先立つ幸をお祝いください」

「落ち着いてくださいカリュプさん」

ラズリーさんが知らずに畑泥棒をしたようで、頭を残して埋められていて……カリュプさんが取り乱している。

水畑という良くわからないものを見てみる。普通の池のようにも見えるがここでは何かが栽培されているようだ。

事情を聞くと管理人に怒られて、取り巻きに杖を取り上げられて速攻で埋められたらしい。

それを見てドン引きしている管理人が領主様に報告に行ったと……面倒事である。

「あいつも助けてくれない。研究資料を前に黙ってられるか!おい!さっさと助けろ!!爺も!!!」

一応近くに護衛の騎士がいた。

この人も筆頭婚約者だしな……しかし、魔導省はよく問題を起こすし騎士からすればこれ以上問題を起こすなとでも言いたいのかもしれない。

騎士は聞こえてるのにこちらを見たあとにそっぽを向いた。普段の行いのせいかな。

というか山の間の窪みのようなここが畑って……獣でもでないかと警戒すると少し離れた周囲には獣ではなくラズリーさんの取り巻きの人たちがいて、なにか調べているっぽい。あ、ユース老先生とミリーもいた。手を振っておくとミリーも笑顔で手をブンブンと振り返してきた。

「助けんでええわい。研究熱心なのはええんじゃが問題ばかり起こしよる」

「しかし、これは無体では有りませんか?」

「そうだ!もっと言ってやってくれ!!」

ラズリーさんは地面から生えている生首のような状態である。一応こんなでもシャルルの筆頭婚約者に数えられている1人である。

「おぉ我が孫や。部下から慕われてないとは哀れじゃのう」

「爺も嫌われてるだろ!人の研究にケチばかりつけて新しい研究をしようとするものを萎縮させる!」

親族関係があるからか、ユース老先生も少しいつもと言葉遣いが違うように感じる。

「ふん、賢者フリムよ。時間が許す限りこのままでええからほっとこう」

「い、良いんですか?」

「――――……全ては精霊が決めるじゃろうて」

「爺?」

「そう、生き死にも。ここで死んだのならそれも仕方ないことよな」

「先生、可哀想じゃないですか?」

ミリーが口を挟んだ。いいぞ!もっと言ってやってくれ!!

それにしても普段何をすれば孫にここまで言えるのか……。

「謝る!謝るから!!吾輩悪かったって!」

「何をじゃ?」

「あ、あ、あれだ!爺の家にあったオリハルコンと魔石と薬草をちょっと持っていった」

「……あれ、お主が持っていったのか。自分で使って精霊に持っていかれてたかと思ってたわ。ちょっとじゃなくてごっそり持っていきよって……」

普段からラズリーさんは結構やらかしてるのかもしれない。

「あ、あと、離れを壊したのは……吾輩です」

「離れは全壊じゃったが、中央の館も半壊させたの?他には?」

「ほ、他?口が汚れて賢者の衣で拭って……」

「あれか!?……おかげでいい歳なのに愛人でも出来たかと笑われたんじゃぞ?!」

「ちゃんと侍女に教わった通り唇を傷めないように拭った」

「お陰で唇の形がくっきり残ってた大恥をかいたわ!!バカ孫!!」

「いいぞーもっと言ってくださいー」

「魔導省でも部下に理不尽言ってまーす」

「研究の邪魔されましたー!あ、学園への魔導具受け渡しを止めて資材ちょろまかしてるのもラズリー様でーす」

「き、貴様らー!!?」

ラズリーさんの部下の人たちもここぞとばかりに言っている。

…………なんだろう、助けなくて良い気がしてきた。