軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第276話 自信満々 の 悪役令嬢

「あの……」

「ふむ、どうしましょうか……少し我慢なさい――――<水よ>」

「えっ、あっ、ちょ?!」

予想以上に目立ってしまった上に虐められていた子を連れてきてしまった。

長い髪で目も隠れてオドオドしている彼女。頬や服にはべちょっと土がついている。軽く怪我してるかもしれないし超魔力水を少し温めたもので清めてあげる。

汚れを落として汚れた水を綺麗な水に取り替えてを繰り返し、最後に水を服から抜く。湿った感じは残るもののすぐに乾くし、そのままで問題ない。

ほんのり全身が光ってなんかちょっと神々しい。でも体を丸めて目をつぶっている。小動物みたいだな。私よりも大きいのに。

「勿体ない。背筋を伸ばして堂々となさい」

「こ、これは噂の?!ほんとに……?」

「返事は?」

「は、はいっ」

しかしこの子、どうしようか。

ついつい連れてきてしまったが……いや、あのままにしておけなかったしあの場での悪役令嬢ムーブはきっとあれが正解のはず。うん、かなりうまく出来たのでは?

「試験が終われば私のもとに来なさい。いいこと?」

「な、なにかご所望でしょうか?私、いえ、うちはそこまで裕福ではなく」

「リヴァイアスは無理に礼を求めませんよ。あのおばさん方が何をするかわかりませんし事情も聞きたいので」

「わ……かりました」

うむ!怖がられてる怖がられてる!

きっと悪役令嬢できてるぞ私!!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

拾った彼女はあまり裕福ではない、ごく普通の領地の跡取りのようだ。近頃、領地にある池で薬の原材料になる水草の栽培に成功した。

あのおばさんとは隣の領地で元々家同士の仲は良かったそうだ。

普通の領地持ちの貴族は隣の領主と様々な約定を交わす。おばさんの領地から彼女の領地に流れる川にも『荒らさない』『精霊による災害はお互いの領主が対応する』『お互いの領民が漁をする権利がある』『お互いの領民は災害時に対処する』などなど普通に取り決めはあった。

問題はおばさんは自領から流れる川の先で作られる水草が結構な利益を上げている事を知って……それを妬んでいるらしい。

本来おばさんは領主ではなかったのだが政争で領主となった。そして近隣の領主との約定は何でもかんでも自領が有利になるように難癖をつけてくる。

「スライムにつけて浄化されてしまえば良いのです。彼女は不倫して旦那にも逃げられ子供に毛嫌いされてる上に領民を玩具のように思っている節があるのです。学園も出てない彼女がまともに統治できてなくてとにかく税を上げるものだから生活に困った領民がうちの領地に来て畑を荒らすのです。ブツブツブツブツ……」

「そ、そうですか」

だいぶ彼女は参っているようだ。親指の爪を噛みつつ怨嗟を撒き散らしている。綺麗な花には毒があるかもしれない。それもちょっと毒性強めの……見てるとなにか呪われそうである。

まぁ事情はわかった。そのうえでどうするか聞くと「私は大丈夫ですので」と距離をとられてしまった。

隣の領地の問題だし、突っ込みすぎても良くないかな。

「でも――――ありがとうございましたっ」

「なにかあれば……行っちゃいましたね。まぁ良いでしょう」

少し離れてからお礼を言われて、そのまま走っていってしまった。

一応監視はつけておこう。手を出して良い問題かわからないが私が首を突っ込んだ結果問題がこじれるようなら――――問題がなくなるように思い切り介入してくれる。

まだ試験は続くはずなのに、試験会場は封鎖された。

休憩もやっと終わりかと気合を入れていると試験監督さんのもとに集められた。

「一度試験は停止する!政務に支障をきたしているのでな……」

試験監督さんが思い切り私を見ている気がする。なにかしただろうか?

「職務があるものは着替えてすぐに部署に戻るように!では一旦解散!」

ん……?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

水の宮に戻ると事情がわかった。

怪我人の――――群れが出来ていた。

治療の陳情も多く、「治してくれ、治してくれないと一族の人間が働かないからなっ!」などと要求する者もいる始末。

王宮のどこでも怪我人が復帰しようとしていて、ゴミ貴族と復帰しようとしている貴族で杖を抜いたりしていて怪我人も増えている。

未婚貴族の中には王宮で働いている人も多くいる。政争で貴族自体が減ったし、シャルルは学園を出た人材はできるだけ就職させるようにしている。シャルルを見くびっていない、経験はまだまだでもまだゴミに染まりきっていないマシな層がこのお見合い大会には参加している。

若手も戦力になっていたのにお見合い大会で仕事量は最小限にしていたため、そのしわ寄せはゴミ共とレージリア宰相に大きく来ていて……そんなところに復帰勢とゴミ共が争った結果、国の運営そのものに支障が出てきている。更にはボイコットも発生していたりして……少ししわっと老けていたレージリア宰相が来ていたので水を飲ませておく。うん、私も仕事するんで持ちこたえてください。

それにしてもまだこんなに怪我人がいたのか……まともな貴族だけ治療を開始して数日。

仕事のないお見合い参加者たちは休日をとれたらしい。私はいそがしかった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ある程度治療を終えると試験が再開して……私の心はやさぐれている。

クソみたいな問題。何を思ったのか、シャルルは何を指示したのか。席に戻ると毎日回答していた問題の束がなかった。

代わりに――――……別の問題が用意されていた。

「失礼。これは私が回答していたものではありませんが?」

誰かが聞いた。当然の質問だろう

「試験は回答する早さも見られていたものだ。以前の問題はこちらで回収した。――――それらが新たな問題だ」

試験監督さんは……一瞬笑みを浮かべたがすぐに真顔に戻った。

「なんですって?!!」

「私回答の途中でしたのに!」

「不公平ですわっ!?」

「静かにっ!問題を共有するものもいたからな。まったく……試験を再開せよ!」

えぇ……。それは、なんか自分が関わったことだしなんか申し訳ない気もする。

試験項目には『少しストレスをかけて対応を見たりするといいかも』って提案したのは私だけど。回答途中の問題、しかも問題の順がバラバラで回答に時間のかかる問題が多かったことからかなりの個人差はあると思う。

シャルルは私の言うことを全部採用しようとしたのか?一度話さねば……私も間違ってることばかりなのに。シャルルは私が何でもできるとでも思っているのかもしれない。

「すー……はー…………」

深呼吸し、全体の問題を読みこむ。

あれ?今回はまともな教科が並んでる?いや、まともな問題しかない。

ま、まさかあれだけやらされた問題は前哨戦だったのか!!?まともな問題も混ぜてただろうが?!ファ××××!!!!!

――――思わず汚い言葉が頭をよぎって、ペンを握りしめてしまった。

周りでもペキペキって羽ペンの折れた音がする。ブチギレたフリムちゃんはきっと悪くない。悪役令嬢だけども。