軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第252話 贅沢 な 財宝

悪役令嬢入りが決まったがそれはすぐではない。国内外で有力な人間を男女関係なくまとめて集めることが決まった。

女性だけ集めても良かったのだがどうせなら独身の貴族子弟にも結婚相手を見つける機会を与えようとのことだ。どちらの陣営もこのまま国が二分されるのはお互いに望んでいないしね。上の世代のおせっかいな気もするのはきっと前世の先入観だろう。

しかし『まともに貴族社会を生きてきていない』私にとっては王宮は未知の世界となるだろう。ある程度礼儀正しくしていれば良いはずだが。

令嬢にとって「身に纏うもの」というのは重要らしく、ドレスの色合いや刺繍一つとっても考えなければいけないそうだ。

「これなどいかがでしょうか?」

「もう少し、小さく気軽なものはないでしょうか?」

「気品があって良いと思うのですが……」

大きな真珠のネックレスだが……ずんと重みを感じる。

タラリネとエール先生は楽しそうだが私は気持ちまで重く感じてしまう。

この催しは表向きは王妃を決める争いである。外国からも姫君がこの子弟子女の婚姻の場に参戦してくるそうだから……その最有力候補者である私にもオベイロスの威厳というものがかかっているそうだ。

そのためリヴァイアスから集めた財宝で身につけられそうなものを吟味している。

指示して作ってもらった細工物に、真珠に宝石、きらびやかな装飾品に魔導具などなど――――部屋を埋め尽くさんばかりに運ばれてきている。

「服に縫い付けて見ましょう。タラリネ」

「はい、しかしよろしいので?」

「いくらでも使いなさい。部下も何人でもつけます」

「はい!この大役、精霊様に身を捧げるつもりでこなしてみます!!」

「よろしい」

海の種族にとって真珠はそこそこ取りやすく、通貨の代わりに使うこともよくあるそうだ。

……ここ最近リヴァイアスが支配領域を広げて雨が降って生き物が少し成長したものが多くいた。

あの雨、基本的に陸地では草木やスライムを増殖させるが海の中はまた別の効果があったようである。増えたスライムを捕食する海辺の生物の一部が大型化したそうだ。特にカニやエビ、それと貝。……海辺の虫が大きくなることはないのは良かった。

アーダルム先生の研究によると雨はスライムが最も影響を受けるが虫はそのスライムに負けるからという説がある。虫はスライムを捕食しようとしてもスライムも虫を軽く溶かすらしい。スライムを好んで食べて、スライムの体液に影響のない動物は大きくなる。……ゲジゲジとかムカデとかが大型化して大量発生しないで良かったよほんと…………え?元々大きな虫もいるって?聞きたくなかったです。

水中の中では貝が最も影響を受けていたそうで……特別な真珠を作っていたようである。それらは一つ身につけるだけで魔力の向上が見込める。

リヴァイアスの雨の効果がここまで出たことはないしテロスも驚いたそうだ。リヴァイアスとクーリディアス周辺の海の種族の人たちは戦略物資になりうるこの真珠を領主である私にたくさん贈ってきた。

すごく高価で、良いもののはずなのに、大きな箱いっぱいに詰め込まれた真珠を見ると、こう……現実感がなくて………………見ないことにした。

私の金銭的価値観ではここまで高級なものを身につけるのはちょっと。こう、品よく一粒トップについてる程度のものでいいのだ。前世でも冠婚葬祭のために持ってはいた。

用意されたものの中でもピンポン玉のように大きな粒の真珠をネックレスにしたものをエール先生につけられた。が、重すぎる。なんでずっしり重みを感じるんだ?ネックレスだよ?

しかも真珠はパールホワイト一色ではなく金色や赤色や青色まであるし、なんかぼんやり光ってる気がする。テレビで見た海外の超大金持ちですって感じのネックレスはよくないと思う。精神衛生上……え?私の立場ならこれぐらい身に着けてても普通?勘弁してください。

「素晴らしいですね。捨てる貝殻がこうも美しく……ラディンでしたか?」

「らでんですね。こうも早く出来ていたことに驚きですが螺鈿細工は売れそうですかね?」

「きっとご婦人方は奪い合うはずです。他にも真珠のネックレスや家宝に出来そうな品が届いております。それも数多く」

リヴァイアスで私の雑な知識を元に指示した工芸品が出来たようだ。

螺鈿細工。貝殻の内側の白を基調に様々な色にキラキラした部分を切り出して研磨し、様々な道具の表面に貼り付ける工芸品。

小箱や鏡の裏側についているものを前世のおばあちゃんが持っていたがとても綺麗だった。

ベアリングで回転による利用法を教えた時にボルッソには回転するものに刃をつけて『切断』したり、研磨剤をつけての『研磨』出来るということを教えていた。

貝殻ならリヴァイアスにはたくさんあるし、土の魔法で陶磁器のようなものを作れるのだから出来るかなと思ったのだが予想以上に多くできていた。

土を動かすことは土魔法使いには簡単なようで土になにか組み込むことはよくあるそうだが螺鈿細工は見るからに高級感があるし『これまでにない』という圧倒的なメリットがある。漆で仕上げてほしかったのだがこれはこれで味がある。

ボルッソの子どもの中には艷やかな黒の陶磁器のような石を出せる魔法の使い手もいてなかなかに螺鈿細工と相性の良いものが出来上がっている。ボルッソの緑の筋がかった大理石のような白も良い。甲乙つけがたい。

しかし……いくつかの工芸品はどう見ても私をモチーフにしたデザインである。像の増加は止めても増えるが…………街道中に私の石像が作られそうだったし強く言ったのだが、今度はこうきたか。ため息とともに喉の奥からなにかエネルギーが出ていく気がする。水飲もう。

エール先生考案のデザインを熱心に聞いている専属お針子に任命したタラリネ。

長くなりそうだし報告書に目を通す。――――しかし、リヴァイアスは一体どうなっているのやら。

報告ではカジノとコロシアムが盛況とあってとても不安である。いくつも指示だけ出して王都に来たが……。まぁ赤字で困っているわけじゃないのは良い。

リゾート施設は船の破損や修復など「外からくる商人が悪さをせず悪さをされずに休める隔離と管理のしやすい長期滞在地」として考え、領都から少し離れた場所に豪華に作ってもらった。

真珠や螺鈿細工も自分のもとに届くが、一番とんでもないのが交易による宝石と装飾品である。

商人が外国で取引をする場合、自国の硬貨を使っての取引は嵩張るしそもそも他国では相手に受け取ってもらえない場合がある。

商人は船が大破しても、馬車が壊れても価値のあるものを持って移動できるように硬貨をもっと価値のあるものに交換した上で身につける風習があるそうだ。

宝石一つで金貨何十枚分にもなる価値あるものになる。電子取引なんてものはなく、信用取引もやりにくいからこそ商人は誰が見てもわかりやすい価値のあるものを身につける。

いくら硬貨があっても使えない地域では意味がないしね。

だからリヴァイアスでは外から来た商人が宝石や装飾品で支払うケースも多く、魔導具や特殊な道具を物々交換する場合もある。それらが支払われて……最終的に私のもとに届く。身につけるサイズを飛び越えて大きな原石みたいなのもいっぱいある……。

予想外の方向からの品といえば奴隷から届く謎のアイテムだ。奴隷はやはり犯罪歴などの確認が取れない奴隷も多くいたことである程度順序立てて様子を見ていかないといけない。まだ農業を中心に家と土地を与えて確実に安心できそうな人だけ監視付きで半ば自由にしてもらっているが、やはり凶悪犯罪を隠している可能性や再犯の可能性はどうしたって否定できない。

彼らも「いつ領主様の気が変わって劣悪な環境に売り払われるかも知れない」と積極的に働いているようだ。

餓えさせず、衣類や住居環境には口を出したが他所の奴隷の環境はそれほど良くないのだろうか?よく働いてくれる分には良いが。

荒っぽい気性の奴隷は自ら望んでリヴァイアスのダンジョンに行って必死にアイテムを集めたりしているそうだ。それらもここに届いている。螺鈿細工の貝殻を加工した人の中には元はなにかの職人の奴隷の人もいるみたいだし役に立ってくれるのは良いことである。よく働いてくれる人はよく報告書にも上がってきているし会ってみたいな。

しかし……人が一人で運べないサイズの宝石箱が、宝石いっぱいで、いくつも贈られてくる。部屋いっぱいの財宝を見ると…………………嬉しいとかそういう気持ちよりも銀行は?と聞きたくなってしまう。小市民な部分が出てきてしまって現実逃避に宝石で遊んでいるリューちゃんを愛でる。

「大きくなったね」

「クァー」

リューちゃんの鱗を撫でていると眠いのか寝落ちしそうである。

たくさんの報告、ゴミからの婚姻申込みは全部無視して証拠用の棚に……。え?直接使者も来てる?永遠に待ってもらってください。