軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第232話 子鬼っ!!

「これは面白いのぉ!扱いやすさにこの大きさ!耐久実験にもってこいじゃ!」

「それは良かったです」

「この『折りたたみりやかぁ』と『猫車』は馬車の開発にも良さそうじゃ!」

食後にユース老先生が来た。

ユース老先生はダンジョンの前で幌馬車を調べていたのだが幌馬車の性能を体験するためだけに来たのではなかった。新開発された折りたたみのリヤカーと猫車の実験も兼ねている。

偉い人なのにリヤカーに人を乗せて自分で牽引して、なにやら楽しんでいるようだ。

馬車のスプリングを作るのにユース老先生とやり取りをしていて、軽い金属でリヤカーを作れば便利なんじゃないかと提案したのだ。荷馬車はあるし人力で牽引するタイプも勿論あったが……金属で作ることで合金の実験をしている人たちにも「合金の効果」を体感してほしくなったのである。

ただただ新しい金属を作って、破壊を繰り返すだけでは楽しみは減るだろう。実感できる成果としてちょうどよいと思った。

まぁ私がオベイロスにいない間に既に謎の「装飾用に使える柔らかな合金」や「風の影響を受ける合金」それに「金槌で打った部分だけ色が変わる合金」などが出来たようでなにやら盛り上がっていたが。

今では研究に参加する人物も増えているようで心配はなさそうだが……できれば生活に直結する発明に活動の舵をきってもらいたい。

「無理はしないでくださいね」

「おぉ!賢者フリムの中空構造も使っておってな!これが、見た目よりも軽いのよ!」

隷属したてのラディアーノに見せかけの首輪を作った時、頭からすっぽ抜ける大きさの首輪をできるだけ「軽くて錆びにくい金属」で作ってもらった。そこから軽量化のヒントを得たそうだ。

リヤカーは折りたたんだり、既存の木製荷台を金属製にしてみると面白いのではないかとか、タイヤが一つで物を運びやすい猫車の開発を話し合ったのだが……うまく出来ているようだ。

試験機用だけあってツギハギしたような部分が見えるものの立派なものだ。金属も錆びないようにかいくつかの油をさしているのかテカテカと光沢が見える。猫車はゴムタイヤとベアリングの性能が必須だが荷物をいれる部分の鉄板をぶ厚めで作っても動きやすいはずだ。

儲けだけ考えればこういう知識や技術は秘匿してリヴァイアスだけでゆっくり作っても良かったが……共同開発すればやはり研究は加速する。それにゴムとベアリングはほぼ独占であり、一大生産地はリヴァイアス領だ。何かしらで確実に利益は出るしね。他の国で作られてなかったらだけど。

私は超魔力水でゴムの草と木を増やして雑すぎる開発・改良の指示をしただけだが……「植物を増やす」ってなかなかの年月がいるはずだし、それだけで結構な仕事をしたはずだ。うむ!

ユース老先生は猫車に大人がどれほど乗れるのかの限界に挑んで……耐久実験?をしている。小型で不安定な猫車に二人も乗せてフラフラとしているが大丈夫だろうか?

楽しんでいるようだしまぁ良いか。疲れたらお腹も空くだろうしカレーを食べてもらおう。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

迷宮は先遣隊と遊撃隊によって魔物や魔獣の駆逐がされた。

その後生き残ったものを捕らえて連れてきて私たち水属性の生徒が安全に配慮された状態で魔物や魔獣を殺す。

いざという時に水の魔法使いも生き物を殺す経験をするのだとか……。

ここに来る前から聞いていたことだが……子鬼、ゴブリンが連れてこられた。子鬼は緑の肌で紫の血が流れているように見える。

「ギィー!ギィー!!」

「ンギギッギギ!」

「…………」

「ギグギギッ!!!ギッグギググ!!」

首に縄で繋いで奴隷のように、痛めつけられていた。

何体かはここに来るまでに死んだのかそれとも失神しているのか引きずられている。

「さぁ一人、一体殺していきましょう」

誰かの言葉がいやに耳に入ってくる。

なにか生き物を殺す。それはとても嫌なものだ。それでも彼ら子鬼はダンジョンを出て村を襲うことがある。

これまでにもダンジョンから出てくる鬼を研究しようとした人は何人もいたそうだ。子鬼や豚鬼、悪鬼に巨鬼、犬鬼猫鬼森鬼など……亜人に近いものもいるし、彼らの言葉らしき鳴き声を理解するべく研究する試みはあったそうだ。

――――しかし対話は出来ず、何年も温情をかけて優しく育てても結局は卑怯な騙し討ちをしてくるそうだ。

縄にかけられて一列に並ぶ子鬼たち。生徒は魔法や、短剣、それぞれの持ち込んだ武器でとどめを刺していく。

「またはずしたぁ」

「なーにやってんだよ」

「ギィィ!ギィィィ!」

「うっせ、死ね!」

「ギギ……」

「よっし!」

「良くやった」

やったやったと喜ぶ周りの生徒…………最後は私の番だ。

「……<水よ。氷龍よ>」

元々死んでいた個体もいた。

しかし、水の魔法使いの生徒全員に殺傷を体験させるためにか生き残った小鬼は数匹いた。もしかしたら倒れた数匹は死んだふりをしているかもしれない。

「ギィー」

「グギッギギ」

「…………」

何かを鳴いて、体を震わせている個体。杖を持つ私にひれ伏し、助けてと……哀れみを誘おうとしている個体。既に死んでいるのかもしれない個体。逃げようと暴れる数匹。

生きたいと懇願しているとわかるそれらに――――――

「<叩き潰せ>」

私は苦しませないように氷結ドラゴンハンマーでまとめて叩き潰した。

「流石です!フレーミス様!」

「これがリヴァイアスの当主の力……」

「さっむ?!」

「魔石もとれねぇな」

「生き残りを調べなくてもいいだろ」

「油断するな。減点な」

「えぇ?!」

私は人で、人のコミュニティで生きている。

そして彼らは害獣である。逃がせば誰かを害する魔物は打ち倒さないといけない。

水の魔法使いの代表であり、他の属性の生徒が見ていることもあって……少し派手にした。

私が舐められて、私の仲間が傷つけられないためにも。…………彼らにこれ以上の苦しみを与えないためにも。

彼らは私を殺そうと向かってきたわけではない。生きたかった彼らを私は叩き潰した。

心は痛むが、そういう世界なのだと自分に言い訳をした。

「……もしも新たに生まれ変わることがあれば、人間に……いや、敵対も遭遇もしなかったら良いですね」

嫌な気持ちが湧いてしまう。――――ただ、少し冥福を祈っておいた。

カレーに使うお肉だって元はなにかの生物だ。人は生きるという目的の元に何かを害することが出来る。……これもきっと必要なのだろう。

もしも私が戦わなくて良い立場ならこんなこともしなかっただろう。だけどこちらの常識であるし私の立場を、ひいては誰かを守るためでもある。

子鬼はこちらでは殺すと褒められる存在である。自分の倫理感がこの世界では必ずしも正しくはないとはわかっているが……やはり何かを殺してしまって気持ち悪く思う。

「ん?ミリー?」

「うぅ……結構、気持ち悪い。……ですね」

水属性の生徒の前にサクッと子鬼を倒したミリーが口元を抑えていた。

生き物を初めて殺したらしいミリーの介抱をする。

ミリーは剣で子鬼を殺したが、頭から胸ほどまでをまっすぐ切って……中身を思い切り凝視してしまった。

頭蓋骨ごと切った剣は少し歪んだのか鞘に戻らないようだ。

「私も気分がわるいのですが、これは必要なことですから」

「うん、わかってる。子鬼は畑を荒らして家畜をもっていっちゃう。豚鬼や他の鬼を呼ぶこともある。隣のラクの家の畑だって…………でも初めて殺したけど全然気分は良くないね」

「……そうですね」

座り込むミリーの横に、ただしばらくいた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

後は何のトラブルも起きることはなく、水を補充してダンジョンの演習は終わった。

ちょっと興味深かったのが魔石だ。

子鬼と土人形と甲羅つきイノシシがこのダンジョンには出てくる。彼らの体内には魔石があるのだが土人形の中からはちょっときれいな魔石が出てくる。

「フレーミス様、こちらをどうぞ」

「ありがとうナーシュ、集めたモーモスもね」

「こちらはクライグと何人かの師弟とパキ……じゃない、匿名の生徒からです。お納めくださいませ」

「……受け取りますね」

ジャラジャラ渡された綺麗な魔石。演習で手に入る思い出アイテムとして異性に渡すような習慣があるようだ。

なにかのお礼であったり、派閥の関係者に渡したり……微妙に求婚の事例でもあるようである。私に渡したい人間がモーモスに渡し、それを一度ナーシュが受取り、私がそれらを受け取った。

政治的に私に求婚したい生徒もいたがエルストラさんが撃退していた。結構強めに。