軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第226話 トーテムヘッドっ!!

なんだか可愛らしく「お部屋訪問」とかよりも「強盗」のような気分になった。

タロースの家は名家であり、彼女はお嬢様だ。お部屋訪問にはちょっとドキドキしていた。しかし天井からの入口を開けると同時にエール先生が無音で突入、侍従のお姉さんが座っていたのだが一瞬でなにか制圧された。殺してないよね……?

その鮮やかな手口を見て、感心するよりも渋い顔になっていたと思う。

そのまま待っているとリーズと目があった。なにか叫ぼうとしたようだがエール先生が風を操ったようである。

先行したエール先生に犬耳のおねーさんとワーとニャールルとリューちゃんで入った。

ジュリオンは天井に入れなかったのでお留守番である。3m超えの巨体だし仕方ない。

もしも私室に誰か訪ねてきたら対応する人もいるしね。

ニャールルとワーは物資を持ってうちにやってきていたので連れてきた。ニャールルは女性だしリューちゃんと仲が良い。ワーは男の子だが黒い狐人の人たちは隠密の仕事もしているし……もしかしたら今後必要になるかも知れないから顔合わせのためにも連れてきた。

「リーズ、急に来てすいません。秘密で話したいことがあるので無理に来ました。急でほんとすいませんがいいですか?」

「お、驚いたじゃない」

ちょっと涙目のリーズは申し訳ないがちょっと可愛かった。ごめんって、ほとんど強盗だもんね。

「毒は大丈夫なの?血だらけで倒れたって聞いたわよ」

「秘術で酷い目にあいました。もう大丈夫です」

「なんてところからでてくるのよ……」

「学園の守護の道ですね。リーズは使っちゃ駄目ですよ?」

真っ暗なまま一緒のベッドに座って久々に近況なんかを話してみるが、やはり話しやすい。

「そう、お土産ありがとうね。髪飾り、凄く嬉しかったわ」

「作ってもらったかいがありました。水精石に近いものらしいです」

「お土産でそんな貴重なもの渡すんじゃ……むー」

「声が大きいですよ、しー」

ベッドの上で話してるとちょっと楽しくなってきた。

声が大きくなったので指先で制すると察してくれたが……リーズもなんだか嬉しそうである。

「リヴァイアスで人気の食べ物とお茶も持ってきてますけど食べますか?」

「……食べるわ」

落ち着いている部分から察するにわざわざ天井裏から現れた理由もわかっているのかもしれない。

ロールアイスでも良かったのだけど、蒸し餃子と蒸し焼売にした。

ロールアイスは氷をたくさん使うから装置が結構錆びやすいし、夜中に食べるには罪悪感があった。

リヴァイアスでは急激な人口増加から薪不足もあって、蒸気を使った料理を仕事をしながら作っていた。水の温度は上げて蒸気を作ることが出来る。だけど蒸気にした段階で液体から外れるからかコントロールが出来なかった。氷と一緒である。

でも熱い蒸気さえ出せれば蒸し鍋で料理ができる。

リヴァイアスでは大きな連結容器で蒸し餃子や蒸しパンを作っていたのだが、こちらでもそこそこ美味しく作れた。……リヴァイアスの薪問題、どうなってるかな。そろそろ薪や解決する道具が出来てたら良いんだけど。

「っあふ!……ありがとう、熱いけど美味しいわ。ツルンとして肉汁たっぷり……熱いけど」

茶葉も用意してきたけどお水を出して渡すと飲んでくれた。

自分でもうまく出来た自信作だ。蒸し餃子も蒸し焼売も似たようなものだがミンチ肉のきめ細かさやスパイスの量が違う。餃子は生姜に近い野菜があって強めの肉と合わせて結構強い味がする。焼売は細かくミンチにして滑らかな舌触りに仕立てた。衣もつるりとして、余分な油も落ちてるのにしっかりジューシー。

リヴァイアスでは執務室で仕事しながら作って何度も味見した。領主が食べるものだからと皆調理に気合を入れてくれたし、ミンチやスパイスの配合や工夫をしてくれた。リヴァイアスでも人気のレシピだ。

「だったら良かったです」

「……で?どうしてあんなところから来たのよ?」

「天井裏には学園の警備の人が移動できるようになってるみたいです。内緒ですよ?」

「……そう、さすが学園ね………………驚いたじゃない」

少し非難の色が見える。怖かったのかもしれない。

それでも落ち着いて対応してくれて助かる。

「ごめんなさい。でも、お話もあったので」

「なによ」

「えっと、タロースのご家族から私の情報を流すように言われていると思うのですが、リーズはどうするつもりかなーと」

「っ!!?」

彼女の態度から『なんで知ってんのよ』という驚愕が見て取れる。

「先に言っておきますが私はリーズを信じてます」

少し後ろめたそうなリーズの手を取って目を合わせて言った。

凄くわかりやすい子だ。可愛い。

「もしも敵になるのだとしたら、私に何も言わずに近づけば良いはずだったわけですしね。これからもしも敵に回るとしても、正面から堂々とにしましょうね!」

「……なによ、それ」

「ご実家の動きや国の情勢でしなくちゃならないことだってあるかもしれません。でも、私はリーズとは友達だと思ってます。やるなら正々堂々……正面からまっすぐやり合いましょう」

行動から察するにおそらく私の味方であろうリーズだが、もしかしたら毒の準備でもしている可能性はある。

しかし、もしもリーズと戦うことになったり、毒を盛られるとしても……いや、そういうことがないようにしたいが、どちらにしても後腐れがないようにしたい。彼女の心に傷を残さないように、正々堂々としたい。

「馬鹿じゃない?うぅぅ、フリムの安全のためなら今殺しちゃえばいいのに、苦しい立場なのはフリムなのに!なんでそんな……」

声が大きくなってきたリーズを制止して、私の素直な気持ちを伝える。

――――この争いは、どうしようもない。

人は生きていくだけで集団を作って、自分や自分の家族や仲間を作って助けていく。助け合って生きていく上で……別の集団を傷つけることもある。

人は精霊によって強い力が使えるようになる。強い力を使える人は貴族になって、貴族はその力で家族を守り、研鑽し、力を蓄える。強い家は国から優遇されるみたいだし、更に大家ともなれば名誉と権力も手に入る。家の強さは巡り巡って自身や家族の安全度も増す。……そのために争うのはどうかと思うがそれも仕方がないのかもしれない。

そういう仕組みで、そういう国で、そういう世界だ。

本来ならリーズとは話すこともなく、リーズがなにかしてくるまで警戒していれば良いかもしれない。

「……リーズが友達だからです」

でも、そんな世界だからって、私がそうしないといけないわけじゃない。

なにかの方法で話し合うことが出来るのなら……私はそうしたい。こちらの常識だからって全部が全部、私が従わないといけないわけじゃない。

「リーズ、貴女がこれからどうしたいのか、聞かせてほしいです」

「あ、あたしはぁ……」

少し泣かせてしまった。

私の立場を考えてくれているようだし……毒を飲まされたという噂のある、狙われる立場の年下の子に気遣われたからかな?

ぽつりぽつりと、だがしっかりとリーズは話してくれた。

「もっとフリムが、聞いてたように酷い人だったらそうしたかもしれない。……だけどそうじゃなかった」

彼女は彼女の家族も大切だが、家族には正しいことをするように教わってきた。だから私の情報を流すなんて嫌。だけど家族と縁を切るのも難しいそうだ。

「私はこの目で、フリムがちゃんとした良い子ってわかったから……」

迷宮に入る行事。その時までに誰かになにか言われたりする可能性もあった。

だからどちらともつかない態度を取って様子見するように考えていたようだ。

「でもご実家との関係が悪くなるかも知れませんよ?良いのですか?」

「良いのですかって?そんなのあんたが心配することじゃないのよ。クソッタレな事を言いだした実家が悪いんだから」

おぉ、口が悪い。でも味方をしてくれるようで助かる。

クライグくんと一緒に会ったときには結構口が悪かったし、これがリーズの素なのかもしれない。

「でも心配してくれてありがとうね。ホント国の事情も政治なんてクソッタレよ……。いざとなったら私はおじいちゃんのところに行くから大丈夫よ」

「あー、部屋を見てすぐに分かったのですが、もしかしておじいちゃんって……」

「ケディ・ローガって言って、優しいおじいちゃんよ……そういえばリヴァイアスに行ってたって聞いたのだけど……まさかこのお土産って」

「うちのお土産です。ナンカゴメンナサイ」

部屋の隅にはよく見た覚えのある無数のトーテムヘッドが積み上げられていた。

お嬢様のいる部屋だからこう、ちょっと期待したのだが……部屋に存在感のありすぎるトーテムヘッドが積み上げられていて色々と察してしまった部分はある。

口から煙を上げる木彫りの顔のなにか。頭部を使うからトーテムのようだとは思うがデザインは結構違う。一応この木は燃えにくく、種火を少し作って口の中を少し燃やすと一定時間良い香りがする煙が出る。虫除けの効果も少しあるらしい。

シャルルが私に買ってくれたものをリヴァイアスの部屋においていて……それをローガ将軍が見ていた。

まさか、リーズの祖父だったとは……ローガ将軍はリーズと年齢が近い私が気に入ってこれを持っていたように思ったのだろうか?リヴァイアスの露店にある分全て買って帰ったようだが、まさかこんな場所にあるなんてな……。

聞いてみるとこのトーテムヘッドはやはりローガ将軍からリーズへのお土産だが、リーズの友達にも配るようにという配慮があったらしい。しかし、配ったのはテルギシアにのみだそうだ。見た目にも「なんか呪われそう」と言われたそうで……なんだか申し訳なく思う。

壁に積まれているトーテムは刻んで香木として商店で売ろうと提案しておいた。

リーズは私についてくれるとわかったし、そこから私がリヴァイアスにいた話をして……深夜なのに盛り上がってしまった。途中エール先生が夜食を追加してくれた。

特にドゥッガが大きな木槌でクーリディアス王を攻撃したシーンには目を輝かせていたのと……ボルッソファミリーの建築技術について話すと色々と聞かれた。

ニャールルがあやしてくれているリューちゃんを一緒に撫でて……学園の話なんかもして、いつしかとりとめもなく話をしていた。

「ありがとうねフリム。でも、大丈夫なの?」

「販売の件ですか?それならきっと―――」

「そうじゃなくて。貴女もその……御実家の、水の大家の長と杖を交えることになりそうなのよね?」

「そうですね」

実家という実感はまったくないが御実家と言えばそうなのだろう。

ライアーム派についた伯父さんからはまだ手紙が返ってきていない。

挑戦を受けないと貴族社会では大恥者として大家の座を降ろされることもあるそうだし何らかのリアクションがあるはずだが……手紙が届くまでに距離もある。

「だったらヴェルダース侯爵は強大な力を持っているから気をつけたほうが良いわよ?先程の話を聞いているとフリムは自分の力に自信があるみたいだけど……」

「え、でも……」

水の魔法使いが相手であれば負ける気がしない。

水の代表を決める時にもやはり水の魔法は「水の生成速度」や「射程距離」が戦闘には向かないと再確認が出来た。この杖ありで戦うのなら……水の作る速度も射程も私にはある。尽きないほどの魔力がある自分が負けるわけがないと思うのだが。

「乾きの水瓶を使った水の試練。――――ルカリム上級侯爵の石の数は757個、オベイロスで最も強い水の魔法使いよ?わかってる?」

「――――ちょっと詳しくお願いできますか?」

「えぇ……」

あれ?もしかして私が挑戦状を送った伯父様って……もしかして侮っていい相手じゃない?

もしかして私、ちょっと調子に乗ってたのかもしれない。