軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第214話 お掃除っ!!

朝起きるとまた精霊の像に祈って……神殿の掃除だ。

神殿の掃除は貴族も行うことがある。先輩方も楽しそうに雑巾がけや箒がけをしている。

「水の魔法で洗浄してもいいですか?割れる可能性もありますがとても綺麗になると思います」

「勿論です。しかし、魔法を使ってもよろしいので?力は温存しておくものでは?」

「大丈夫です」

許可は取れた。トイレ、廊下、像、階段、外壁、どんどん高圧洗浄をかけていく。

久々の掃除だ。ほんのり見える汚れを一掃していくのは楽しい。ガンガン水を使っていくのを先輩方はドン引きして見ていた。

「フレーミス様。あの……質を測るのに量はたしかに必要はありません。しかし魔力を込めた水のほうが質は良いとされていますし、抑えたほうが」

「あ、一日中でも出来ますので大丈夫です」

「え?…………………えぇ?」

やはり、掃除は楽しい。

建物の高い場所まで、水の腕で自分を持ち上げて汚れをどんどん落としていく。屋根も綺麗に見えたがここまで汚れていたか……。

掃除は無心になれて良い。高圧洗浄機での掃除はブラシでも汚れが取れなかった汚れが一気に落ちる。前世でおばあちゃん家の床や階段を高圧洗浄機で掃除して喜ばれたことがあるけど……やっぱり楽しいな。

真っ黒な像が真っ白に、ぬるりと滑る階段や床が全く滑らなくなるなど……掃除は美観のみならず機能性の保護や衛生面等様々な利点もある。

ドバドバやっていると水たまりができてしまっていた。どうやら排水口が詰まっているようだ。

「よく詰まるんだよなここ」

「また神官長に怒られるぞ」

「最近掃除したばっかりなのにな」

「ここも掃除してもいいですか?」

神官も生徒も、掃除なんかをやりたくなさそうだったので私が立候補した。

「お願いできますか?」

「はい<水よ>」

地中に埋まった排水溝。中の水は勿論汚れている。少しぐらい溢れるのは当然と考え水を足して自分の掌握できる水の範囲を増やし、先端から高圧洗浄をかけていく…………ものすごく負担が凄いなこれ!!?

自分で操る水の先から高圧洗浄を噴射してヘドロのような堆積物に穴を開けていく。元々少しは水の流れもあったのだから流れる量が増えて良いのだが……水を噴射した後に汚れが操っている側に飛んできて操りにくくなる。狭い空間だから容赦なく汚れは水を侵食するし……駄目だな。やり方を変えよう。

水の腕をドリルのようにして。汚れや砂利にアプローチする。汚れを貫通して流す高圧洗浄のほうが掃除している感じはするが私の負担が大きい。汚れを掴むように削り取って手前側にかき出す。汚れが溶けて使えなくなった水は流していく。

先程まで高圧洗浄をバシャバシャやっていた私が排水口の前で杖を掲げて固まっているのはおかしく見えるのだろうか?先輩方に見られている気がする。エルストラさんも私のことをちらりと見て行ってしまった。

数百メートルほどだろうか?いくつかの排水口も同じように掃除しているとおかしな部分に気がついた。

「すいません、土魔法を使える方を呼んでいただけますか?」

「どうかされましたか?」

「ちょっと、問題かも知れません。でも、急ぎではないです」

「問題と言いますと?」

「確証はないのですが――――地盤沈下の可能性があります」

一体いつからメンテナンスされていなかったのだろうか……。掃除は問題の早期発見というメリットもある。

すぐに神官と先生方が集まってきてくれた。

「ここかの?」

「はい。確証はありませんが、空洞がある感じがしました」

「どうやって調べたのじゃ?」

「あっちの排水口から水の魔法で掃除していまして……」

「――――随分成長したみたいじゃの。水の魔法使いの中では抜きん出ておる」

ユース老先生やクライグくん、他にも数人の土魔法使いが来てくれた。

水属性の魔法は自分の体から近ければ水を操れるがこんな距離を操れる人は珍しいらしい。しかも排水溝である。魔法を使って掃除するなんてそもそもいないようだ。

排水溝を掃除しているとふと底が抜けた気がした。水に視覚はないから触れてみると砂利っぽくて……探りきれないほど大きな穴があった。水が汚れてその先はあまり分からなかったのもあるが別の水路はきっちり整備されているのとは全く違う形をしていたので気がつけた。

道路や排水溝のようなものは頑丈に見えるが、やはり定期的なメンテナンスが必要なのだ。

土魔法による穴掘りが始まって……見てみると結構な大穴だった。それも穴の方向が建物の下で……利用者も多かったことから考えると危険だったはず。

「お手柄ではあるんじゃが、余り水を粗末に使うのはよろしく無いのぉ。いざという時に飲める水がなくなれば人は困る。それにその者がどう魔法を扱っているのか……周りの視線というものもあるからの」

「……ありがとうございます」

色々言いたいこともあったが今回は何も言わないでおこう。ユース老先生は私を心配してくれているし、素直に聞き入れる。

やはり何事も点検やメンテナンスは大事だな。石造りだったから建物は崩れなかったが、もしかしたら地震や何らかの衝撃で建物が崩れていたかもしれない。

高圧洗浄で泥を落とすと他にも壁のヒビも見つけることができたし、うん。掃除は大事である。

ユース老先生の魔法はモリモリ大穴を直してくれたし、細かい部分は生徒たちが素早くどうにかしてくれた。ボルッソファミリーでわかっていたことだが、魔法を使える人数が増えるとやはり凄まじい。

駆けつけてくれたユース老先生やクライグ君たちには水を飲んでもらった。結構な大事になってしまったな。

「ではの…………おっと!そうじゃ!!儂が来たのは用があったからじゃった!」

「なんでしょうか?」

「賢者フリムよ!リヴァイアス領の土産の石!あれは水の力が豊富での!また送って欲しいのじゃが!!」

「詳しくお願いします」

口から煙の出るトーテムヘッド、香辛料、塩、様々な工芸品、それと青い石。このあたりがリヴァイアスの土産物としてよくあるものだった。

青い石はちょっと綺麗な程度だったが、トーテムヘッドよりは良いかなと石を少し加工したものをお土産に渡していた。

ついでに大きめの石を「こんなのありました」とサンプル代わりに調べてもらっていた。その石がなにかに使えないかと。

調べると石は最低品質の水精石だった。力も弱いし水はにじむだけ。しかしレアアイテムのようである。

「これ単体ではほとんど何も出来ないが、これを使えば研究が進む!!頼む!金なら払うでな!!もっと送ってくれないかの?!」

「ユースス先生!最近引きこもってると思えばそんな面白そうなことをっ!?」

「ずるいです!賢者フレーミス!ぜひ私に、わーたーしーに!命じてくださいませ!!?」

「えぇい!希少な精石を主らに任せるものかよ!!?」

「「ずるい!!」」

ワーギャー取っ組み合いをしているユース老先生にはまた送ると言っておいて掃除に戻る。

あの石、屋台でゴロゴロ売られてたちょっときれいな石程度だったんだけど、特産品になるのだろうか?

掃除に戻ると、他の属性の神官たちにも頭を下げられた。

まずは水属性関係の神殿の掃除をしていたのだが、あまりにピカピカになっていたからうちもやってほしいと交渉に来たようだ。

質を測るまで数日間掃除とお祈りとスープの日が続くし別に構わないが……この後、大穴とはいかないまでも普段目につかない破損や劣化をいくつも見つけることが出来た。掃除大事である。

たまに神殿外からこちらを心配そうに見ているジュリオンたちには申し訳ないが結構楽しい日を過ごせたように思う。

先輩方や神官にも褒められ、貴族としての仕事からも解放された充実した数日。リューちゃんのことがなければ神官たちには尊敬されているし、たまに祈られている。

安全で、何不自由無い幸せな数日。

先輩方も水属性の事情を教えてくれたりと学生らしく良い日々だった。エール先生がいないのは悲しいが。

しかし――――何かがおかしい気がする。違和感がなにかある。それが何なのかはわからない。何事もない日常が久しぶりすぎてなにか大きな忘れ物をしているような気がする。

……違和感の正体を見つけられないまま時を過ごしてしまった。