軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第206話 水の量っ!!

学園の行事……学生の中で一番強い属性の代表者を選ぶのだ。

各属性で最も強いものを学園の代表として決める。

魔法が使えない生徒には関係ないが貴族の学生は参加しなければならない。参加しなければ「逃げた」とみなされ、同じ行事がまた行われるまでずっとこき下ろされることとなる。

貴族の跡継ぎや当主は学生のうちでこれに参加しないのは貴族社会の中でとても不名誉である。私の場合、参加しなければ貴族たちに「やはり王は資格のないものを貴族とした」と見られる可能性もある。そうなればシャルルの評判は落ちるし、私や私の家は来年の行事まで舐められることとなる。

SNSもネットもないこの世界では情報の伝達が遅い。もしかしたら辺境の地では私の存在もまだ知らない人もいるかもしれない。私の二つ名の一つには『爆炎』というものもあるし属性すら正しく知られてない可能性もある。

流石に戦争発生での不参加では仕方ないが、勝利によって時間も出来たし半ば強制参加となった。オベイロスの貴族的にはリヴァイアス領に残って統治をするよりも大切なことらしい。

この行事の恐ろしいところは重病人でも参加は絶対で……意識がなくとも担ぎ込まれて参加することとなる。この行事は貴族社会では注目されるもので家門の将来も見られる。家によっては爵位の継承にも左右するのだとか……怖いなこの行事。

学園の代表になれれば一生語り継がれる名誉だそうだが……正直興味はない。しかし、どちらにしろ私の立場上絶対に出ないといけない。

「今の水の代表って誰なのですか?」

「え?そりゃルカ――――」

「私ですよ。フリム。髪が整っていませんよ?」

「あ、お久しぶりですエル――――」

「お姉さん、です」

「…………お、お姉さん」

エルストラ・コーズ・ルカリム、私の従姉妹に当たる……ちょっと不思議なお姉さん。私にお姉さんと呼ばせたいらしい、ルカリム本家の……お姉さん。

私のもっと小さい頃にあったことがあるらしく、無表情ながら多分心配してくれている13歳ぐらいの…………お姉さん。会っていない間に14になっているかも知れないが。

この催しは「生徒の中で最も能力の高い人間の選出」なので、普通学校だけではなく高等学校も対象らしい。去年の勝利者が卒業していないのならまだいると思って聞いてみると本家ルカリムのご令嬢、エルストラさんが前年の勝利者で現在の代表だった。

つまり私は水の属性の立候補者と……さらにエルストラさんとも競わないといけない。

ミョンミョンと動くアホ毛を整えようとしてくれたようだがそれは勝手に動くんだ。……触ろうとしたエルストラさんの手をペシリと払ったアホ毛。

「…………」

「…………」

私の頭上のアホ毛と見つめ合うエルストラさん。

「精霊様のご加護ってやつだよね!手紙に書いてたやつ!凄いねフリムさま!」

「……早速ですが、全ての水魔法を使う生徒を集めています。ついてきていただけますよね?」

「はい」

闘技場に行くとすでに人が集まっていた。コロシアムに近い形だが内部がどうなってるのか構造が気になるな。

行ってみると既に青い装飾をつけた人が多く待っていた。年齢はほぼ全員私より上だろう。周りの席にも既に見物人が多数いる。

中央に集まった生徒たちは皆私を見てくる。

「彼らは?」

「水属性を使う魔法使いとなります。わたくしが代表として集めました」

一度でも代表になれば何らかの権力があるのかも知れない。

無表情ながらにドヤ顔してきている気がするが……私が今日の何時に来るという通達はなかったはずだし、来るまでずっと待たせるつもりだったのだろうか?

「フリム、これから行われる伝統と規則は知っていますね?」

「知らないです」

「――――なるほど。我ら水の使い手は火や風のように野蛮に争うことはありません。量と質、そして精霊様。この三点を調べます。そうして最も力の強い存在が学園の代表者となるのです」

うーん。桁違いの魔法が使えると言われる私が多分勝つと思うけど、その制度だと量で勝つ人、質で勝つ人、精霊で勝つ人とかで割れることはないのだろうか?

「では代表となりえそうな存在が二人以上いた場合はどうなるのでしょうか?決めにくい場合もあると思いますが」

「そうなること自体が稀ですが、その場合は話し合って決めることとなります。稀に杖にかけて争うことも」

「エルストラ様、こんな子供よりもやはりエルストラ様が代表で良いのではないでしょうか?」

「そうです!こんなエセ賢者に代表は務まりませんよ!!」

「貴族の出ですら無いという話もあります。それを代表とは……そもそも資格すらないのではないのでしょうか?」

「煽るな殺されるぞ貴様ら!正気か!!?」

「噂に踊らされ過ぎだぞ。それとも『不参加』か?」

「後ろの竜人は強そうだな」

「……参加はする。お前らは見てないから言えるのだ」

「王家の人形という噂もあります。彼女の参加は不正が疑われますね」

「伝統ある競いの場にふさわしくない」

「そもそも学園の試験を何も受けていない不良に代表はよろしく無いでしょう」

上級生を中心に批判されている。

私を知らない人もいるのだろう。嫌悪の目や訝しげな目で見ている生徒たち、まっすぐ怒りを向けるものもいる。

しかし、半数は彼らの後ろからやめておけと止めようとしている人もいる。フリムちゃんは猛獣ではないのだが。

「おだまりなさい。フレーミス侯爵閣下はルカリムの血を引くわたくしの大切な従姉妹です。まだ若いのは確かですが現在の代表としてわたくしが彼女を認めます」

「フフ、お手並ミ拝見ですネ!リヴァイアス侯爵!ヨロシク!!」

出てきたのは深い紫の髪のお姉さん、生徒にしては結構な年に見える。28ぐらいだろうか?胸はないが妖艶な雰囲気を醸し出している。

言葉のイントネーションが少し聞き慣れないものだし、身につける装飾品も珍しいものだ。寒くもないのにマフラーをしていて……外国の人かな。

「よろしくお願いします。先輩。フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム・リヴァイアスです。侯爵位を賜っています」

「オー、ワたしガニューラ・メーディース・タナナ!遠い親戚ですネ!士爵ですヨ!」

握手してブンブン手を揺らされた。

なんだろ、パワフルな人だ。それよりもこの人の家名、タナナなんだな。

「タナナの人とは初めて会いました」

「アー、そうだネ!タナナどこにでもいるからネ。アッチ行ってコッチバっかりしてる」

「放浪してるですね」

やはり外国の人なのだろう。声もおかしく聞こえるが言い回しもまだ慣れてないようだ。

「ソウ、ソれ!ソれしてるヘんないエ!ワたしもなんでコんなコころにいることやラ?オネーサンとヨんでくれテいいですヨ?」

「その辺にしておきなさい。前代表――――始めますよ」

エルストラさんが割って入ってきた。

声の抑揚からしてこの人は外国人さんだろう。一応私の後ろにはジュリオンがいるのに恐れもしない辺り度胸はありそうだ。

「同じ家名同士の交流はそこまで。参加者と不参加者の人数は把握しています。フリムが最後です」

かなりの人数がいる学生たちの前に出たエルストラさん。

「ここに居る生徒で力を測り合います。繁栄の水瓶をここに!参加者は杖を掲げ、宣誓しなさい!」

「「「精霊のため!国のため!家のため!力を尽くすと誓おう!」」」

「……フリム?」

「せ、せいれいのため、くにのため、いえのため、ちからをつくすとちかおう?」

焦った。宣誓があるとか聞いてない。

皆が同時に杖を掲げて宣誓した後、私一人が遅れて宣誓した。………あってるよね?他の生徒の視線が集まって顔が熱いのがわかる。

先生が持ってきた大きめの水瓶を中心に、円形の椅子を土魔法の生徒たちが作ってくれたので座っていく。あ、クライグくんも居る。少し苦笑されてしまった。

コロシアムの中央、更に中央に作られたクレーター状の舞台。水属性の子弟たちが席かけていった。私もその一箇所に座る。

「ではわたくしから――――<水よ、清廉なる水よ。繁栄の水瓶を満たし給え>」

派手な模様の水瓶には小石のようなものを大人の先生が入れて……そこにエルストラさんが水を注いでいった。

尾の長い金魚、いや、熱帯魚のような魚の精霊が見えた気がする。

「さすがエルストラ様」

「これは代表は決まったようなものでは?」

「どこかの水売り伯爵とは違うな」

結構な勢いで水が注がれていったが水瓶から水が溢れることはなかった。

ものすごい勢いで水を出していくエルストラさん。大きく開いた水瓶の口にどんどん注いでいるが全く溢れることはない。水瓶には足がついている。置かれた台座から地面に繋がって流れ落ちているわけでもないのにずっと注がれていく。

「―――――はぁっはぁっ」

かなりの時間をかけて魔法を使っていたエルストラさん。

くらりとエルストラさんがふらついて、護衛のブレーリグスが支えた。

「結果は、どう、です?」

「少々お待ちを……12個とあまりが一つですね。素晴らしい結果です!前回より2つも伸びましたね!!」

「おぉ!!」

「学園の記録に残りましたね!」

「素晴らしい!!」

水瓶には小石を入れていたはずだがその小石がいくつか透明度を増していた。透明度の増した石はエルストラさんに渡された。

監督のような先生は水瓶をひっくり返して透明度のない石を取り出し、こちらに見せてから色が変わっていない黒い石を入れ直した。

「あれはなんでしょう?」

「あれは魔石です。水瓶の魔導具に魔石を入れて水を注ぐことで水の魔石に魔力を込めることが出来ます。すごく効率が悪いので以前は枯渇の水瓶と呼ばれていたそうですが量を測るために使われています」

「なるほど」

後ろの席から声をかけられた。ナーシュ・マークデンバイヤー、うちの重臣であり水の魔法使いをまとめるレーム家の家宰だったキエットのひ孫でバグバルの娘。学園ではクラルス先生に学び、薬学に長けた先輩。卒業後はうちの家臣になる人だ。

しかし、なるほど。量を測るのに順番にあの水瓶に水を注げば魔石が充電できるようだ。いや、充電っぽい何かか。

それも一個ずつ魔力が補充されるからそれの個数で魔力量を調べることができる。エルストラさんは12個という記録だけど多いのだろうか?

「普通は3つもできれば色を変えられれば良いほうです。学生にも精霊と既に恩寵を頂いている人もいますが10を超える人は稀ですね」

ガニューラさんが次に水を注ぎ、結果は7つだった。

参加者はこれまで実績を残していた人から順番に行われ、私は初参加なので最後だ。

「おぉ!!水よ!水よ!水よぉ!!」

「うるせぇ!」

「どうせ1個だろ!」

他の生徒も次々にチャレンジしていくが、普通の生徒は1~2個が多い。力の弱い人がやるとわずかに色の変わった魔石を探すのが大変で結構な時間がかかった。

特設ベッドで寝かされている人も杖だけ振って水を入れていた。

一種の祭りのようで生徒たちは野次を飛ばしながら楽しんでいるようだ。

「よっしこれで1つと半分だ!!」

「本当にそれ色が変わっているか?」

「早くしろ」

彼らにとって「1個」と「1個と薄い色がもう一つ」では結果が違うようである。

「次はフリム、貴女で最後です」

「――――……はい」

私の順番はまだかと待つこともやめて時間を潰しているとついに声がかかった。