軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第177話 将軍戦……。

「世話になってる間、働かんというのは性に合わん。仕事させてもらおう」

既に働いてもらっていたのだが……野暮なツッコミは言わないでおくようにしよう。

部下の人達もここでの仕事に協力してもらっている。お風呂に光成分少なめの魔力水を入れてからというもの疲れ切っていた部下さん達はツヤツヤになってきている気がする。

「クーリディアスの腰抜け共は使者もよこさんというのは嘆かわしいの!同朋がこれほど捕まっているというのに!」

「ローガ……食事ぐらい静かに取りなさい。それにどんな視点で言ってるのよ」

「あ?なんぞ言うたか若作り?」

「ぶっ殺されたいのかしら?……昔はこんなのじゃなかったのにね」

クラルス先生に向かって面と向かって若作りといえる胆力。

軽口が言い合える仲なのか、もしかしたら同世代なのかもしれない……絶対に口には出せないが。

「それにしても海の魚は美味いの!塩気が良いわい!」

「せめて謝罪しろクソジジイ!!」

「食事ぐらい静かにせんか!若作り!!」

「 お 前 が 言 う な ぁ っ !!!」

「……フリム様、一度下がりましょうか」

「はい」

クラルス先生とローガ将軍は仲がいいのか悪いのか。クラルス先生がローガ将軍に蹴りかかったところで私はエール先生に連れ出された。

戦争はどうなるかわからないがとりあえずワイバーンの訓練をしている間は確実にいてくれることになったローガ将軍だが彼なりに色んな仕事に顔を突っ込んで手伝ってくれている。

うちの亜人中心の軍に訓練をつけていたり、悪漢を成敗したと他領から来たチンピラをボコボコにしたり、物資の搬入数の確認をしてくれたりと……人手不足の解消に貢献してくれている。

報告のたびに私の政務室にまで来るものだからもう大分慣れた。

報告書が積み上がり、報告に来た人でごった返し、海猫族が可愛らしくも忙しく働き、貴族たちや商人たちからプレゼントが贈られてどんどん狭くなってきた政務室に。

「リヴァイアス侯は若いのに働きすぎじゃ。やれることは大人にやらせればよい」

「……数年も領主不在の侯爵領。言語による種族間の分裂。政治機関の消失。各部族によるなかば独立した自治。他国・他領からの侵略。…………どう頑張っても今は人が足りませんよ」

「むぅ」

「しばらくすれば王都にいる私の家臣たちも来ます。今が私の頑張りどころです!」

ローガ将軍お手紙は王都で私宛に集めたもので大量にあった。キエットからの手紙では家臣をこちらに派遣してくれる事になっている。収支は順調で国やルカリム本家からの動向、それに対立貴族などの動きまで書いてくれている。

フィレー学園長から正式にこちらの調査をしたいと申し込んできている。数年閉鎖されていたリヴァイアス領は中に入れないことから荒れ地となっていた可能性もあったし薬草や鉱石の生態調査がしたいそうな。

モーモスは受けられる試験の全てを突破したようだ。――――試験、終わったか。なんだろう、サボったわけじゃないが大事な試験を受けられなかったというのは何かやらかした気がしてストレスである。水飲もう。

同学年の皆からの手紙は嬉しかったが……流石は将軍の地位についてるだけはある。高位貴族たちがリヴァイアス家には人材がいないと見て「うちの息子を士官させてくれ」だとか私への結婚の申込みとかも大量に届けられて……まとめて燃やしてしまいたくなる。

政務が忙しすぎるので学園に向けて鳥人部隊に手紙を持たせて飛んで行ってもらった。有能な人間であれば身分は関係なく雇用もありうるのでぜひ来てほしいと熱烈に泣き言をアピールしておいた。

貴族の士官目的の人にもオベイロス城で厳しい試験監督がいて試用期間もあることを明記した上で来るのならどうぞと城に寄って伝えてもらう。

私の小柄な身長を超えるだけの書類が毎日運び込まれるこの書類地獄。流石にみんな疲弊する。何でもこなすスーパーエール先生でもこの量はさばききれない。

「……そぉか。どれ、儂ももう少し手伝ってやろう」

「ありがとうございます!」

泥だらけで仕事を手伝ってくれるローガ将軍。将軍という立場から特別扱いしないとと思ったがローガ将軍は軍の仲間と同じような扱いを受けたがる。

『将軍』という立場はやはり国にとって重要なはずで接待をするのも当然のはずなのだが「別にいい」と一度だけ宴を出た後は用意しても一般兵と同じ食事を食べる。

城の風呂場に何百人も来られるのは流石に警備上問題だったのだがそれを知ってかいつの間にか外に大きな銭湯を作ってうちの軍と一緒に風呂に入っていた。ボルッソファミリーを使ったのだろう……結局お湯をいれに行くのは私なんだが。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

しばらくして領内を見回っているとローガ将軍が自分の率いる軍とうちの軍で訓練していた。

「持ち味を活かせ!はよぉ動けるんじゃから思い切ってこい!!な ぁ に や っ と る ん じ ゃ !!!!」

ローガ将軍の軍は盾を並べてリヴァイアスの兵の突進を真っ向から受け止めた。隊列が明らかに揺らいだのに、一人での突進で終わって揺らいだ隊列も直ぐに元に戻ってしまった。先頭を突っ走った人は先を丸めた穂先を当てられて犬死にである。

ジュリオンによると新しい軍隊はリヴァイアス当主不在によって儀式が出来ず、言葉による意思疎通ができなくなった。そして僅か数年のうちに他種族間での連携が壊滅的に悪くなったそうだ。

「おぉ!リヴァイアス侯!視察ですかな!!こ ら ぁ !! 訓 練 を 続 け ろ ぉ !!!!!まったく!」

「様子はどうですか?」

すごく大きな声で指導するローガ将軍に近づいて様子を聞く。

「もったいない!せっかくの身体能力を活かしきれておらん!!うちに何人かほしいぐらいにはもったいないわい!!」

「褒めてるんですか貶してるんですか……」

身体能力とやる気はあるのだが種族間で足並みを揃えられてない。

単一の種族では少数でも軍を脅かすほどの武力があるのに、他の種族と集まると途端に弱くなる。それぞれの種族で得意な戦い方が違うし、何より若手が多くて対人戦の機微に慣れていない。

ジュリオンとアモスは一人でも軍を相手に出来るらしいがあれは例外のはず。なのに訓練用の装備だったとは言えそれを見た部下たちも彼らの強さに憧れてか突撃したいるようである。

「儂の教える戦い方の全てが正しいとは言わん!!お主らにはお主らなりの戦いがあるじゃろう!!だが!こういう戦いもあると!経験を積んでおけ!!!お主らの主も強大かもしれんが無敵ではないっ!!!」

すごく声の大きなローガ将軍。書類仕事では「えー、ここのところはこうじゃから……えー、ここを指示しておけばええかの?えー、人が余っとるそうじゃし」と目を細めて若干自信なさげだったのに。

私が海で戦ったのは一般兵士からすると圧倒的に見えたらしく「自分たちが強くなくてもなんとかなるだろう」という安心感が生まれているらしい。……うーむ。

「リヴァイアス侯、お主の命はオベイロスに騒乱をもたらすかもしれん。そこで力量を見たいのだが如何か?」

「よろしくお願いします」

二つ返事で答えた。

この国で長く将軍をやっていた相手にどこまでやれるかが知りたかった。

エール先生にももし手合わせすることになったら死にはしないので頑張るようにと言われている。

「――――先手は譲ろう、来るが良い」

長く大きな槍を構えたローガ将軍に対して私は杖を掲げた。