軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第107話 パキスの裏切りの代償。

「オルゴの旦那、こいつが弟のパキス・ドゥラッゲンだ。分家のドゥラッゲンの次期当主よ」

「ほう、レルケフと歳が離れてそうだな」

「末の弟で母親も違うんで」

「そうか」

レルケフによって敵の首魁らしき人物に面通しさせられた。

神殿の裏の婆の家の中にいた一人……目付きの鋭い男だ。

他のクソとは全然雰囲気が違う。明らかにこいつがここを取り仕切ってやがる。

「質問いいか?」

「なんだ?金か?」

「それもいいが……あんたはなんでこんな事をした?あんたのことが知りてぇ」

「つまらんことを聞く。そうだな、命令ってのもあるが――――報酬が良いからよ!たかが一人殺すだけで俺はこの国で貴族になれる!!」

手を広げて俺に言ってくるオルゴ。

貴公子面をしているが何処にでも居る没落貴族かどっかの騎士崩れか……。貴族になるのがそんなに嬉しいのか?

しかしすぐに分かった……この性格、レルケフ兄貴と相性が良いはずだ。

「見りゃわかるがあんた相当のやり手だろ?なんで勝ったおーさまよりもライアーム様につくんだ?」

「勝ってる側に与したとしても待遇も報酬も知れている。なら負けてる側と組んだ方が報酬が良いに決まっている」

「そういうもんか」

「そういうもんよ」

堂々としてるこの男「こいつについていけば大丈夫」と思えるような強さを感じる。

「俺は何をすれば良い?」

「………そうだな。事が終わってダワシ殿の跡取りが居るのなら心強い。俺に付いているが良い」

真っ直ぐ俺を見る視線。

たったそれだけで「俺はお前を見ているぞ」と言わんばかりの圧、逆らってはまずいとわかる狡猾さも感じるな。………クソが。

「わかりました。オルゴの旦那と呼んでも?」

「オルゴ卿と呼びなさい」

「はい、オルゴ卿」

背も高く、肉付きも良い。それでいてしっかりと剣と杖を持っていることから騎士の出だとうかがえる。

ダワシのじーさんの言うように見ればわかるものもあるもんだな。肉付き歩き方、仕草、袖、靴、爪……。こいつは貴族で、明らかに魔法使い。それでいてつえぇ。

「緊張しなくとも良い。我らについていれば爵位を望めよう、無論領地もな」

「はい」

厄介だ。クソ兄貴だけでも厄介なのに、もう一人油断できないやつが現れた。

しばらくついて回るが、この男、隙がない。配置した部下の元へ数か所回って異常がないか確認している。酒でも飲んで寝てくれればいいのに。

「パキスだ!インフー先生知らない?」

「……」

「パキス君、ちゃんと答えてやりなさい」

「知らねぇ、部屋に戻っとけ」

「えー、もー……はーい」

孤児院全体を把握しているわけではないのだろう。だからこうやって子供がまだ歩き回っている。

俺を近くに置くことで怪しさを軽減しているのか?

オルゴと呼ばれたこの男、とても清潔かつ身分の高そうな服を着ている。孤児院には学園の偉い人もよく来るから孤児にとって珍しくはないのだ。

とはいえ……

「異常は?」

「……ないっ、です!」

明らかにコイツラにビビっている大人の孤児がいる。殴られたような傷もないし、そういう動きでもないな……多分どっかに脅されて人質にされてる奴らが居る。

しばらく歩き回ってこいつらの人数が、このオルゴが本気で俺を連れ帰ろうとしているのがわかった。

「おい、問題は?」

「ガキが泣いてうるせー程度だ。そっちのは?」

「土産だ。王都のドゥラッゲンの爺はこいつがいれば寝返るさ。殿下もお喜びになるだろう」

中央地下、奥からすすり泣く子の声が聞こえる。

この先は孤児院が火事になったときや攻め込まれた時の逃げ場だったはず。

ほんのりとだが不自然に空気が温かい。色黒野郎の魔導具があるとすればここだな。

「すいません、外から人が来ました」

「なに?」

「どうしましょう?」

肉団子か?いや、やつなら堂々とくればいいし報告はされない。

もしくは見つからないように風を使うはず、別口か?

「孤児か?」

「孤児もいますがフレーミスの配下が何人かいます」

「……気付かれたか?」

「いえ、この雨で銭湯にタオルがないからこっちにあるものを取りに来るように言われたんだとか」

「この雨だからな……なにかしないか見張っとけ」

「あぁ」

入口に向かうとレルケフ兄貴が隠れて見ていた。

女奴隷が指揮をして孤児とともにタオルを集めていた。

「パキス、レルケフ。様子を見てなにかおかしな部分がないか調べてくれ」

「俺は変わったことはないと思うが、パキスはどう思う?」

「まだ見てないからわかんねぇ」

まだ見てない俺に言うなよ。

「お前ならここにいてもおかしくねぇし近くで見てこい」

「わかった」

名前は知らない。女奴隷が2人、リザードマンとラーキアだったか?奴隷の名前なんか覚えても仕方ないと思っていたが、忘れちまった。

普段なら騒がしいガキ共がうるさくはない。雨で疲れてるようにも見えて……場に緊張感を感じる。

「どうかしたのか?」

「あぁパキスの坊っちゃん。いえね、この雨でタオルが足りないんで取りに来まして」

「ふーん」

「なにか?」

笑顔の女奴隷。さっさと帰って欲しい。

危ねぇな、下手すりゃガキもろとも皆殺しになる。

荷車にいっぱいタオルを持って帰るようだが……。もしも騒ぎになってしまえばここの人間が皆敵に回る。争えばこちらの人数では面倒なことになるそうだ。

―――この女、状況がわかってんのか?伝えるべきか?……無理だな。監視の目もある。

調べてるふりでもするべきだと荷車に被せる蝋引き布を少しめくる……剣か。

女奴隷の顔を見る、笑顔だが目は笑ってない。

「―――なんでもねぇよ」

誰にも見られてねぇし、剣に布を被せた。

まだ警戒してる、か………あぁ、この女からすりゃ俺は裏切りもんだよな。

「こほっ、こほっ……!」

「坊っちゃん?」

「風邪ひいたかも知れねぇ、兄貴、オルゴ卿、少し休んできてもいいですか?」

「あぁ、休むと良い」

「ありがとう、ございます……!んんっ!!こほっ!!!ぺっ!」

―――結構、キツイもんだな。

いつもの部屋に戻り、窓を開ける。

「おい、肉団子、聞いてるか?」

聞こえてないか?そろそろ帰ってきているか風の魔法で盗み聞きしていてもおかしくないと思ったが――――

「聞こえてる。なんだ?」

部屋には誰にもいないのに、耳元に声が届く。

キメェな。

「……中の敵は14人、強そうなのはオルゴってやつだ。………地下に色黒の魔導具が、多分ある」

「わかった。もう裏切らずにそこにいろ。痩せガキ」

「うるせー、肉団子が」

咳が出そうなのを抑え、布団に寝転がる。

肉団子に言われたわけじゃないがクラクラして結構きつい。立っていられなかった。

―――すぐに乱暴にドアが開けられた。

「よぉ、パキス……今誰かと話してなかったか?」

「いいや、どうしたよ兄貴」

「んー、ちょっと話をな」

すぐ横に座ったレルケフ兄貴。

機嫌は良さそうだがどうしたんだ?

「なぁ、パキス、テメー……俺を裏切らねぇよな?」

「俺が兄貴を裏切るわけねぇだろーが」

「だよな、お前が俺を裏切るわけねぇよな?……あのあんちゃんについていきゃ俺もお前もお貴族様だ。フリムみたいな小娘なんぞに頭を下げなくても良い。それどころか酒に金、女に領地、好き放題出来るってもんだ。良い話だろ?」

欲深い兄貴だからな。ほしいもんが手に入るならフリムのもとで働く必要はねぇ。

たしかに、俺だってそういう生活が出来るかも知れねぇ。

「………あぁ、良い話だな。楽しみだぜ」

「こんな良い話を持ってきた俺様は感謝されるべきだよな?」

「………………あぁ、感謝してるぜ兄貴」

「そうだ!良い話を持ってきた俺をもっと感謝しろよパキス!!はっはっは!はぁーはっはっは!!」

満足そうな顔をしているレルケフ兄貴。

俺がなにかしでかさないように言い含めに来たのか?

腰を上げて、出ていこうとする兄貴。

「はぁ……――――残念だよ、弟を殺すことになるなんてな」

「……あがっ!!?」

揺れる視界に、大きな兄貴が一気に近づいてきて、腹を刺された。

「お前、隷属か制約あたりの魔法受けてるよな?馬鹿だな、従うべきお兄ちゃんより血反吐吐いてまであんなガキをとるなんてな………兄貴の言うことは絶対って昔教えただろうに」

「くがっ??!!!」

短剣がねじ込まれて―――――腹が熱い。

「ミュードと違って魔法が使えるから生かしちゃおけねぇ……あーあ、兄ちゃん悲しいぜ。せっかく良い話持ってきてやったっていうのによ」