軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まさかの新兵器

機械弓部隊をカムシンに任せ、僕はティルとアルテを連れて機械弓の研究に向かう。

ボーラに死ぬほど質問されてたが、カムシンなら乗り越えるだろう。頑張れ、カムシン。

一方、美少女二人連れのヴァン君はルンタッタと村の中を歩く。向かう場所は材料がいっぱいある資材庫だ。着いてすぐ、豪華にもミスリルをチョイスして準備する。

「はい、椅子をどうぞ。お使いください」

「ありがとう」

ティルに椅子を用意してもらい、すこし低めのテーブルに王都からきた素敵な機械弓が鎮座している。

「さ、やろうかね」

ウキウキわくわくしながら機械弓の部品を分解していく。

連射式機械弓の構造を確認すると、ギアやチェーンも使われた中々凝った作りだった。

「ふむふむ。これが回ると、この棒が弓を引いて、同時に次の矢が下りてくる……これなら設置式のバリスタは大量に矢を装填できるじゃないか。夢の百連射か? いやいや、そこまですると途中で詰まったら最悪だ。それなら、詰まっても取り替えがきくように、むしろ五連射くらいにしてマガジン形式に……」

分解した機械弓の部品を眺めながら唸っていると、ティルがお茶とクッキーを用意してくれた。クッキーを齧りながら機械弓の箱の部分を確認していると、アルテが口を開く。

「……ヴァン様は、今が一番楽しそうでいらっしゃいますね」

「ん? そうかな? まぁ、すごく楽しいけど」

笑いながら振り返ると、アルテは優しい微笑みを浮かべて頷いた。

「機械でも政治でも仕組みを考えるのが一番難しいからね。最初に考えた人は凄いよねぇ」

染み染みと言いながら、部品をそれぞれミスリルで作ってみる。

それを組み合わせて出来上がりだ。

「……凄い。もう出来て……」

そんな感想に鼻高々になりながら、試しに矢を入れてない状態で動かしてみる。

が、回らない。動かない。

途中でロックされたように引っかかる。

「あれ? あ、そうか。弓の部分だけじゃなくて、この箱と機械弓の繋がる部分も弾力のある素材じゃないとダメだったのか。一回転するはずの棒が引っかかって回らない……」

ガックリ。

失敗である。これは、硬い部分が全て金属のパーツで良いかの検証もしないといけないな。

そんなことを考えていると、アルテが驚いたような顔でポツリと呟いた。

「……ヴァン様でも、失敗されることがあるのですね」

小さな呟きだったが、僕はそれに反応してしまい、アルテが慌てて頭を下げる。

「あ、も、申し訳ありません……! 決して、悪い意味ではなく……」

もう泣きそうになっている。僕はそんなアルテに息を漏らすように笑い、肩を竦めた。

「僕なんて失敗ばっかりさ。この魔術以外、自慢出来るようなこともないし」

そう答えると、アルテは何度も首を左右に振る。

「そんなことはありません。皆から聞いていますが、剣の腕も勉学も素晴らしい才能をお持ちだとか……私には本当に何もありませんから、羨ましいです」

「え? 才能?」

僕は思わず聞き返す。そして、戸惑うアルテに告げた。

「もし良かったら鬼のような執事と騎士団長を紹介するよ。そうすればアルテも三年から五年したら僕くらいにはなるからね」

そう言って深く溜め息を吐くと、アルテは小さく笑った。その横顔を眺めて、なんとなく疑問を口にする。

「そういえば、アルテってなんの魔術適性だったっけ?」

なんの気も無しの質問だ。悪意は勿論、変に詮索する気だって無かった。

だが、アルテは凍り付いたようになってしまった。まるで死刑を宣告されたように辛そうな、悲しそうな顔で俯くアルテに、僕は何も声を掛けられなくなってしまう。

その空気に居た堪れなくなったのか、ティルが口を開いた。

「あ、あの……アルテ様? ヴァン様は、無理に聞こうなどとしておりません。その、言いたくなければ言わなくて良いのですよ?」

優しく声を掛けると、アルテは首を左右に振り、自分の足の上で手を握ったり開いたりしている。

やがて覚悟を決めたのか、アルテは口を開いた。

「いえ、言います」

そう言うと、二度三度と深呼吸をし、伏し目がちに口を開く。

「…………わ、私は、傀儡の魔術の適性が、あります」

そう呟き、アルテは上目遣いに僕たちの顔を見た。ティルは口元に手を当て、悲しそうに眉根を寄せる。

貴族にとって、カムシンの盗みの魔術や洗脳の魔術、そして傀儡の魔術は卑しい犯罪者の魔術などとも呼ばれ、差別の対象であった。

僕の無能と呼ばれる生産系の魔術と良い勝負だ。

だが、僕は素直に喜び、アルテの手を取る。

「凄いじゃないか、アルテ! ぜひ、その魔術を見せてほしい!」

そう言うと、アルテは狼狽しながら僕を見返す。

「え、あ、あの! わ、私の魔術を……?」

「ああ、傀儡の魔術の適性を持つ人は滅多にいない。もちろん、隠している人が多いのもあるだろうけどね。それでも、僕が初めて出会ったのは確かだ。これは運命だよ、アルテ!」

思わず興奮気味にアルテの手を強く握って力説してしまった。

なにせ、待ちに待っていた傀儡の魔術士である。テンションが上がらない方が珍しい。

「よし。さっそく何か作ってみよう」

そう言って、木材で簡単な人形を作製する。大きさは僕よりも大きいくらいだ。

「これ、動かせるかな?」

確認すると、アルテは恐る恐るではあるが、魔術を行使し始めた。

そして、人形は独りでに立ち上がる。

「おぉ! じゃ、次は動きをつけてみて!」

「は、はい」

そうして、人形は繊細な動きで踊り出す。即興とは思えない、しっかりとした構成の舞だ。恐らく、アルテが実際に習った舞踊なのだろう。

人形は、たっぷり数分もの間一切動きに違和感を覚えさせることなく踊り続けた。

最後の一礼を見てから、僕は大きな拍手をしてアルテを褒め称える。

「凄い! 凄い魔術じゃないか! これは、とてつもない可能性を秘めた魔術だよ、アルテ!」

そう絶賛すると、アルテはただただ戸惑いながら、頭を下げた。

パッと思いつく限りでも、人が入れない危険地帯に送り込んだり、ドラゴンなどに対しても強力な戦力となる。屋敷内で調度品代わりに甲冑を並べておけば、いざという時のアルテの手勢にもなるだろう。

悪い使い方をすれば暗殺も容易にできるか。

だが、それはアルテには言わないでおこう。

酷いコンプレックスになっているようだから、傀儡の魔術の前向きな使い方のみを教えたら良い。

まだ困惑したまま僕達の反応を見るアルテ。それを見てから、ティルの背中を軽く叩く。

すると、ハッとした顔になり、ティルは胸の前で手を合わせた。

「お、お見事でした! 流石はアルテさまです。こんな凄い魔術、見たこともありません。あのお人形の踊りは、アルテ様もお出来になるのですか?」

「あ、は、はい。私も、その、踊ることは……ただ、人形に踊らせた方が上手なのですけど……」

照れたように、恥じたようにそう答える。

「いえいえ、十分過ぎます。ヴァン様にお願いして可愛らしいお人形を作ってもらいましょう。お祭りの時に踊りを披露したら、村の人達も凄く喜びますよ?」

「そ、そうでしょうか……」

不安そうになるアルテに、ティルが畳み掛ける。

だが、僕はそれどころではない。

アルテが口にした、自分の体よりも人形の方が思い通りに動かせるという言葉。これは驚嘆に値する。

つまり、対象物を想像通りに動かせるということだ。ならば、動かすモノ次第では、なによりも強い人形兵だって作ることが出来る。

「……ミスリル鉱石を集めてみようかな」

二メートル以上の大きさのミスリル人形。これは驚異的な最終兵器だ。まぁ、大人しいアルテに戦わせるのも難しいから、準備と練習しか出来ないけど。