軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ようやく到着

エスパーダのお陰で町の防壁も順調に完成してきた。

さて、防壁が出来たらバリスタを作ろうか。そう思っていた矢先、彼は帰ってきた。

ランゴである。

「おい! キャラバンが来たぞ!」

「嘘つけ、こんな辺境に……うわ、マジだ!」

「護衛も多い……いや、多すぎだろ!」

と、冒険者達が騒ぎ出す。

出来たばかりの防壁の上で、僕はカムシンに声をかけた。

「ベルを呼んできてくれるかい?」

「はい!」

良い返事をして、カムシンが走っていく。今日もカムシンは元気だ。その背中を見送ってから、僕はティルとアルテを振り返った。

「よし、出迎えに行こうか。聞きたいことはいっぱいある」

「はい」

ティルとアルテが返事をして付いてくる。

町の防壁は近くの建物と連結している。三階部分にベランダがあり、そこから通路が設けられていて防壁の上に行けるのだ。

なので、防壁から地上まで戻る時は建物の中を通らないといけない。

「あ、ヴァン様」

「なんか、キャラバンが来たって聞きましたよ」

「来た来た」

片手をヒラヒラ振りながら階段を降りていく。子供領主として面白がられている僕はやたらと声を掛けられる。

何人にも声を掛けられ、適当に相手をしながらようやく地上に降り立った。

街道まで出ると、ちょうどこちらに向かってくるところだった。

が、近付いてくる馬車の周りにいる人々を見て、首を捻る。

馬車は問題ない。僕が預けた馬車と、更に追加で購入したらしい大型の馬車が二台だけだ。

馬も買ってきたらしく、二、三十頭はいそうだ。

そして、その周囲には百人近い若い男女の姿があった。

皆、簡素な鎧や槍を持っているが、あまり慣れた様子ではない。そして、キャラバンの真ん中ほどに二十人くらいの冒険者らしき者達の姿があった。

中心の大型の馬車の御者がランゴのようだ。

眺めている内に、村からベルとカムシンが走ってきた。何故か、少し歩く速度の速いエスパーダとディーの姿もある。

「ランゴが帰りましたか!」

ベルがそう言うと、向こうのほうでランゴが手を挙げた。

久しぶりの再会だ。兄弟で再会の喜びを分かち合うことだろう。

そう思って期待していたのだが、ベルの第一声は「いくらで売れた!?」だった。

そして、対するランゴも似たようなものである。

「白金貨百八十枚だ。馬車と馬、後はこれから必要になるだろうから、人売りに売られた借金奴隷を中心に奴隷を百五十人連れてきたよ」

「そうか……! ん? 奴隷を百五十人……? しかも、若いのばかり……一人頭、金貨一枚から二枚としたら、 白金貨一枚から三枚……!?」

ランゴの思い切りの良い奴隷売買に、ベルはギョッとした顔になった。

だが、ランゴは不敵に笑い、口を開く。

「怪我、病の無い五体満足の二十歳以下百人と十歳前後五十人で大金貨八枚だよ。オークションが終わった後に、メアリ商会へ退会の話とあの馬鹿共三人の話をしに行ったらさ。何故だか逆に謝られてね。今後、ヴァン様との取引が出来なくなると困るから、欲しいものを半額で売るなんて言ってくれたんだ」

「……メアリ商会が? そんなことを即決で決められるのは商会長か副商会長くらいだけど……」

眉間に皺を寄せて悩むベルを他所に、ランゴは馬車の中を指差して口を開く。

「後は調味料や作物の苗、それと、ヴァン様への献上品かな」

「献上品? おい、ちゃんとした物だろうな?」

ベルの目が細められる中、僕は横から顔を出した。

「おかえりー」

「あ、ヴァン様! お久しぶりです! ただいま戻りました!」

頭を下げるランゴに頷いて応える。

「お疲れ様。人が一杯だね」

そう言うと、ランゴは両手を前に出して革袋を差し出してくる。

「ご安心ください。ヴァン様へお渡しする分には一切手を付けていません。白金貨百三十枚です。お納めください」

「おぉ、ありがとう」

受け取ってからティルに預ける。ティルはアワアワしながら受け取り「ひゃあぁぁ……」と、変な声を出していた。まぁ、手元に信じられないような大金があると思えば震えもするか。

ティルを見て笑っていると、ランゴは更に小さな革袋を差し出してきた。

「それと、今回の利益の一部、白金貨二枚です」

「あら?」

とりあえず受け取る。首を傾げていると、ランゴは嬉しそうに笑い、口を開いた。

「今後、ヴァン様には毎回利益の一部を献上致します。どうか、宜しくお願いします」

「うわぁ、ありがとう。じゃ、魔獣の素材は一番にベルさんとランゴさんに売るからね」

まさにwin-winの関係である。僕は手放しで喜ぶ。

すると、更にランゴは小さな革袋を出した。

「厚かましいお話ですが、良ければ作っていただいた馬車を購入したく……お代は一台に付き大金貨五枚。合わせて白金貨二枚と大金貨五枚です。宜しいですか?」

「売るよー。まぁ、別にタダでも良いけど?」

そう答えると、ベルが慌てて首を左右に振る。

「ありがたいですが、あまり無償で提供しない方が良いです! それを目当てにする者も現れますし、嫉妬や僻みを受けることもあります。どうか、お受け取りください」

頭を下げられて大金をもらってしまった。

うむむ。更に宝クジ当選が止まらない。そして、ティルの震えも止まらない。

「後は、ヴァン様に王都で見つけた逸品を献上致します」

恭しくそう言って、ランゴは馬車の中から大きめの箱を取り出した。

後ろではベルがハラハラしているのが面白い。

かくいう僕も箱の中身が気になっている。ワクワクだぜ。

「こちらが、王都でも最新最先端のものとなります」

そう言って取り出されたのは、なんと四角い箱のような物が取り付けられた大型の弩である。

「ま、まさか、これは……!?」

思わず声が上ずる。

興奮する僕を見て笑い、ランゴは弩を構え、森の方へ向けた。

箱の横にはグリップがあり、上下に動かすと弩はガチャリと音を立てて弓の部分が引かれる。

そして、弩の下のグリップを握り直すように動かすと、矢が発射された。更に、ランゴがグリップを握り直すと、またも矢が発射される。

一射と二射の間に殆ど間隔は無かった。

「最大で十連射が可能な連射式機械弓という代物です。しかも、上部の箱状の部分を取り替えると、次矢の装填に時間はかからないとのことです。幾つかありましたので、同じ物を三機と、違う形状の物を三機、更に矢の装填箱を合計十個買って参りました」

「ありがとうっ!!」

僕は万歳しながらランゴに飛びつき、弩を受け取った。

なるほど。下のグリップは支えでもあるが、トリガーにもなっている。弩というより、作りは近代的なクロスボウだ。

先程ランゴがセットしたからか、トリガーを引けば矢が発射された。

「おぉっ!」

森に向けて、バスバスと矢を射ってみる。楽しい。超楽しい。

「これでバリスタを作るぞ! 本当にありがとう! うわっほーい!」

僕は文字通り飛び上がって喜んだ。

「ヴァン様、白金貨百三十枚より喜んでる……」

「良かったですねぇ、ヴァン様」

「ヴァン様、僕にも一回……!」

色々と声が聞こえてくるが、僕の頭の中は連射式バリスタでいっぱいである。

これが無数にならんだ姿を想像するだけで楽しい。

「あ、そうだ。これを正式装備にした騎士団を作れば、セアト騎士団らしいよね」

僕はとんでもない名案にワクワクが止まらなくなったのだった。