軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰ってきた伝説の冒険者

隣村の住人達は家を与えられるとは想像だにしていなかったらしく、呆然としたまま各家々に泊まった。

そして次の日。朝はスープとサラダとパンかな。なんてことを口にしたため、まだ勝手が分からない住人達は僕と同じメニューの朝食となった。

何種類か用意してビュッフェ形式レストランみたいにすれば良かったかなと反省する。

が、僕は五分で気持ちを切り替えて町づくりに向かった。

将来はセアト騎士団に入団させるべく体格の良い青年を勧誘しながら、同時に町の建設も手伝わせる。

「そっちロープ引いてー」

「へーい!」

「少し曲がっています。右へ」

「右だってー」

「へーい!」

現場感がハンパない掛け声と共に、紐を引いて角度や長さを確認する。結局これが地味にやり易かった。

「ここに住居だね。じゃあ、こっちが入り口かな?」

「その方が使いやすいでしょう。こちらに店が並びますし、反対側には出入りする理由もありません」

「そうだね。じゃ、材料を運搬……もうしてるね。皆早くなったなぁ」

エスパーダと話している内にセアト村の住人達は動き出していた。皆でウッドブロックを手に運び込んでいる。ちなみに隣村の住人達も戸惑いながらも作業を手伝っている。

老人達には慣れた牛の世話と飼育場を確保してもらっている。アプカルル達が住む湖のそばを選んだため、目が飛び出るほど驚いていたのが印象的だった。

「牛か」

「へ、へい」

「可愛いな」

「そ、そうですか」

「うむ。我らも世話を手伝うぞ」

と、アプカルルからは良い反応が返ってきた。戸惑う老人と牛の様子を気にもせず、アプカルル達は水をやったり草を持ってきたり食べさせたりしている。

面白い光景だ。意外と老人とアプカルルの相性が良さそうだった。

一方、子供達は新しく住む家に興奮し、さらに城壁のデカさに大興奮だった。なので、セアト村の子供たちと一緒になって村の中を探検したりしていた。

人が増えて賑やかになってきたのはとても嬉しい。最初のモロに貧乏そうな村が嘘のようだ。

「ヴァン様! まだ必要ですかな!?」

と、馬車にまだウッドブロックにしていない木材を積んで向かってくるディー達が大きな声でそう聞いてきた。

「そうだねぇ。丸太だと、やっぱり後百本は欲しいかな? ウッドブロックもついに底をついたし」

そう言うと、僕が作ってあげた巨大な斧を肩に担ぎ、豪快に笑う。

「お任せくだされ! 百本程度、今日一日で調達しますぞ! さぁ、皆の者! 馬車を用意して森へ向かうぞ!」

ディーが振り返って声を上げると、アーブとロウだけでなくセアト村の体力のありそうな者達が野太い声を上げて返事をした。

あれ? これってもう騎士団作れるんじゃない?

まさにバイキングの男達みたいな奴らがいるじゃないの。

「ディー」

「はっ! なんでしょうか、ヴァン様!」

声を掛けると、ディーは素早く向き直る。

「あの元気の有り余ってそうな人達で、騎士団を作れないかな?」

「ほう! それは面白い! 聞いてみましょう!」

そう言って、ディーは皆に確認する。

だが、まさかの声が返ってきた。

「いや、あの、エスパーダ様から勧誘されてて……もう入団契約書とかいうやつにサインを……」

素直そうな若者が申し訳なさそうにそう言い、僕は思わず「え!?」なんて声を発してしまう。

マジか、エスパーダ。最初から当たりをつけて動いていたな。大人げないぞ、本当に。

スタートダッシュで遅れたことを悔やみながらも確認していくと、三分の一ほどの人数は声を掛けられていなかったらしい。

良かった。これでディーを騎士団長に任命すればアーブ、ロウを副官にして二十人ほどの騎士団を結成出来るぞ。

「少なっ!」

反射的に自分で自分に突っ込んでしまった。

エスパーダの騎士団も多くて四十人ちょっとだ。それなら合わせて六十人の騎士団にした方がまだマシだろう。

とはいえ、新しい町は作るのだ。

「……こうなったら、この村ならではの騎士団を作ってエスパーダの腰を抜かしてやろう」

僕はそう決心すると、ディー達に丸太集めを再開してもらうことにした。

そうして騎士団について考えながら作業していると、街道の向こう側から馬車が一台向かってくるのが見えた。

「馬車だね、多分」

遠くの方だから自信は無い。だが、カムシンははっきり頷いた。

「馬一頭と中型の馬車ですね。護衛はいないみたいです」

「……うん、ありがとう」

皆なんでそんなに目が良いんだろう。視力チート凄いよね。

「護衛いないならクサラかな? 普通、こんな辺境まで来るなら一人や二人で旅しないよね」

そう言うと、カムシンは目を見開いて「あっ」と声を発した。

「かなり離れてますけど、後ろの方に馬車が他にも……」

「手前の馬車もすんごい離れてるのに、そこからかなり離れたら何も見えないよね、普通」

何となく異常視力に文句を言ってみる。しかし、カムシンに罪は無い。問題なのは目が悪い自分である。

凹んでいると、ティルとアルテが僕の顔を覗き込んできた。

「大丈夫ですよ、私も見えません」

「私もです」

「ありがとう。皆優しいね」

二人の言葉で、僕はこの世にまた希望を見出すことが出来た。

うん。自分でもなんのことか分からない。

とりあえず、気を取り直して住宅作りを行う。

一時間以上経過し、新しい住居をまた一棟建て終わった頃、ようやく馬車はすぐ近くまで来た。

御者席には見慣れた小太りな冒険者の姿があり、荷台からは美しい女性が顔を出している。

「……誰?」

そう聞くと、ティルはハッとした顔で口を開く。

「まさか、王都であの女性の危機を救い、恋に落ちてしまったのでは……!?」

「素敵です、英雄譚みたいですね」

ティルの予想にアルテが食いついた。二人は盛り上がっているが、残念ながら相手はクサラである。

「そんな格好いいことするかなぁー」

僕が否定的なコメントをすると、カムシンは首を傾げる。

「でも、地味にクサラさんって凄いです。動きは速いですし、気配察知、罠の発見や解除も一番です。剣の使い方も独特だけど上手です。更に投石や投げナイフ、弓矢も上手いらしいですよ」

「え、そんなに何でも出来るの? クサラさんなのに?」

と、カムシンやティル、アルテとクサラの特技や性格、イケてるかイケてないかまで深く話し合っていると、声を掛けられた。

「ちょっと、ヴァン様。そんな大きな声であっしの噂話はやめてほしいんですがね」

クサラが半眼でこちらを見ながらそんなことを言う。クレームだ。たらい回そう。

「やぁ、クサラさん。お帰り。ところで、そちらの方は?」

僕が尋ねると、ティルとアルテが身を乗り出して聞き耳を立てる。

クサラは注目されているからか、言いづらそうに口を開いた。

「ひょんなことで出会いやしてね。行くとこも無いってんで、ここに案内してみたんでさぁ。住民はまだ増えて大丈夫ですかい?」

「そりゃ大丈夫だよ。三百人くらい増えたけど、まだ全然問題ないし」

「三百人! 例の隣村の住人ってやつですかい? そりゃ一気に増えやしたねぇ」

驚くクサラを横目に、ティルが代表してクサラの後方から顔を出す女性に声を掛ける。

「初めまして。私はティルと申します。こちらが領主のヴァン・ネイ・フェルティオ様です」

そう挨拶すると、すっかり自己紹介のタイミングを失っていた女性がホッとした様子で口を開いた。

「私は、フラミリア・ストラトスと申します。王都近くでオークに襲われているところをクサラ様に助けていただき、ここまでご一緒させてもらいました」

フラミリアと名乗る女性がそう口にすると、ティルとアルテは目を輝かせてクサラとフラミリアの顔を見た。

「うっそだー」

一方、僕はクサラの顔を見て素でそんな感想を漏らす。

「いや、あっしは別に……そんな格好良いもんでもありやせんぜ」

「いいえ。クサラ様はそう言われますが、私からすればどんな英雄譚の英雄よりも素敵でしたわ」

照れたようにそっぽを向くクサラに、フラミリアは柔らかな淑女スマイルと共にそう答え、ティルとアルテが歓声を上げる。

「うっそだー」

僕は最後まで信じることが出来なかった。