軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おらが村のドラゴンスレイヤーズ

領主の館の二階より僕がティルを引き連れて顔を出し、書状を広げ、読み上げる。

眼下にはエスパーダやディー達、村人達だけでなく、オルト達やベル、アルテやパナメラの兵達も並んでいる。

二百人ちょっとではあるが、実際に目の前にするともっと多く感じるな。

「えー、森の主とも称される緑森竜の討伐! その討伐にあたり、最も重要な働きをした者を表彰する! なお、表彰は子爵位を持つカイエン子爵家当主、パナメラ・カレラ・カイエン子爵より行われる!」

全力の略式で行う表彰式典だが、パナメラが颯爽と領主の館の二階から顔を出すと、場の空気が変わった。

村人達の表情にも緊張感が浮かぶのを見て、領主であるヴァン君としては自らの威厳について考えさせられる結果となった。

パナメラは一度ゆっくり皆の顔を眺めて、厳かに口を開く。

「……今回、この場にいる全員で討ち果たした緑森竜は、通常ならば騎士団と共に宮廷魔術師が動員される存在だ。村や小さな町なら間違いなく壊滅し、その辺の城塞都市などでも相当な被害が出る」

そう告げると、村人達は騒ついた。

「だが、この小さな村は生き残った。そればかりか、死傷者は皆無であり、被害も建造中の城壁の一部とバリスタが二台破損したのみである。これは信じられないような快挙だ」

パナメラの言葉に、村人達が感嘆の声を上げる。気持ちは分かるが、今は静かにしてなさい。

パナメラは皆の反応に僅かに表情を緩め、口を開く。

「この快挙に大きく貢献した者の名を呼ぶ。まずは、フェルティオ侯爵家騎士団副団長、ディー。十五メートルを超える緑森竜の首を一撃で切り落とし、この討伐戦の結果を決定的なものとした。よって、第一の功はディー副団長とする」

この言葉に、村に歓声が上がる。パナメラはその歓声が止むのを待ち、再度口を開く。

「次に、類稀なる四元素魔術の使い手、エスパーダ。二度にわたり窮地を排し、ドラゴンの身動きを封じたその魔術の腕は筆舌に尽くしがたい。よって、第二の功はエスパーダとする」

この言葉に、村に感嘆の声が上がる。そうなのかー、みたいな感じだ。まぁ、村人に魔術師の凄さを分かれというのが難しいか。

そして、最後にパナメラはこちらを一瞥して、口を開く。

「最後に、フェルティオ侯爵家四男、ヴァン・ネイ・フェルティオ。八歳とは思えぬ知識、行動力、機転に加え、過去類を見ない魔術の用い方にて、村の防衛力を短期間で大幅に強化した。その功績は今回の緑森竜討伐でも重要な働きであり、領主として討伐戦の陣頭指揮を執った。よって、第三の功はヴァン・ネイ・フェルティオとする」

パナメラがそう口にした瞬間、まるで怒号のような大歓声が沸き起こった。

名を呼ぶ声も響き、僕は目を白黒させながらも、一応手を振ってみた。結果、アイドルも真っ青な歓声が返ってきた。

やぁ、皆のアイドルのヴァン君だよ。握手は一人銀貨一枚な。

と、そんな感じで式典は無事終了した。

その後、大素材剥ぎ取り祭りが行われたのだが、今回はパナメラ子爵以下精強な兵士百人が付いているので、凄い勢いで素材が回収されていった。

「おい! なんだ、この剣は!? まさか、これも全部少年の作か!?」

ドラゴンの牙をスパッと切り取ったパナメラが、こちらを振り返りながらそう叫ぶ。

「素材剥ぎ取り用に切れ味に特化した剣ですよ。まぁ、実用にも耐える代物ですけど」

「兵士全員に配ったんだ、百本以上あったぞ!? 特別な剣じゃないのか!?」

「金貨五枚で剣一本作りますよ」

そう答えると、パナメラは信じられないものを見るような目で僕を見てきたのだった。

僅か二日で素材の剥ぎ取りは終了し、またも素材倉庫がもう入らないという事態に陥ってしまった。

なので、新たな城壁の裏に、地下室付きの巨大倉庫を建設した。これ一つでドラゴン二、三体は飼えるレベルである。

城壁も大半が完成したので、残りはバリスタや跳ね橋などである。

ドラゴンの素材を剥ぎ取る間はずっとベルの目が$マークだったが、ようやく落ち着いて店の営業を再開した。

しかし、ついに弟のランゴが村に戻ってきたと知り、ベルの目はまたも$マークとなった。

まぁ、僕も売りたい物や買いたい物がいっぱいあるから分かるけどね。

と、ランゴがどれ程の規模で帰ってきたのかが気になった僕もベルと一緒に城壁の方へ走ったのだった。

ちなみに、ランゴは村に着いてすぐに、突然出来上がっている城壁に度肝を抜かれた。商会長に頼み込み、もし赤字が出たら自ら補填するという条件でキャラバンを率いて村に戻ってきたらしいのだが、まさか数週間目を離した隙に巨大な城壁が出来ているとは思わなかったのだ。

ランゴのもとへ行くと、今度は僕の方が驚いた。

キャラバンは大型の馬車が五台に中型の馬車が三台、護衛の冒険者が二十人という大所帯だった。なおかつ、付いてきた商人もランゴを含めて五人もいる。あと、奴隷のお手伝い要員が5名という大所帯できたらしい。

「あ、兄貴! こ、これは!? いつのまに、こんな凄い城壁が……!?」

ランゴはベルに気が付いて大声でそう尋ねてきた。しかし、ベルは近付いてきたランゴの両肩に手を乗せ、無表情に口を開いた。

「この城壁もありえないが、まだ大変なことがある」

「ま、まだ、大変なこと……?」

眉間に皺を寄せるランゴから視線を外し、ベルはこちらを見る。

「新しい倉庫へ案内しても良いですか?」

「良いよ」

軽く返事をするとベルはランゴを引き連れて倉庫へと向かった。ランゴが連れてきたキャラバンも城壁を潜り、後に続く形で移動していく。

冒険者や他の商人などが一礼したり挨拶したりして通り過ぎていった。

暫くして、新しい倉庫の中から驚愕の声が聞こえてくる。

「ど、ど、ドラゴンだって!?」

そのランゴの声に、キャラバンの商人や冒険者たちも一斉に倉庫の中へと姿を消した。

そして、また絶叫が上がる。

今度は人数が多いからか。満員のジェットコースターで山場を迎えたような盛大な絶叫があがった。

「いくらぐらいになるかなぁ」

そう呟くと、ベルが悪代官のような笑みを浮かべて指を立てたり折ったりする。

「ドラゴン一体。それも緑森竜の大型。挙句に鱗、爪、牙、目、魔石と、ほぼ無傷で手に入りました。恐らく白金貨百枚。そこから王都で競売となり、最低でも白金貨百五十枚にはなるでしょう」

金貨が百万、大金貨が一千万としたら、白金貨は一億か?

じゃあ、まさかドラゴン一体百億円?

「え、なにそのジャンボ宝くじ? その後の競売っていうのも何?」

「じゃ、ジャンボ?」

尋ねると、ベルから聞き返された。

「競売?」

改めて聞き直すと、ベルは気を取り直して悪代官スマイルを貼り付ける。

「王都で行われるオークションです。商人ギルドに加盟している商会は参加することが出来ます。国宝級の代物が出た時は必ずオークションに出品されます。あの緑森竜の素材ならば、間違いなく白金貨百五十枚を超えるでしょうね」

「なるほど。じゃあ、運搬費用とオークション出品の手数料、商会の利益を取られたら、ベルとランゴの利益はいくら?」

ベルは僕のセリフに目を丸くした。

「……失礼ながら、ヴァン様は子供とは思えないと思っていましたが、また再確認させられましたね。その辺の貴族の馬鹿息子なら、私が白金貨五十枚という大量の上前を撥ねたなんて言う人もいるでしょうね。正味、私たちの利益は白金貨三枚から五枚でしょうか。それでも、人生を賭けるに匹敵する莫大な利益ですよ」

嬉しそうに笑うベルに、僕は腕を組んで首を捻る。

「商会作っちゃえば良いのに。商会作るのは難しいのかな?」

そう口にすると、ベルは目を丸くして固まったのだった。