軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

島の反対側へ

チャレンジ精神が大事!

ということで、先日パナメラの手によって討伐された魔獣と化け物鯨の肉を切り分け、保管していた果物と一緒にリルダに献上してみる。

さて、化け物鯨は食べられるのか。人魚からしたら天敵だろうと思われる強大な存在だ。ちなみに、見た目的にもあまり食欲をそそらない。

「……くれるの?」

「食べる? もっと焼いた方が良い?」

「……生でも大丈夫だから」

リルダはそう言うと、そっと肉と果物を入れた箱を両手に持った。衝撃の発言に思わず絶句してしまう。化け物鯨の刺身? 嘘でしょう?

「……ありがと」

少しだけ警戒心が薄れたのか、すぐ近くでお礼を言って海に戻っていく。その言葉に、ようやく思考が再起動した。

「いえいえ、こちらこそ~!」

そう返事した後に、そういえばと思い立つ。

「あ、もし良かったら、いかだを作るから島の反対側まで……」

最後まで言い終わる前に、リルダは消えてしまった。

「あ……出来たら連れていってもらえないかなぁ、と思ったんだけど……」

少し切ない気持ちで誰もいなくなった海に向かってそう呟く。

「振られたな、少年」

「……いや、そういうわけではないですけど、何故か寂しい気持ちに……」

パナメラに笑われつつ、溜め息交じりにそう答える。すると、ティルが眉尻を下げて笑った。

「大丈夫ですよ。きっとまた会えますから」

「いやいや、本当に振られたみたいな雰囲気にしないでね?」

ティルの励ましの言葉が生々しい。そんなに気にしていなかったのに、余計な励ましを受けて傷心する純情なヴァン君。可哀想。

とはいえ、凹んでばかりもいられない。とりあえずは超有用な情報により、島の反対側を目指すべきという目標を得た。

「どうしましょうかね? あの森を抜けます?」

そう言って振り返ると、とんがった山に恐ろしく鬱蒼とした森が目に入る。時々謎の怪鳥の雄たけびや明らかに中型以上の魔獣の咆哮なども聞こえてくるのだ。危険度はウルフスブルグ山脈に匹敵しそうである。

「いや、難しいな」

予想通り、パナメラもあっさりとそう答えた。オルト達のような魔獣の専門家がいない上に、パナメラの魔術は森の中では使用し難い。当たり前の回答だ。

パナメラの返答に頷き、ならばと海岸の奥を指差す。

「じゃあ、海に沿ってグルッと回る感じですね。森に入らないようにして、昼間移動して夜は家を建ててそこで休む、みたいな……」

「毎回家が建つのは凄い話だが、それでもかなり時間が掛かるな。まだ島の大きさは把握出来ていないが、二日か三日はかかるか?」

「仕方ないですね。ただ、ここで待ち続けたらもっと時間が掛かるでしょうし、何とか反対側に行くしかないです。それに、リルダが言っていましたが、化け物がいっぱいいるって言葉が気になります。そんな海で捜索を続けていたら、いくらディー達でも命を落とすでしょう」

そう告げると、アルテとティルが心配そうに頷いた。その反応を見て、パナメラも腕を組んで首肯する。

「……そうだな。ならば、急いで移動を開始するとしようか。だが、今日はもう出発するには遅過ぎる。荷物をまとめて、明日の朝から出発するとしよう」

パナメラにそう言われ、三人とも二つ返事で従う。戦争で様々な危険を乗り越えてきたパナメラの言葉は説得力が違った。

別に、最年長だからなどというわけでは無い。うん。

翌日、朝日が昇ると同時に家を解体。ウッドブロック製の台車に変えた。車輪を大きくしてバネも付けたので、多少の悪路も何とかなるのである。

荷物はウッドブロックとバリスタの材料になる魔獣の皮などだ。食料は果物と山菜をバッグに詰め込んで皆で背負っている。

「パナメラ様、大丈夫ですか?」

海岸に沿って歩きながら、アルテが心配そうに尋ねた。それに台車を押しながら、パナメラが笑いつつ頷く。

「ははは! こんな荷物を運ぶ程度、まったく問題ないぞ。数年前は全身鉄の鎧を着たうえで、自分の体重くらいの荷物を持って山の中を歩いていたのだからな」

と、パナメラが頼もしい発言をして付いてくる。

「流石ですね、パナメラ様は! よっ! 力持ち!」

「……何故だろうな? 少年の言葉には悪意が……」

アルテに続き、労働を頑張ってくれているパナメラを応援してみたのだが、どうも失敗したらしい。

「嫌だなぁ、そんなことないですよ? あ、怪力無双とかの方が格好良いかも」

「……少年、後で覚えていろよ?」

また失敗してしまったらしい。パナメラは後ろから半眼でそんなことを言っていた。

冗談はさておき、実際に今のメンバーで僕とティルが一番手持ち無沙汰である。アルテは人形を従えて護衛役をしてくれているし、パナメラは荷物運びだ。

一方、僕とティルは周囲警戒と言いつつ、綺麗な海を眺めながら歩くばかりである。

いやぁ、申し訳ないなぁ。お昼はしっかり食事の準備とかで挽回しよう。

そんなことを思いながら三時間ほど休まず歩き、海岸の少し開けた場所を見つけて足を止めた。

よし、ここで素敵な東屋を作って優雅な昼食を……!

そう思い、やる気満々でウッドブロックを手にしたその時である。

アルテが何かに気がついて声を上げた。

「あ、あの! 海に人魚さん達が……!」

「へ?」