軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【別視点】  王都に大型船が!

【ベルリネート】

昨晩は来賓もあり、随分と遅くまで起きてしまった。その為、朝は誰も部屋に通すなと言っていたのだが……。

「陛下、早朝から失礼いたします」

寝室の扉をノックする音が聞こえて、次に男の声がした。通常ならば世話係の従者がするべき役割だが、どう考えても中年の男の声だ。扉越しである為はっきりとは分からなかったが、従者ではないだろう。

こういう時は、重大な報告であることが多い。文句を言いたい気持ちをグッと我慢し、手早くマントを羽織って扉へ向き直る。

「開いておる。入れ」

入室の許可を与えると、扉が外から開かれる。そこには、宰相のアペルタが立っていた。こちらを見て、アペルタは呆れたような顔で目を細める。

「おや、陛下。本当に寝起きですか。日が昇って随分と時間が経ったように思いましたが、まだ御髪も乱れてしまっておりますが……」

「朝からお前の皮肉など聞きたくはない。何があった」

朝から絶好調のアペルタに鼻を鳴らして文句を言いつつ、用件を聞く。すると、アペルタは面白くなさそうに眉根を寄せて溜め息を吐いた。

「朝からロッソ侯爵家の使者としてパナメラ伯爵から謁見をしたいとの申請がありましたが、それよりも……」

「ロッソ侯爵家の使者としてパナメラ伯爵が? 意味が分からんが、それよりもまだ何かあるのか」

アペルタに聞き返すと、今度は表情を一変、なにか玩具でも見つけたような顔で頷いた。

「聞きたいですかな?」

「早く話せ、早く」

アペルタはこちらが焦れると嬉しそうに肩を揺すった。誰だ、この性格の悪い男を宰相などにした奴は。

「謎の船が、この王都の海岸に突如として現れました」

「船……? 漂流か? 相当な幸運の持ち主だな」

極稀に、漁師の小舟が流されてしまうことがある。そういった場合、この辺りの海域であれば南部に漂着することがあった。大概の場合は乗船していた者は死んでいるが、もしや生きているのか。

そう思っての確認だったが、アペルタは残念そうにこちらを見てきた。

「陛下。年齢を重ねられて勘が鈍ってしまわれたのか。おいたわしや」

「ぶっ飛ばすぞ、貴様」

思わず、素で文句を言ってしまう。それにアペルタは声を出して笑った。

「おお、陛下。急に若返られましたな。懐かしい声が聴けたようで、今日はとても良い気分となりました。いやぁ、はっはっは」

笑いながら、アペルタが退室しようとする。

「船の話をせんか! 船の話を!」

思わず床を強く踏み鳴らして怒鳴ってしまった。なんなのだ、今日のアペルタは。いつも以上に厄介極まりない。不敬罪を通り越して王家侮辱罪である。アペルタを一年間休日無しで扱き使ってやろうか。

そんな怒れる王の姿を見て、アペルタは飄々とした態度で口を開いた。

「ああ、忘れておりました。船は今朝海岸に現れ、既に停泊しております。船の大きさは見たことも無いほどで、全長は恐らく百メートル近くもあります」

「百……!? それはもしや、ロッソ侯爵領に現れた大型船とやらと同じ船ではないのか!?」

アペルタの報告を受け、今度は本気で怒りが湧いてくる。この男は、そのような重要な報告を何故そんな態度でしているのか。ロッソ侯爵家より来た報告は現在までで三度あり、最初の報告は近海に大型船が停泊したとあった。二度目が大型船より使者が現れたというもの。三度目が未知の海洋国家について、だった。これに関しては慎重に調査せよと伝えておいたが、まさか大型船が王都にまで現れるとは。

「何を落ち着いておる。その船の乗員は降りてきておらんのか」

低い声でそう告げると、アペルタは腕を組んで何かを思い出すような素振りを見せた。そして、ハッとした顔で口を開く。

「ああ、そういえば……その謎の船の甲板には、ヴァン子爵の姿があった、という報告もありましたな。偵察に向かった騎士からの報告ですので、信ぴょう性は高いかと」

「なんと、ヴァン子爵か! おお、そういうことか! ロッソ侯爵家の領地に謎の船が現れたという話、さてはヴァン子爵が一枚噛んでおるのか! うむ、こうしてはおれん! すぐに船の方へ出向くぞ!」

言いながら廊下へと出て、外で待機している従者を呼びつけた。

「すぐに出る! 準備せよ!」

「は、はい!」

メイド達が慌てて部屋に入ってきて衣服の準備を始める。ふとアペルタを見ると、極悪人のような笑みを浮かべて踵を返していた。

「それでは、私は先に船の偵察をして参ります」

「な、なんだと!? ずるいぞ、アペルタ!」

「いえいえ、私が危険が無いか確認をしておきますので、陛下はごゆっくりおいでください。はっはっは」

廊下に高笑いを響かせて、アペルタは足早に去っていった。なんという奴だ。誰だ、あの男に宰相という重要な役を与えた者は。