軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

船の仕様

トランの歓待もあり、とても楽しい船見学と食事をすることが出来た。食事後はトラン達に送ってもらい、トリブートに戻る。

「む! ヴァン様のお帰りである!」

ディーの掛け声に皆が集まり、わいわいと騒がしくなった。その中にパナメラもおり、意味ありげな笑みを浮かべて口を開く。

「おぉ、戻ったか。どうだった?」

「はい、楽しかったですよ! フィエスタ王国の魚料理もご馳走になりました!」

「そういう感想を聞きたいわけではないのだが……」

こちらの言葉にガクッと転けそうになり、パナメラは微妙な顔でそう言った。それに苦笑しつつ頷く。

「もちろん、分かってますよ。船は作ることが出来ると思います」

「なんと! 本当か!?」

答えると、パナメラは勢いよく顔を上げて目を輝かせた。しかし、それに両手の手のひらを向けて左右に振る。

「ただ、重要な機能に関してはまだ理解出来ていません。一番重要な大型の水棲魔獣対策についてもです」

そう告げると、パナメラは腕を組んで顎を引いた。一瞬考え込むような素振りを見せたが、すぐに口の端を上げる。

「まぁ、あれだけ巨大な船を浮かべることが出来るなら十分な成果だ。今のところ、トラン殿とも良好な関係を構築出来ていると言える。再び会うことも可能だろうし、後日研究するとしよう」

「あの船を覆っている金属の板が関係しているようですが、簡単ではなさそうですよ?」

パナメラの言葉に若干不安になりながら聞き返すと、パナメラは笑いながら頷いた。

「簡単ではないだろうさ。だが、必要な技術だ。その辺りは王都の研究者に任せるとしよう。まぁ、そう言いつつ、少年がサラッと作ってしまいそうではあるがな」

と、パナメラは皮肉げに笑った。

翌日、再びロッソを訪ねた。トランが出航するまではトリブートにいるつもりなのか、まだ自身の城がある城塞都市には戻っていなかった。

「おはようございます。閣下」

「おはようございます!」

「おぉ、パナメラ卿。今朝も美しいな。ヴァン卿も元気そうで何よりだ」

挨拶すると、ロッソは上機嫌に答えてくれた。

「お、おはようございます。ロッソ侯爵様」

「うむ。アルテ嬢は今朝も可憐だね。将来が楽しみだ」

「え、えぁ、あ、ありがとう、ございます……!」

さらりと女性を褒めていくスタイルのロッソ。アルテも顔を真っ赤にして照れている。悔しい。参考にさせてもらおう。ちなみにタルガも挨拶をしていたが、ロッソは軽く「おはよう。タルガ卿」と返しただけだった。タルガが男爵として認められるのはまだまだ先かもしれない。まぁ、当の本人が自分を貴族と思っていないので何も感じていないだろうが。

よし、タルガをもっと活躍させていずれ領地を貰えるように頑張ってみよう。パナメラとタルガ、二人が領地を持ってくれたら守ってもらえるかもしれない。

と、色々考えていたらロッソがこちらに顔を向けていた。

「それで、ヴァン卿。船はいかがだったかな?」

挨拶もそこそこに、ロッソはすぐに本題へと入った。態度はそれほど変わっていないが、目はまっすぐにこちらに向けられている。内心ではロッソも船についての興味を強く持っているのだろう。いや、兵器としての運用の可能性を考えれば当然か。

「まずは、これをご覧ください」

ロッソを焦らさないようにササッと資料をテーブルに広げる。すると、ロッソは身振り手振りだけで椅子に座るように指示を出し、自らも資料が一番良く見える席に着いた。ちなみに、今回はエスパーダにも付いてきてもらっている。従者のように気配を消して後ろに立っていたが、用意した資料を広げると音も無く僕の隣に出てきた。

「これは、図面ですな」

エスパーダが小さく呟くと、パナメラが目を丸くして口を開く。

「……驚いたな。まさか、これほど詳細に描けるとは」

そう言って、パナメラはテーブルに広げた船の三面図の上に手のひらを乗せ、指で線をなぞるように動かした。

テーブルに広げた資料は、エスパーダに頼んで勉強の時間を削ってもらって描いた船の設計図だ。普通科でも製図の勉強をしておいて良かった。製図技能検定三級の力を見よ。

内心ドヤ顔でそんなことを思いながら、図面についてロッソに説明をする。

「こちらが平面図。船を上から見た図です。まずは甲板の図面からですね」

「ふむ。平面図、か。なるほどな。城大工の責任者に設計図を見せてもらったことがある。見た目はかなり違うが、似たようなものであろうな。それにしても、これは面白い」

ロッソは感心したように図面の細部を見ていく。それに頷いてから少しずつ解説していった。

「これが縮尺で……あ、この壁面とか柱の厚さは仮で設定していて……五枚目の最下部の平面図は見学出来なかったので、船の形状から想像して描いています。どうでしょう?」

長々と一枚ずつ細かく説明していったが、ロッソ含め全員が黙って聞いてくれた。ご清聴ありがとうございますと言いたいところだが、これは単なる作品発表ではなく、今後のスクーデリア王国の造船事業に影響を与えかねない重大な資料の説明だ。今後、フィエスタ王国の船を見学できる保証はないからこそ、きちんとした議論が必要となる。

そう思っての確認のつもりだったが、誰も答えることはなかった。

「……あれ?」

首を傾げながら皆を見回していると、エスパーダが難しい顔でこちらを振り向いた。

「ヴァン様……これほど緻密に描かれていると、もはや専門の船大工に確認しなくては何処が悪いか答えることも出来そうにありません」

「え? エスパーダでも?」

そう確認すると、エスパーダは静かに頷いたのだった。