軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結局、皆で船を見に行く

馬車十五台。そして、パナメラ騎士団とセアト村騎士団の精鋭合わせて五百人。そして、行ったことのない街なので案内兼護衛としてオルト達冒険者十名。かなりの大人数である。タルガやディー達も同行しているので留守が不安だったが、エスパーダの弟子たちも成長してきたので、長期間でなければ大丈夫とのことだった。

折角海まで行くのだから、優雅な旅路をと思ってヴァン君専用の超豪華馬車を準備した。以前に作った高級馬車、カリナンである。

「ヴァン様。船って大きいんでしょうか」

「うーん、そうだね。大きな海を渡るなら、潮の流れとか波の強さに負けないくらい大きくないといけないから、凄く大きいんじゃないかな?」

「それは楽しみですね!」

「うん、そうだね」

アルテやティルと楽しく会話をしながら、ゆったりとした馬車の室内で旅路を楽しむ。気分は旅行だ。そう思って準備の時からウキウキしていたのだが、馬車の中は想定外の状況になっていた。

「ふむ……ならば、エスパーダ殿は我が街でもセアト村と同様に領民に教育を施すべきと仰るか」

「そうですな。イェリネッタ王国の領地であった以上、城塞都市カイエンは元イェリネッタ王国の領民ばかりとなります。ならば、基礎教育を通じて、自らがスクーデリア王国の民であるという認識を持たせた方が良いかと愚考いたしますな」

「そうか。いや、それは長い目で見れば重要なことだろうな。労力は必要となるが、それに見合うだけの効果もある。エスパーダ殿はやはり知者だな。他には何か良い助言はないだろうか」

「そうですな。後は……」

広々として優雅な馬車の旅は、同席したパナメラとパナメラが声を掛けて一緒に乗ったエスパーダの手によってお勉強の旅へと変わっていた。二人はとても真面目な話を延々としており、時折こちらにまで意見を求めて来るのだ。

いや、ヴァン君は海とか船とか海の幸とか色々と考えなくてはならないことが一杯なのだ。そっとしておいてほしい。というか、パナメラは自分の馬車を持っているだろうに。

「ヴァン様はいかがですかな?」

「え?」

不意に、エスパーダに話しかけられて生返事が出る。すると、パナメラが意地の悪い笑みを浮かべて肩を揺すった。

「少年。さてはうたた寝していたな? 今は少年の好きな船についての話だぞ」

「え? 船?」

聞き返すと、パナメラは笑みを浮かべて頷く。

「そうだ。もし海を渡る船が本当ならば、それはどのような船だと思う?」

「多分、鉄製かミスリル製の船だと思いますよ。木製の船では魔獣の襲撃に耐えられませんから」

「なに?」

簡単に自分の考えを伝えると、パナメラとエスパーダは顔を見合わせた。

「……鉄の船。可能なのか?」

パナメラがそう問うと、エスパーダが顎に手を当てて唸る。

「鉄は水に沈みます。しかし、例えば大きな木材に薄く伸ばして貼り付けたなら……いえ、それでは最初にヴァン様が口にした大型魔獣の襲撃に耐えられないかもしれません。ふむ……」

悩むエスパーダを面白そうに眺めてから、パナメラがこちらに視線を移した。

「面白いな……少年はいつも、予想外の考え方をする」

「え? あ、ははは……そういえば、そろそろ着くんじゃないですか?」

パナメラの追及するような視線から目を逸らし、馬車の外へ顔を向ける。微かに海の香りが漂っている気がした。

馬車の窓から身を乗り出してみると、小高い丘を越えようとしているところだった。長い坂道を登っていく馬車。周りには元気よく行軍する騎士達の姿もあった。先ほど昼食の休憩をとったので、皆元気いっぱいである。

その勢いのまま坂を登っていき、やがて丘の頂上に辿り着く。

その瞬間、馬車の進行方向には青と緑の層が出来たグラデーションの線が左右に伸びているのが見えた。空の深い青を映し込んだ海は青と透き通るような緑とが美しく交じり合っている。

「うわぁ、南国の海みたいだ!」

美しい海を見て歓声を上げる。すると、ティルとアルテも隣から顔を出して海の方へ目を向けた。

「すごい……!」

「綺麗……!」

二人も感動の声をあげて海に夢中になっている。振り向くと、もじもじした様子で立つカムシンの姿もあった。

「カムシンも見てみて!」

声を掛けると、カムシンはパッと顔を上げて笑顔になる。

「は、はい!」

従者として気を使っていたようだが、僕の許可を得てカムシンはティルの隣から顔を出して海を見た。

「す、すごい……! 大きい!」

最近では珍しくなった童心に戻ったカムシンの姿が見られた。窓から顔を出したカムシンは身を乗り出して海に夢中になっている。アルテと並んで海を見るカムシン。そして、だいぶ年上の筈のティルも一緒に夢中になって海を見ている。

そんな三人を見て和んでいると、パナメラとエスパーダの視線を感じた。

「……少年の方が保護者のように見えるな」

「奇遇ですな。私もそう思っておりました」