軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

楽しい引き込み作業

休憩しつつ、エスパーダが川から水を引き込むための支流を作っていく。

とはいえ、作業に支障が出るため、川のすぐ側に壁を作っており、それ以降の支流となる部分を掘っている。

エスパーダが数十メートルを一気に掘り進め、休憩中はディーやカムシン達が凄い馬力で掘り進める。僕とティルは後から付いていきながら、地面や壁の部分の強化をしていった。

川との距離から考えて「こりゃ大仕事だな」なんて皆で言い合ったのだが、意外にもサクサク進む。

というか、尽きないエスパーダの魔力にも驚きだが、尽きないディーの体力にも驚きである。

「ぬぅーあははははっ!」

疲労困憊で座り込むアーブ、ロウとカムシンをよそに、ディーは僕が作ったスコップでざくざく掘り進んでいく。

何が楽しいのか、ディーの口からは笑い声が溢れ出していた。

「……もう四十だというのに、元気な男です」

エスパーダが呆れたような顔でそう口にした。ディーって四十なのか。なんか凄いな。

そんな訳の分からないことを考えながら川の引き込み工事をすること半日。まさかの村が見えてきた。馬鹿みたいなペースだ。

小一時間結構頑張って歩いて川に辿り着いたのだから、距離的には四キロ近くある筈だ。

その距離を、地面を掘りながら帰ってきて約八時間。恐らく、一キロほど先に我が村が見えるところまできた。

「はい、今日は終了」

僕がそう告げると、ディーとエスパーダが不可解そうにこちらを見た。いや、アーブやロウ、カムシンを見たまえよ、君達。もう息も絶え絶えじゃないか。

「むう、久しぶりに良い鍛錬方法を見つけたと思ったが……たしかに、無理はしない方が良いか」

ディーがツッコミ所満載なコメントをしたが、誰も何も言えなかった。まだ余力があるのか、ディー。馬鹿じゃないの。

信じられなさ過ぎて思わず心の内で罵倒してしまった。

ちなみに、エスパーダも涼しい顔をしていたりする。ああ、恐ろしい。年配者とベテランの底力を知った一日だった。

オルト達は川作りに興味ないとのことで、鉄鉱石やらを大量に仕入れてきたが、疲れ果てた僕は剣造りを断った。

そして次の日、なんと午前中の内に村の堀にまで到達した。逸る気持ちを抑え、村の裏側に水の抜ける道を作る。

そこからちょっと進んだ所に、小さいが深い溜め池を作った。

増水したらこちらに抜けるようにしたのだ。

本当ならば、最終的に川に戻るようにして循環させたいが、それをするのはまた次回とする。

とりあえず、僕は早く水が引き込まれる様子をみたいのだ。

僕達は今度は馬車に乗って、また川まで戻った。馬車は街道に置き、そこからはやはり歩きだ。

川に辿り着くと、僕は皆を労う。

「えぇー、皆様の多大なる貢献により、ついに水引き込み工事の完了する時を迎えました。この一日半の間、大変な苦労があったことと思います。本当にありがとうございました。では、開通」

労いの言葉を言い終わると同時に、川と引き込み先とを遮っていた壁を破壊する。

水はすぐさま川から新たな支流へと流れ込み始めた。

「おぉ! 素晴らしい!」

じゃんじゃん流れ込む川の水に、僕が思わず拍手喝采。皆も合わせてくれて拍手喝采。

川の水がどんどん流れていくのを見るとワクワクする。

いやー、楽しい楽しい。水の流れを追いながら、馬車で優雅に村を目指す。

しっかり水路の補強ができていたからか、水の勢いは衰える気配無く進んでいく。ここまで水の流れが良いと逆に心配になってくるよね。

後で堀の様子を見て確認しよう。

そう思いながら村まで戻ると、僕達が帰ってきたことに気が付いた村人達が橋を下ろして門を開けた。

「おぉ! 水だ!」

「本当に川から水が……!」

村人達がワラワラと出てきて、水が堀に流れ込んでいく様を驚きとともに眺めている。

「凄い凄い!」

子供がキャアキャア言って堀の周りを走りながら貯まっていく水を追っていった。僕も是非とも加わりたい。

「これで水がすぐ手に入るようになったのですな」

ロンダが歩いてきて感動とともにそう呟いたが、僕は首を左右に振る。

「これまでは飲み水が随分適当だったからね。濾過して煮沸するまでやっておきたいんだ。だから、それ用の設備を作らないとね」

「は、はぁ……」

戸惑うロンダに微笑を返し、僕はディー達に鉄鉱石を準備させる。

「こちらです!」

珍しくやる気に溢れるロウが大量に鉄鉱石を運んできた。そして、キラキラした目で僕を見ている。

「……何を作るか興味あるの?」

「は、はい! どういった設備をつくるのか、と」

驚いた。どうやらロウは物作りが好きらしい。そういえば、川の引き込み工事完成時も凄く楽しそうだったな。

「じゃ、一緒にやろうかな。まずは、この水を持ち上げる水車を作る」

「はい!」

テンションの高いロウが嬉々として素材を運んできて、僕が形にしていく。ディーとアーブは補助だ。

堀の片側に水車を設置し、側面に等間隔で桶を取り付ける。それが水車の回転に合わせて水を高所へ運ぶのだ。

防壁の上まできた水は、下降する際に桶が傾き、防壁の上から村の中に向かって伸びる水路。そのすぐ先には受けがあり、枝や葉、砂、土、石、布などを用いて作ったろ過機だ。

そこを抜けて綺麗になった水は、そのまま金属の水槽に貯められる。水槽は錆びないように表面と裏面を銅でコーティングしたため、水は綺麗なまま貯まっていく。

貯まったら、水槽の下に設置している蛇口から必要な量を出し、煮沸機に送る。

残念ながら、煮沸機の火ばかりは自分で点火しないといけない。火 熾(おこ) しだ。

ティルが火の魔水晶があれば簡単に火が点きますよと教えてくれたので、購入を検討しよう。

とりあえず、これで水は安心、安全な飲み水となった筈だ。

ロンダに設備の使い方を教えていると、今度はカムシンが走ってきた。

「水がいっぱいになりました」

と、まさかの満水報告である。開通から三時間。夕食前に完了してしまったというのか。

僕は急いで防壁に登った。

「おぉ、満水だ」

思わず感嘆の声をあげてしまう。まだ引いたばかりの川の綺麗な水が堀をいっぱいにしていた。

この勢いで水が来ると、流石にまずい気がする。

「雨とかで増水したら氾濫とかしないかな?」

そう尋ねると、斜め後方に待機していたエスパーダが目をわずかに見開いた。

「……よくお気付きになられました。本来、水量を見ながら水路の幅を広げたり、よく氾濫する場所は堤防を築いたりするものです。また、こういった先が行き止まりとなる水路は工夫が必要になります」

珍しくエスパーダに褒められた。

「水の行き場が無いからね。じゃあ、川の下流に戻すようにするか、もしくは裏側に湖でも作ろうか」

そう告げると、エスパーダは眉根を寄せて唸る。

「本来なら、川の下流に戻すのが良案ですが、湖を作るという案も思いのほか良案かもしれません。雨が降らずに水が川から流れてこなくなった時、貯水池があると助かるでしょう」

「氾濫対策さえしていれば大丈夫ってことかな? よし、それでいこう」

こうして、村の裏側から二百メートルほどのところに、湖を作ることになった。

雨が降るまでに強行突貫工事である。

こうして、この湖は三日であらかた完成してしまった。

「すりばち状じゃなくて良いから、出来るだけいっぱい貯められるようにするよー」

「はっ!」

「斜面になるから、満水時はあちら側に水が流れるように高さを変えるよー」

「はっ!」

僕がイメージを伝えると、ディー達が形にしていく。ちなみにエスパーダは湖の大体の形作りと堤防を築いたりしている。

後は、災害予防策として、川からの引き込み口に手動で閉じることのできる水門を設置しようかな。

他は実際に使ってみて考えていこうか。

一先ず、綺麗な水がいっぱい入って僕は満足である。