軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それから一週間

「おはようございます」

「おはようございます。今日はどちらから?」

「今日は城壁からにしましょうか」

「承知いたしました」

そんな簡素なやり取りをして、僕は朝のお勤めに参る。ちなみに先ほどのやり取りはゼトロスと行っている。毎朝の確認事項のようなものだ。

「あ、お召し物に皺が……」

「おっと、気付かなかった。ありがとう、ティル」

「はい!」

カイエン城に勤める従者達が優秀な為か、ティルはいつも以上に気を回して僕の周りを衛星のようにクルクルと回っている。アルテも僕のすぐ横だったり後ろに付いてきているので、ティルの過剰なお世話に時折笑っていた。カムシンはようやく警戒心が薄れてきたのか、周囲を警戒しつつも少しリラックスした様子で後を付いてきている。

一方、ディーはこれも訓練だと言ってセアト村騎士団の面々を引き連れて毎日木を切って運び込んでいた。午前中に二回、午後に三回ディーの笑い声が街中に響き渡るのはもはや定例行事と化している。街の子供などにいたってはディーが丸太を持って走ると後を追いかけたりしていた。

ちなみに、パナメラの要望もあり一週間で城門とその周りの城壁、更に中心を走る大通りや城壁すぐ内側の通りは全て綺麗に整備し直した。大通りに面した建物は通りを拡張する際に取り壊す必要があったので、その建て直しまで完了している。おかげで、外から城塞都市カイエンに来た人はその変わりっぷりに驚愕することだろう。

街道から見て城門が新しく、豪華になっており、城壁においては色すら違う。そして、城門を潜れば広くて綺麗になった大通りと広場が目の前に広がり、真新しい三階建ての建物が並ぶ先には完全に別物となったカイエン城が聳え立っている。

一応、城門から建物、城までバロック様式で統一したので見栄えも良いはずだ。

そして、今は城壁を順次綺麗にしている最中である。何しろ範囲が広い為、移動するだけでも大変なのだ。どうせ下水道を一新するには材料なども足りない為、僕が城壁をゆっくり補修している間にそれらの手配をしてもらっている状況である。

「城壁もまだ三分の一くらいしか出来てないし、やっぱり一カ月くらいは掛かるかなぁ」

そう呟きつつ、城壁の上で外の様子を眺める。高い場所にいる為、風が強くて心地よい。柔らかい草花の香りが疲労を癒してくれる感じがした。

「ヴァン様、お疲れでしょう。さぁ、椅子をどうぞ」

「ありがとう、ティル」

外を眺めていると、ティルが折り畳みの椅子を置いてくれた。遠出が多くなってから作った折り畳み椅子だ。物凄く軽いのに強度がある為、ベルランゴ商会が涎を垂らす勢いで欲していた逸品である。

それに座って街の様子を上から眺めると、新しい部分と古い部分とで雰囲気が大きく違うことに気が付く。新しい部分は豪華で美しく、個人的には大満足な景色だ。対して、古い街並みが残った部分は屋根や壁が欠けていたり、色合いも茶系で統一されてはいるものの濃淡がまばらで古さが際立ってしまっているような気がする。

しかし、その古い街並みの方が人々の生活感が感じられる気がした。

「……ちょっと、改修計画を見直そうかな」

そう呟くと、アルテが首を傾げた。

「計画の見直しですか?」

「うん。今のままの改修計画だとせっかく何十年も続いているこの街の景観が台無しになっちゃうかもしれないからね。今日の城壁改修が終わったらパナメラさんに相談してみよう」

色々と考え直す必要があるかもしれない。新たな計画を頭の中で思い描きつつ、城壁の補修を急いだのだった。

カイエン城へ戻り、すぐにパナメラに思いついた意見を伝えてみる。街全体の事なので、ゼトロス達にも全員集合してもらった。忙しい中、すぐに集まってくれたゼトロス達だったが、僕の意見をすぐに検討してくれる。

「それは我が町の住民も喜ぶことでしょう」

「特に高齢な者は安心すると思います」

議会長のビルトやトマスが一番に良い反応を示した。対して、騎士団のベルビールは少し微妙な顔をする。

「……防衛力はどうなのでしょう? 正直、この街はかなり古い造りです。もう敷地がない状態で無理矢理建てた建物や施設も多く、何かの際すぐに騎士団を動かせない時があります。もし飛行する魔獣の襲撃があった時は防衛が難しいかと」

「道や建物の高さは変える必要があるということか? しかし、それでは元々の計画とあまり変わらないだろう」

その意見に税と予算の管理をするバラットが疑問を呈する。補修や改修費用などが頭をチラつくのかもしれない。

議論が中々進まなさそうな気配を感じたのか、ゼトロスがパナメラに顔を向けた。

「……パナメラ様はいかがお考えでしょう」

その質問に、皆の目がパナメラに向く。一方、パナメラは静かに皆の意見を聞き、熟考した後に僕を見た。

「私はそもそも全てを作り替えるつもりだったが、少年はこの街の何かを残したいと言うんだろう? どう残すつもりだ? 少年のことだ。自分なりに何か考えてきているのだろう?」

そう聞かれて、微笑みを浮かべて頷く。

「すみません。正直なところ、その言葉を待っていました」

そう答えると、パナメラを除く皆が怪訝な顔をして首を傾げた。その顔を一つ一つ確認しながら、自分の考えを口にする。

「道や建物、施設の配置だけでなく老朽化などの問題もあるので、どちらにせよ建物は全て改修すべきだと思います」

「ふむ、それではどうするつもりだ?」

「まず、道を整備してから施設を効率的な場所に再配置する部分はそのままです。あとは、住居となる建物も同様に大きく建て直します。ここまでは当初の計画通りですね。ただ、少し工夫します」

「……工夫?」

僕の言葉に、パナメラは腕を組んで眉根を寄せたのだった。