軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【別視点】行商人として2

「アーマードリザードの素材とか、売れるかな?」

そう聞かれて、私は即座に頷いた。

「勿論です! アーマードリザードを討伐したのですか? 素晴らしい。冒険者も戦うのを嫌がる強敵ですよ!」

思わぬ臨時収入だ。こんな村でそんな貴重な素材が手に入るとは。

そう思い、私はランゴと手を取り合って喜んだ。大赤字かと思っていたが、とんでもない誤算だ。神様ありがとう。

私はランゴとホクホク顔でヴァン様の後に付いていき、出入り口近くに建てたという素材倉庫に向かう。村の入り口から右手の一番角にある、大きな二階建てだった。

素材を陽や風雨に当てないように工夫しているのか。そう思い、感心しながら中に入り、絶句した。

「あ、あ、あの……これは? まさか、二十メートルとか三十メートル級のアーマードリザードとか出ました?」

ランゴが馬鹿みたいなことを言って乾いた笑い声をあげる。だが、それを馬鹿に出来ないような光景が目の前に広がっていた。

二階建てと思っていた建物は異様に天井が高い一階建てであり、その天井につきそうな程うず高く、アーマードリザードの皮が積まれていた。他にも爪の山、牙の山、骨の山、そして石ころのように魔核の山が積まれている。

それを見て、ヴァン様が笑顔で尋ねてくる。

「アーマードリザード約四十を討伐する際、盗賊三十人も捕縛したからね。その人達を引き取ってもらって素材運んでもらっても良いと思うけど、どうだろう? あ、荷車なら用意するよ」

「ちょ、ちょっとこの数は……もし、お時間をいただけるなら、一ヶ月後……いえ、四週間後には商会から人手を集めてきますので、お待ちいただけないでしょうか?」

「ああ、大丈夫ですよ。肉は皆で美味しく食べますから」

そう言われ、私はアーマードリザードの肉の存在を思い出した。皮でこの量なのだ。比較的量が取れないと言われていても、十トンや二十トンじゃすまない量だろう。

つまり、百人や二百人では消費出来ずに腐らせてしまう。

「肉……もし良かったら、隣の村に販売に寄って帰っても構いませんか? お値段は、少し安く売っていただけると助かります」

そう聞くと、ヴァン様は片方の眉を上げた。

「隣の村? アーマードリザードの肉を買えるほど余裕があると?」

嫌味ではなく、本当に疑問に思ったのだろう。不思議そうにそう言われた。それに苦笑し、私は片手の手のひらを上に向ける。

「いえ、貧乏な村ですよ。ただ、今年は税の徴収をされたら蓄えが出来ないらしく、食料を頼まれていまして……」

後でアーマードリザードの素材を一手に販売出来るなら、十二分に回収出来る。そう思い、私は隣の村に無償で肉を配ろうと考えた。

だが、ヴァン様は私の顔をジッと見て、首を左右に振る。

「肉なら多分半数を腐らせてしまうからね。タダでいいよ。そちらも、あまり利益は出そうとしてなさそうだし、ね」

苦笑混じりにそう言われて、私は思わず息を呑んだ。

「……大変助かります。その代わりと言ってはなんですが、盗賊達の引き取り代金は多めにお支払いしましょう。一人大銀貨四枚お支払いします」

金貨十二枚。我々商人からすれば破格の値段だ。その場で買ってそのまま売っても利益はほぼ出ない。こんな辺境から連れて帰れば、売値が一人金貨一枚にしないと利益にならないだろう。

貴族には分かってもらえないが、こちらとしては最大限の誠意である。

対して、ヴァン様は軽く頷いて笑った。

「ありがとう。その代わり、今後もこの村に来てくれるなら、後悔しない取引をさせてあげるよ。例えば、良質な武具とかね」

そう告げられ、私は首を傾げる。

「この村には、高度な設計士と凄腕の大工以外にも、鍛冶屋まで連れてきたのですか?」

驚く私に、ヴァン様は嬉しそうに目を細めた。

見事な剣だった。

装飾過多気味でありながら、その剣は確かに武器としての威圧感のようなものを放っている。

武器の良し悪しはまだ正確には分からないが、一先ず美術品としての価値は十二分にあると知れた。

「どうですか、武器としての価値は」

専門家に聞くと、剣を手渡されたエアは魅入られたように刀身を眺め続けており、オルトという冒険者仲間に声を掛けられるまで反応しなかった。

「ほら。これ、アーマードリザードの皮の端っこだ」

ニヤニヤと笑みを貼り付けたオルトがアーマードリザードの皮を差し出すと、エアは自分の持つナイフで皮の表面に切りつける。

だが、小さな線のような傷くらいしか入らなかった。私が驚愕していると、エアは静かに頷く。

「確かに、アーマードリザードの皮だな。試し斬りしても?」

「良いよ」

エアが尋ねるとヴァン様はのんびりした雰囲気で了承する。少し不安そうに、エアはあの見事なロングソードをアーマードリザードの皮の表面に添えた。

そして、押し当てながら引いていく。

「っ!? ば、馬鹿な!」

直後、エアは目を見開いて驚愕し、剣を皮から離す。何があったのかと見れば、あの硬いアーマードリザードの皮がスッパリと綺麗に切れていたのだ。

「まるで、鶏肉でも切るくらいの感触だったぞ!?」

「凄いだろう?」

エアの驚きに、オルトがくつくつと笑って自らの腰を指差した。

そこには、同じような雰囲気の剣が差されている。

「金貨五枚の特注品だ。俺が振りやすい長さと厚さにしてもらった。信じられるか? これ、鉄の剣なんだぞ」

「これで金貨五枚だと!? 安過ぎる! 俺も買うぞ! 槍は無いのか!?」

大興奮のエアにオルトは笑う。

「命を預ける大事な相棒だ。注文するなら、出来るだけしっかりと形や重さを考えたほうが良い。言っておくが、想像より軽くて強いものが来るからな。受けが出来る部分も作るならその部分は切れ味を落としてもらえよ?」

「な、なるほど……切れ過ぎるせいか……」

オルトの助言にエアは自らの顎を片手でつまみ、少し俯く。唸りながら考え込むエアを見て、私は言った。

「……武器としても破格のようですね。こちらも言い値で買いましょう。ただ、やはり量が持って帰れません。これも、申し訳ありませんが……」

「あぁ、後日でも大丈夫だよ」

「ありがとうございます」

私は深々と頭を下げた。

それから、私たちは街の中を見学し、ヴァン様に調味料と酒、日用品を買ってもらった。

こちらの方が得になり過ぎてしまうが、アーマードリザードの肉と私用の短剣一本で全て差し出した。

「良いなぁ、兄貴……」

そう言われて、もう一本短剣を個人的に買わせてもらう。金貨三枚とのことだった。

ランゴは買ったばかりの剣を、子供のように眺め、嬉しそうにしている。もう十八なのだから、落ち着いてほしいものだ。

苦笑しつつそんなことを思い、アーマードリザードの肉を炙って食べ、また驚愕した。

気が付けば、私はすっかりこの村の虜になっており、今後どうするかと頭をひねる。

商会に帰って商会長と話をしてからになるが、この村に店を出すのが一番良いのかもしれない。

だが、販売先との往復は必須だ。

「……ランゴ。商会長に掛け合って、中規模のキャラバンを組織してもらおうと思うが、どうだ?」

「良い案だ。もしくは、馬車三台の隊商を二組作って二週間ごとにこの村に来るようにするか」

「そうだな……その場合は、途中の町か村で一度合流するか……」

色々と話していき、どちらともなく笑い出した。

「これから忙しくなるぞ」

「ああ、楽しみだ」