軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンについての報告

「ヴァン様ー」

「あ、オルトさん! 久しぶりです!」

珍しく、領主の館にオルト達が揃って現れた。いつもながら、オルトは力強く、プルリエルは可愛い。他の仲間達も同様だが、何故かクサラは物凄くボロボロだった。

「えっと、クサラさんはどうしてそんなにボロボロに? もしかして、夫婦喧嘩……」

「……全然違いますぜ」

疲労感たっぷりにクサラが答える。その様子に苦笑しつつオルトを見ると、困ったような笑いが返ってきた。

「いや、ダンジョンで問題が発生してしまいまして……」

「え?」

突然の報告に首を傾げていると、後ろで聞いていたエスパーダが顎に手を当てて唸る。

「……ダンジョンでの問題とは、凶悪な罠か強大な魔獣といったところでしょうか」

そう呟くと、オルトは深く頷いた。

「その両方です。とんでもない階層についてしまって……あまりの攻略難度に、一部の冒険者はダンジョン前の拠点に泊まって山の魔獣を狩って過ごしているくらいです。今、ダンジョンを攻略しようと潜っているのは僅か三パーティーのみ。まぁ、山の魔獣は希少な種類が多いから、稼ぐならそっちの方が確実だろうけど」

後半は愚痴に近い。溜め息混じりにそう呟いたオルトに、クサラが何度も頷く。

「いや、本当ですぜ。大人しく山で魔獣狩りしてた方が良いに決まってやす。あんなダンジョンは伝説級の冒険者達に任せましょうや」

若干やさぐれた様子でクサラがそんなことを言った。事情を知っているのだろう。プルリエルが不貞腐れるクサラの横で苦笑している。

「もしかして、クサラさんだけ罠にかかったり?」

そう推測したが、クサラは勢いよく首を左右に振った。

「違いますぜ。あっしは腐っても斥候でさぁ。罠になんてかかりゃしやせん。この馬鹿リーダーがお宝見つけて無理するから……! しかも、魔獣を相手にするからって厳重に罠が仕掛けられた宝箱を急いで開けろなんて言うから、火は出るわ矢が飛び出てくるわ……!」

腕を振り回して怒りをアピールするクサラ。それに笑い声を上げて、オルトが親指を立てた。

「いや、クサラなら出来ると信頼して任せたんだ。しっかり宝箱の罠を解除して中の物も手に入れたんだから、流石はクサラだな!」

「馬鹿リーダーめ! 騙されやせんぜ!」

オルトの下手なフォローにクサラが泣きながら怒った。相当怖かったのだろう。まぁ、火が出たり矢が飛んでくれば怖いに違いない。

「……ちなみに、その宝箱からは何が出たのかな?」

気になってそう呟くと、オルトが嬉しそうにテーブルの上に置いた。馬鹿みたいにデカい、赤みがかった金属の塊だ。

「オリハルコン! それも、鉱石じゃなくてインゴット?」

「凄いでしょう。王家でも持ってませんよ、多分」

オルトが胸を張ってそう言った。確かに、鉱石からオリハルコンを精製すると五分の一から十分の一にまで小さくなってしまう。対して、これは既に精製された純度の高い塊だ。

「……これ、金額にしたらどれくらいだろう?」

そう呟くと、オルトが指を一本立てて口を開いた。

「白金貨十枚です」

その言葉に、エスパーダが眉間に皺を寄せる気配がした。しかし、何も言わない。その態度を見て、何となく察することが出来た。

「……絶対、そんな金額じゃないでしょう? 王家ですら持っていない代物。ちなみに、ドワーフの国の王が喉から手が出るほど欲しがってます。多分、白金貨百枚でも二百枚でも買うでしょう。もしかしたら、白金貨千枚かもしれない」

そう答えると、オルトはプルリエル達を横目に見る。すると、プルリエルがフッと笑みを浮かべて頷いた。それらを確認し、オルトは改めてこちらに向き直る。

「……さて、冒険者の俺らには価値は計れませんね。とりあえず、少し安過ぎたのかもと思いましたが、ヴァン様がダンジョン攻略を手伝ってくれるなら、白金貨十枚で売りますよ」

そう言って、オルトは悪戯っぽい表情で笑った。

「うわー、めっちゃ怖いけど、オリハルコンは欲しいなぁ」

オルトの厚意に乗っかり、そう答える。すると、エスパーダが静かに頷いて口を開いた。

「ヴァン様に危険がないよう配慮していただけるならば、ダンジョンの攻略に手を貸すのは良いことだと思います。ダンジョンの攻略が進めばこれ以上の品が手に入るかもしれません。また、その噂を聞いて更に多くの冒険者達が訪れれば、セアト村もより潤うことでしょう」

その言葉に、何故かクサラが涙目で頷く。

「その通りですぜ! あっしを助けると思って!」

「そうそう。クサラを助けると思って」

「……馬鹿リーダーはちょっと罠に引っかかって死ぬかもしれやせんが、ヴァン様は死にませんぜ」

「おい!」

クサラはかなり根に持っているようだ。久しぶりにオルト達の楽しい会話を聞き、笑って頷く。

「そうだね。それじゃあ、少しお手伝いしようかな」

ダンジョンに到着して十五分ほどだろうか。早速後悔した。

「なんで、こんな穴だらけの場所を普通に進んでいるの?」

「え?」

岩肌がむき出しになった洞窟のような通路。床はボコボコになった石のタイルが敷かれているが、不自然な穴が幾つも空いている。それも、人一人がスポッと入りそうな大きな穴だ。穴の底は全く見えないほど深い。

「罠をわざと発動させて落とし穴を露出させてるんでさぁ」

クサラが落とし穴を跳び越えながらそんなことを言う。ここでも冒険者達の安全意識の低さを思い知らされた。

「ヴァン様、ウッドブロックを使いますか?」

「お願い」

カムシンの提案に頷くと、アーブやロウがせっせとウッドブロックを運んでくる。

「わっはっはっは! ダンジョンというのも面白いものですな! 色々と鍛錬が出来そうですぞ!」

ちなみに、ディーはクサラと同じく穴を跳び越えながら大剣を振り、魔獣を次々に狩っていた。今回は万全を期す為、機械弓部隊を含めてセアト村騎士団の多くがダンジョン攻略に参加している。

斥候として活躍できるのはクサラのみだが、戦闘に関しては全く問題ないし、罠に関しても僕がどうにか出来そうである。

「ヴァン様ー。ここの滝が厄介なんですよー。凄い水量の上に上からも湖からも魔獣が向かってくるし」

「埋めようかな」

「ヴァン様ー! この一本橋は危ないですよ! 気を付けて渡ってください!」

「橋を架けるよ」

「ヴァン様ー。この辺りから弓矢が天井と左右から飛んでくるんでさぁ。巧妙に隠されていてどれを踏んだら悪いのか難しくて困ってやす」

「天井と壁を新しく作るよ」

そんな感じで、案外危険も無くダンジョンの攻略は進む。

「意外と簡単じゃないですか?」

順調過ぎてカムシンもダンジョンを舐めた発言をしてしまうくらいである。それに、オルト達が肩を落して落ち込んだ。

「いや、こんなダンジョン攻略ありえないだろ」

「私たちの苦労って……」

「あっしが一番苦労してやしたからね」

オルト達に文句を言われつつ、現在攻略中の最下層のフロアの罠を無効化したところで、僕は口を開いた。

「よし! これで約束の場所までお手伝いしたからね! さぁ、三日もダンジョンに籠っちゃったし、そろそろ帰るよ!」

そう告げると、セアト村騎士団の面々が大喜びで返事をする。オルト達はもう少し、もう少しと食い下がったが、約束は約束である。さぁ、あのオリハルコンで何を作ろうかなぁ。

僕はスキップをしながらセアト村に戻ったのだった。