軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

陛下からの誕生日プレゼント

屁理屈を並べ立ててエスパーダを説得することに成功した。イェリネッタ王国との戦いより緊張感のある時間だったが、何とか乗り越えたのだ。僕は偉い。

エスパーダの手によって物凄く丁寧な文章になった僕の書状はメアリ商会によって届けられた。

結果を待つ間に、僕の十歳の誕生日が訪れる。

「ついに、十歳の大台に乗ってしまった」

エスパーダ主導のもと、セアト村を挙げての大々的な式典を行っている最中で思わずそう呟く。それにアルテが可愛らしく笑った。

「……少しの間かもしれませんが、差が一歳に縮まりました」

小さな声でそんなことを言うアルテに、成程と頷く。

「そうだね。アルテの方がお姉さんだから」

肯定すると、アルテは照れたように微笑む。まぁ、少ししたらまた二歳差に戻るのだが。

二人でそんな会話をしていると、カムシンが腕を組んで唸っていた。カムシンは誕生日が曖昧な為、とりあえず僕の誕生日の一か月後としている。年齢は、今が十一歳なので十二歳になるのか。背もかなり高くなったし、遠目から見れば大人に見えなくもない。身長が伸び悩んでいる僕からしたら羨ましい限りである。

一方、暗い顔をする者もいた。

「……ティルの誕生日も盛大にするから、安心してね」

そう声をかけるが、ティルは複雑な顔で笑う。

「わ、私も次の誕生日で十二歳ですからね……あ、あははは……」

「え? ティルさんは二十一歳になるんですよね?」

「ぐぐ……っ」

ティルの下手な冗談にカムシンが素直にそう聞き返した。ティルの心に会心の一撃である。

「……セアト村に来てもうすぐ二年かぁ。あっという間だったなぁ」

人口がどんどん増えて、セアト村の城壁の中は中心部はもちろん、星型城壁の中も建物でいっぱいになってきていた。空き地はどんどん減っている。これが日本なら地価は物凄く高騰していることだろう。

「ヴァン様のおかげでセアト村は天国のような地になりましたぞ」

「もう子供領主なんて言えませんな」

「誰だ、そんなこと言っていた奴は!」

セアト村の元々の住民達もお酒を呑みながら楽しそうに話に入ってくる。

「まだまだだよ! 本当はもっと食べたいものとか、面白いものが欲しいからね! 皆で頑張ろうね!」

酔っ払い達にそう声を掛けると、大歓声が返ってきた。明るくて賑やかな、良い村である。二年という月日を経て、僕はセアト村が本当に大好きになった。冒険者にはバックパッカーのように移動を繰り返す者もいるようだが、セアト村をメインの拠点に据える者達も多い。その辺りはオルト達がまとめてくれているので、冒険者の町の治安もとても良かった。

最近は他の領地からの移民も減ったが、冒険者達はまた増えている。今回の褒賞である領地の件もある為、領地だけでなく領民も大きく増えることだろう。そうなったら、また色々としたいことがある。

「せっかく貰えるんなら、活用方法を考えないとね」

そんなことを呟きながら、僕は楽しい誕生日を迎えたのだった。

それから僅か数日後、村に三十台を超える馬車が到着した。

「ヴァン様! いっぱい来ました!」

「何が!?」

朝一番にティルの大声でベッドから跳ね起き、脊髄反射で返事をする。ティルも混乱しているのか、ワタワタしながら僕の着替えを準備した。

「ぱ、パナメラ様やイェリネッタ王国の王子であるフレイトライナ様、後はタルガ様もです!」

「え? 全員一緒に来たの?」

皆住んでいる場所が違うのに、そんな偶然があるだろうか。着替えながら聞き返す。それにティルが慌てた様子で僕に服を着せながら答えた。

「ヴァン様は辞退されてましたが、王都で功労者を表彰する式典がありましたから!」

「あ、そういうことか。そういえばそうだったね。あ、ティル。流石にズボンは頭から被れないよ」

「あ、間違えました!」

ドタバタしながらも早着替えを完了し、領主の館を飛び出て城門の方へ向かう。

「ヴァン様! パナメラ様、タルガ様がお待ちです!」

「聞いたよー!」

カムシンが迎えに来たので、合流して城門を目指した。城門に行くと、ディーとエスパーダがパナメラ達の相手をしてくれていた。

「おお、少年! 久しぶりだな!」

「ヴァン様!」

パナメラとタルガがこちらに気が付き、手を振ってくれる。遠目からでもパナメラの見事なプロポーションと頭一つ大きいタルガの体躯が目につく。タルガは以前見たものと同じ鎧姿だったが、パナメラは見事な真っ赤なマントを羽織っていた。

「パナメラさん! タルガさん! お久しぶりです!」

両手を振りながら走っていくと、パナメラに片手で頭を押さえられた。

「少年! まさか陛下の招待を断るとは思わなかったぞ! 代わりに私が褒賞を受け取ってきたんだからな!?」

パナメラは豪快に笑いながら僕の頭をぐりぐりしてきた。

「ご、ごめんなさいー!」

これは分が悪いとすぐに謝罪すると、パナメラは今度は両手で僕の両頬を挟み込む。

「しかも、簡単に子爵になって! 生意気な! 一年ごとに爵位を上げるんじゃない!」

「うわー、それもごめんなさい!」

パナメラは笑っているが、意外と痛い。これはお相撲さんでいうところの可愛がりではないのか。そんなことを思っていると、タルガが苦笑しながらパナメラを見た。

「卿も伯爵位を賜ったではないですか。今回の軍功は一位がヴァン様、二位がベンチュリー伯爵、三位がパナメラ子爵ですからな」

「伯爵だ、伯爵。パナメラ伯爵と呼べ! そうだ、ようやく自領を手に入れたぞ! 少年、陛下に口添えしてくれたのだろう!? よくやった!」

タルガの言葉にテンションを更に上げてパナメラが僕の頭を胸に抱く。折檻からのご褒美か。こんなに嬉しいことは無い。

そんなことを考えて鼻の下を伸ばしていると、僕に向かってタルガが頭を下げた。騎士としての一礼である。なんとなく、その態度で一礼の意味を察した。

「タルガさんは、もしかして……」

「はい。今後はヴァン様の傘下に入る形となります」

「傘下、ですか?」

部下ではないのか。そう思って聞き返すと、タルガは苦笑して頷く。

「はい。ヴァン様のお陰でセンテナの防衛での功績として男爵位を賜りました。その際陛下からご提案をいただき、男爵としてヴァン様と同盟を結ばせてもらえたらと思います。もちろん、五分の同盟ではなく、あくまでもヴァン様が上位であり、私が下位となる同盟です。私はヴァン様の盾となり御身を守り、剣となり敵対する相手を打ち倒しましょう」

厳かにそう告げるタルガを見て、男爵になっても中身は騎士のままだと思って笑った。

「五分の同盟で良いですよ。パナメラさんとも同じですから」

そう言って片手を振ると、タルガは表情を緩める。

「……ありがとうございます。しかし、そうもいきません。陛下よりヴァン様をお支えするよう言い付かっておりますので、あくまでも配下としてお使いください」

「そうなんですか。あ、そういえば、パナメラさんは領地を貰えたようですが、タルガさんは?」

気になって尋ねるが、タルガは首を左右に振った。

「いえ、私は領地は頂いておりません。爵位と、男爵家を立ち上げる為の資金のみとなります」

タルガがそう答えると、パナメラが肩を揺すって笑う。

「ちなみに私は陞爵と報奨金だけでなく領地も貰ったがな」

「もう分かりましたから……あ、どこの領地をもらったんですか?」

浮かれっぱなしのパナメラが領地領地と煩いので、領地について尋ねた。その質問を待ちに待っていたパナメラは、胸元から地図を取り出した。折りたたみにしても、よく胸元に収納できたものだ。驚くべき収納力である。

「ここだ! これが我がパナメラ伯爵領となる! 居城と町並みを大きく改造するつもりだから、協力しろ!」

そう言って、パナメラはイェリネッタ王国の領地を指し示した。