軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【別視点】激闘2

情けない悲鳴をあげながら、盗賊達が次々に堀に落下していく。

後ろを追い立てるアーマードリザードの凶暴な姿に村人達も一歩引きそうになっているが、地面に設置されたバリスタのせいで退がれない。まぁ、バリスタの前面に盾があるため、バリスタからも離れたくないだろう。

素人でも戦場に立てる良い案である。

私がバリスタの有用性について考えている間にも、脅威は目の前に迫っている。

「ひっ!」

最後尾の盗賊が転倒し、悲鳴をあげた。

アーマードリザードは堀の寸前で倒れた盗賊の一人の脚を咥え、軽く振る。

子供の人形のように振り回された盗賊の上半身を、別のアーマードリザードが喰らいついて引っ張った。

脚が千切れ、血が舞う。

「あ、ぐっ」

聞くに堪えない悲鳴と共に、盗賊の体を二頭のアーマードリザードが喰らった。

村人達の恐怖は最高潮だ。頭上で行われた惨劇を見せられた堀の中の盗賊達も同様だろう。

私は息を吸い、大きな声で怒鳴る。

「構えぃ!」

私の叫びに、村人達の体が反射的に動き、バリスタの狙いを合わせる。

目の前に八メートル級の蜥蜴が約四十頭だ。外す方が難しい。

口の端を上げ、号令を発する。

「放て!」

叫ぶと同時に、私は一つ奥のアーマードリザードの顔を狙い、引き金を引いた。

風を切り裂く鋭い音が鳴り響き、バリスタから放たれた鉄の矢は恐ろしい速度で飛ぶ。

頭を軽く上げていたアーマードリザードの眉間に吸い込まれるように飛んだ鉄の矢は、弾かれることなく消えた。

そう、消えたのだ。見間違いかと思い、私は思わず盾の横から顔を出して、再度確認する。

アーマードリザードは額に黒い点を作っただけだ。だが、そのまま横向きに倒れた。そして、その一つ後ろにいたアーマードリザードが絶叫し、身をよじる。

苦悶の声をあげるアーマードリザードの前脚に、その鉄の矢はあった。

矢を外したのか。

そう思ったが、横向きに倒れたアーマードリザードは四肢を痙攣させたまま立ち上がる気配は無い。

そして、もう一体のアーマードリザードは足に刺さった矢を、足を持ち上げることで抜いた。

つまり、矢は硬い前脚を貫通して地面に刺さり、ようやく止まったということだ。

左右を見れば、村人達は誰もが驚愕している。

そう、今の十五ほどのバリスタの斉射で、前面にいたアーマードリザードがバタバタと倒れているのだ。

同じアーマードリザードを狙った者も多いため、最大の戦果とは言えない。だが、それでも想定外の出来事である。

「どうだったー?」

少し焦れた様子のヴァン様の声が響き、私は振り返る。

「ヴァン様! とんでもないものを造られましたな!」

「それ、どっちの意味ー?」

「もちろん、良い意味ですぞ! 今の斉射でアーマードリザード十頭は討ちました!」

私の言葉に、一瞬間を空けて村中から歓声が上がった。

「とはいえ、あと一本ずつしか鉄の矢はありません! 他の場所にあるバリスタから鉄の矢を持ってきてもらいたい!」

そう叫ぶと、一部の村人達が慌てて矢を集めに走りだす。

「余裕があったら、木の矢も試してみてー! 軽いけど、硬さと鋭さは鉄並みだよー!」

木なのに鉄並み?

そう思ったが、ヴァン様が気にしておられるなら試さねばなるまい。

「他の者達は急ぎ鉄の矢を準備し、発射態勢に入れ!」

振り返って指示を出しながら、木の矢をつがえ、弦を引き、準備を調える。

思ったより力はいらないためか、皆も準備はあらかた出来たようだ。

「構えぃ!」

叫ぶと全員が流れるような動きで構えていく。

良いぞ。たった一回の攻撃で皆が自信を持った。自信は精神を前向きにし、行動力を向上させる。

だから、二度目の斉射はもっと狙いが正確に、号令から射る速度も速くなるのだ。

「放て!」

号令を発した直後、私の矢も含め、先程まで様子見していた物見櫓の連中や防壁の角の奴らも加え、合計二十五の矢が同時に発射された。

紛れも無い、一斉射だ。これが今のこの村の最大の攻撃であろう。

鉄の矢は次々にアーマードリザードの頭や背に打ち込まれていく。

まるで土に棒が刺さるような音が連続して聞こえたと思ったら、次の瞬間にはアーマードリザード達の断末魔の叫びが響き渡る。

本当に有り得ない光景だ。

だが、もっと有り得ないことがあった。

それは、私が放った木の矢が、アーマードリザードの額に突き刺さって一頭仕留めたという事実だ。

そう、木の矢が鉄の剣すら弾くアーマードリザードの額を貫いたのだ。流石に自重が無いため鉄の矢ほどの貫通力は無かったが、それでも矢の半ばほどまで突き刺さっている。

それを知って愕然とする一方、指揮官としての私が条件反射のように勝手に口を開いた。

「皆の者! 木の矢を使え! バリスタを構えろ!」

鉄の矢の供給を待たずとも良い。ならば、求められるのは速度と精度のみ。

弦を引き絞り、構え直す。

「構えぃ!」

村人達は慌てている者もいるが、過半数は準備を終えた。

「狙いを定めろ!」

残りの者も準備を整え、狙いを合わせる。

「放て!」

三度目の号令を発した。

残ったアーマードリザードは、僅かに五体。

木の矢は背中や肩に刺されば痛がるだけだが、頭に命中すれば一発だ。

風を切り裂く鋭い音が鳴り響き、二十五の矢が飛んでいく。

大半はアーマードリザードの背中に刺さったが、私の矢を含めてちょうど五本、頭に命中した矢があった。

なんとも拍子抜けするような、圧倒的なまでの大戦果である。

敵は壊滅し、こちらは死傷者どころか、怪我一つしていない。挙句、消費した矢は僅かに六十本弱。

これを団長に報告すれば虚偽の報告として処罰されてもおかしくない。あの冗談の通じないストラダーレに言えば大喧嘩間違い無しだ。

「……ストラダーレよ。ヴァン様は大きくなるぞ。想像出来ないほどにな」

私はそう呟いてから、背後を振り返り、ヴァン様の顔を見る。

こちらを見る期待に満ちた目は、年齢通りの子供のようにしか見えなかった。

それに笑いながら、私は片手を高々と掲げる。

「勝利しました! アーマードリザードは全滅! 我々の勝ちです!」

そう宣言すると、大歓声が村を包んだ。防壁の上の村人達も抱き合って喜んでいる。

そして、ヴァン様はティルとカムシンに抱きつかれながら、嬉しそうに笑っていた。

実は背後でエスパーダが喜ぶヴァン様を見て涙をハンカチで拭っていたが、それを指摘したら怒られるので止めておこう。

【オルト】

鉱石を大量に採掘して上機嫌に村を目指す俺たちだったが、御者を務めているクサラが急に馬車を停めたため、慌てて馬車の前に移動した。

「何かあったか?」

声を掛けるが、クサラの目は村の方向に縫い付けられたように固定されて動かなかった。

見ると、その理由は一目で分かった。

「あ、アーマードリザードだと!?」

剣の通らない厄介な相手だ。しかも、それが数十といる。

「くそ、こんな……!?」

剣を構え直して歯噛みしていた俺は、おかしな点に気付いた。

「お、おい……あのアーマードリザードどもは、なんで横向きになって寝てるんだ?」

「……死んでるんじゃねぇですかい」

クサラの台詞に、斜め後ろにきたプルリエルが唖然とする。

「嘘でしょう? あんな大群、騎士団が二百人がかりで挑んで互角になるかって規模よ?」

プルリエルがそう呟いた直後、村の方向から勝ち鬨らしき大歓声が沸き起こった。

「……おいおい。俺はもうこの一週間で一年分は驚いたぞ」

思わず、そんな言葉が口をついて出た。