軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オーバーテクノロジー

「怪しい筒を発見! 破壊します!」

「はーい!」

そんな報告を受けて、軽く返事をした。だが、頭の中では様々なことが駆け巡っている。高さ六メートル、幅四メートル超はある鋼鉄の城門を破壊したということは相当な衝撃だ。これまでの黒色玉では難しいだろう。激しい爆発や重量物の衝突により扉が変形、もしくは扉と城壁の接続部分が破損して扉が倒れたのか。

どちらにしても、火薬を使った筒状の攻城兵器といえば 大(・) 砲(・) だろう。爆発音とともに城門を壊したことを考えても間違いない。

中央大陸から火薬が伝わってきたようだが、単純にこちら側の国々が遅れているということなのか。

「……もしそうなら、これから中央大陸の大国が攻めてくる可能性が高いよね」

一気に移動範囲が広がった大航海時代などでもそうだが、距離の離れた場所には文明が遅れている国なんてのはいくらでもある。そういう国があれば属国にしたり植民地にしたりと、弱い国が侵略されていくのが世の常であろう。

もしかしたら、既にイェリネッタ王国が実質的に属国となってしまっているのかもしれない。そうなると、イェリネッタ王国は中央大陸の大国の尖兵として全力で攻めてくるだろう。

可能性程度の話でしかないが、もしそうだった場合を考えてムルシアに防衛の基本を教えなくてはならない。

ヴァン君の作った最強兵器の数々も、使い方を誤れば効果は半減するのだ。

そう思って、僕は外の景色を延々と眺めているムルシアに対して口を開いた。

「ムルシア兄さん。丁度良いので、この城塞都市での守り方を説明します」

「え、今かい!?」

驚くムルシアに笑い返しつつ、城壁を指差す。

「分かりやすいでしょう? 今度、先ほどの新兵器に対抗するための対策をします。そうしたら、簡単には城門も突破出来ないようになるでしょう。その間に、バリスタと機械弓部隊の猛攻で防衛するのが基本です。更に、城壁から少し離れた場所で密集している場合はカタパルトを使います。カタパルトは二つしか作ってませんが、必要ならもう少し追加しておきます。あと、今回はカタパルトの弾の種類が刃物盛り沢山一種類でしたが、相手があまりにも強敵だった時には油たっぷり弾もあります。そこに火矢を射れば相手に大打撃を与えることができるでしょう。ただし、とても相手に恨まれます」

「う、うん。それはそうだろうね……魔術を使ったり、騎兵で奇襲なんてしなくて良いのかな?」

「四元素魔術が使える魔術師が育ってませんし、味方の騎士団に被害が出るような戦いは出来るだけしません。もし奇襲するなら城塞都市の城壁を広げてバリスタをいっぱい設置して、四方八方から狙い撃ち出来るようにするくらいですよ」

「なるほど……確かにあのバリスタは驚異的だね。威力だけじゃなくて飛距離も凄いから、魔術師だって簡単には近付けないよね」

ムルシアはそう言ってバリスタを眺め、何度も頷いていた。どうやら、この城塞都市の防衛方法を理解出来たようだ。これで後はムルシア騎士団などを組織できるくらい人員を確保できたら一安心である。

しかし、このままではいけない。もし僕がイェリネッタ王国の軍師だったなら、大砲を大量に揃えて遠距離から砲撃する戦法を選ぶ。そうなった場合はいくら天才のヴァン君が建てた城塞都市とはいえ、陥落する可能性も高い。

そうならないようにするためには、早急なイェリネッタ王国攻略が必要となる。侵略するのではなく、中央大陸までの道のりが確立できれば良いのだ。海岸に向かって一直線に幾つかの大きな要塞や砦、城塞都市を突破すれば辿り着くはずである。

「ムルシア兄さんには頑張ってもらわないと……」

「え? 何か言ったかい?」

様々な想定、計画を頭の中で巡らしていると、無意識に考えていることの一部を口にしていたらしい。ムルシアが目を瞬かせてこちらを振り向いた。それに微笑み、首を左右に振る。

「いや、何でもないですよ」

「……本当かい? 何故か少し不安になったけど……」

ムルシアの苦笑に笑うだけで答えず、戦況確認に戻った。

どうやら新兵器の破壊には成功したらしく、更なる増援は送られていない。一方、ディーが受け持つ小城の方も順調に撃退が出来ている。むしろ、殆どが門にも辿り着いていないくらいである。

城壁付近の兵は徐々に退却しているし、もう勝利は確定的だろう。

そう思った矢先、城壁の方から声が上がる。

「ヴァン様! 怪しい筒がまた現れました!」

「壊してー!」

「はい!」

報告に対して脊髄反射で指示を下す。それに団員が即答してバリスタを射出した。普通なら魔術師が現れてこちらも魔術師で対抗するような場面だが、イェリネッタ王国との戦争ではあまりそういった事態にならない。それも全て、魔術の代わりとなる黒色玉の登場によるものだろう。

もしかしたら、魔術師の違う運用方法を考えているのかもしれないが、一先ずスクーデリア王国との戦いにおいては黒色玉と竜を使った戦争に拘っているように見える。そこにどんな意図があるかは分からないが、今後イェリネッタ王国の領土に深く食い込んでいけば、自ずと分かるだろう。

と、そんなことを考えている内に、城壁内にイェリネッタ王国軍の姿は見当たらなくなった。

「追撃はするな! 小城と櫓、城壁の上から射よ!」

ディーが他の騎士団なら絶対に言わないであろう指示を出している様子を横目に、ムルシアに振り返る。

「……ムルシア兄さん、防衛成功です! さぁ、これからムルシア兄さんの強い騎士団を結成しましょうね!」

そう告げると、ムルシアは目を瞬かせて引き攣った笑みを浮かべたのだった。