軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

砦完成

「急げ! 高さよりも頑丈さだぞ!」

「上からの攻撃に気をつけろ! 壁を越えてくるかもしれんぞ!」

大声でそんな指示や注意が飛び交うのを聞きながら、僕は砦作製に意識を集中させる。予定通り、建材を準備しておいたお陰で砦の建築が数倍早くなった。

ただ、大量の建材があるため、間違いがちらほら見受けられる。

「あ、そっちのは床だよー! そこに敷いておいて!」

「へい!」

「あ、それは一番外側の壁用だよー!」

「了解です!」

ちょこちょこと間違いを指摘しつつ、急いで仮組された建材を接合していく。土の魔術で出来た壁はきちんと修復したので、次は砦としての機能をきちんと作っていこう。

そう思った矢先、壁の向こう側で馬の足音が聞こえてきた。そして、次の瞬間、土の魔術で出来た壁に次々と衝撃と爆発音が鳴り響く。

「うわ、また黒色玉!? どれだけ在庫があるの!? そろそろ売り切れでしょ、普通!」

壁越しとはいえ、何度も聞きたくない爆発音だ。耳が痛いしお腹に響く音の振動は否が応でも恐怖心を植え付けられる。何度も近くで爆発音を聞かされた僕は短気を起こしながら一人で文句を言った。

火薬というものがなんなのか理解している者ですらこうなのだから、仕組みもしらない騎士団の皆は相当の恐怖を感じているだろう。

たとえ魔術のある世界とはいえ、火薬は今後重要な兵器となっていくはずだ。なんとかして、セアト村でも作れないものだろうか。

そんなことを考えながら砦を作っていると、今度は先ほどの爆発とは別の衝撃と音が壁を揺らした。狙い通り、一度壊れた箇所に集中的に攻撃を加えているようだ。

「はっはっは。甘い! 甘いぞ、イェリネッタ王国軍よ! ちなみに僕は甘いクリームパンが食べたい! 無かったらシュークリームをください!」

耳が痛くなって声や音が遠くなり、自分でもよく分からないテンションのまま意味不明な言葉を叫ぶ。これが戦争での極限状態というものだろうか。まともに戦ってもいないのでそう呼んでよいのかは疑問だが。

間の抜けたことを考えつつ、一気に砦の完成を目指した。既に二階部分までは完成しているので、残りは三階や四階にあたる塔の建設だ。

「ディー! 二階に上がるよ!」

「承知!」

声を掛けると、ディーが笑顔で答える。そして、オルトやアーブ、ロウ、カムシンも素早く材料を持って走り出す。

「ウッドブロックを持って走れ!」

「時間との勝負だ!」

階段を登っていると、材料を持っている人たちの方が先に上に上がっていく。いやいや、これでも僕もディーに鍛えられている方なんだけど、なんでそんなに体力があるのかな?

不思議に思いながら屋上部分に上がると、急に視界が失われた。まるで砂嵐の中にでも入ってしまったかのような状況に、思わず身構えて辺りを窺う。

「これは、魔術や黒色玉によって粉塵が舞っているようですな」

僕の前に立ち、ディーが盾を構えてそう言った。その間にも断続的に壁に衝撃が走っている。爆発音ではない為、恐らく魔術による攻撃だろう。

「視界が悪いね。相手の動きが見えないから、急いで形だけでも作ろうか」

ディーの背中を見てホッとしながらそう口にした直後、ディーの体が揺れた。

「ぬぅん……っ!」

腰を落として踏ん張るディー。身体がこちらへズレる。どうやら何かの魔術を盾で防いだらしい。

「ディー!?」

「わっはっはっは! 問題ありませんぞ!」

驚いて名を呼ぶが、本人はいたって元気だった。軽く肩を回して、改めて盾を構えなおしている。足元を見ると拳大ほどの岩の破片がゴロゴロ転がっていた。どうやら大きな岩が飛んできて、それを盾で破壊したらしい。恐ろしい男だ。

改めてディーの異常さを再確認しつつ、砦を作り上げていく。中央と左右の塔はそれぞれ細い窓を付けて、そこから弓矢を構えることが出来るように工夫した。

「ヴァン様! 視界が晴れます!」

ディーから右側の塔が出来上がったタイミングで、報告を受ける。

「ギリギリだったね」

苦笑しつつ、素早く屋上部分に凹凸のある壁を作り上げる。これで、砦の正面部分は完成だ。

「……これは凄いことですぞ」

砦の中に戻ろうとすると、ディーが塔の部分を見上げながら呟いた。

「何の話?」

振り向いて聞き返すと、ディーはハッとしたような顔になってこちらを振り向く。

「いや、この砦のことです。僅かな間に、これだけの砦が築ける……これは、戦争を大きく変えるほどの出来事でしょう。惜しむらくは、これを出来る人物がヴァン様だけであることですな」

そう口にして、ディーは腰に手を当てて笑った。

「いやいや、まだ仕事は終わっていないからね。感想は後にして、急いで防衛用の設備を作るよ!」

「おお、あのバリスタですかな? それは良い。この距離なら相手はたまらんでしょうな」

この上なく機嫌が良さそうなディーとそんな会話をしながら、僕は大慌てで砦の屋上部分にバリスタの設置を行った。連射式バリスタを二つだけだが、まぁ十分だろう。

「盾があるし、大丈夫だよね……ん? お相手さん、言い合いしてる?」

バリスタの動作をチェックしようと思って要塞の方向を見たが、城壁の上で何やら偉い人風の騎士が二人、向き合って口論をしているように見えた。

こんな時に何をしているのか。そう思って首を傾げていると、ディーが隣で肩を揺すって笑う。

「あれはこちらの目的が砦の建設だけだと思い込んでいるのでしょうな。まぁ、まさか砦の内部までしっかり出来ているとは思っていないでしょうが、それにしても能天気な指揮官もいたものです。今は責任の押し付け合いなどしている場合ではないだろうに」

最後は呆れたような顔になってディーが相手の指揮官を辛辣に評した。苦笑しながら首肯を返して、要塞の方に向き直る。

「楽しそうだから申し訳ないけど、こっちもさっさと試験運用を終えて帰りたいからね。バリスタの試験に移ろうか」

そう口にした瞬間、砦の上にセアト村騎士団と冒険者達が揃って上がってきた。

「ヴァン様! 完成ですか?」

カムシンが一番にそう聞いてきた。頷き返して、バリスタを指さす。

「バリスタを試し射ちするから、準備をお願い」

「はい!」

「機械弓部隊にお任せください!」

出番がきたとばかりにヴァン君の超最強機械弓部隊のボーラが前に出た。流石にセアト村騎士団はバリスタに馴れている。素早く準備を完了し、こちらを振り向く。

「準備完了しました!」

ボーラの返事に、僕は頷いてから要塞の方向を見た。

「試し射ちするよー! あ、イェリネッタの人達も気を付けてー! 良いかな? よし、いきまーす!」