軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まぁ、なんてことでしょう。険しい山中に快適な拠点が!

斜面に生えた木々も利用したおかげで、随分と巨大な拠点となった。大きな両開き扉を開くと正面には四人が並んで使えるような広い階段があり、左右には驚くほど広い部屋が広がっている。

まぁ、ピラミッド的な形なので、階段を上がるほど部屋は小さくなっていくのだが。

「陛下。こちらは恐らく五十人ずつで合わせて百人ほど休める広間になっています。上の階に上がるほど狭くなりますが、合計で三百人ほどは休めると思います。手間でなければ、陛下は最上階の個室でゆっくりお休みください」

長く続く階段を見上げて目を瞬かせる陛下にそう声を掛ける。すると、何とも言えない表情でこちらを見た。

「……この僅かな時間で完成した拠点はどこにでも作れるのか? いや、言い方が悪かった。山の斜面や森の中に作れることは分かったが、崖や川の上に作ったり出来るのか?」

「材料と土地の形状次第だと思います。例えば崖の場合は壁面に作る形になるので、最低限の取っ掛かりは欲しいですね。川ならば深すぎないこと、でしょうか。深すぎたら流石に作るのは大変です」

答えると、陛下は腕を組み真剣な顔で唸った。

「……それ以外ならば、拠点は作れるということか。これは、とんでもないな……」

低い声でそんなことを呟く陛下。その背後を隠れるように移動して、パナメラが僕の手を引いた。

こそこそと広間の方へ移動して、パナメラがぐっと顔を寄せてくる。

「少年……君は間違いなく天才だろうが、今回は馬鹿なことをしたぞ。今後も領土の拡大を狙っている陛下の前で、何故こんな魔術を披露する? 敵対する国の喉元に城塞を築くことが出来れば大きく有利となるだろう。それだけじゃなく、少年がいれば様々な場面で築城という手段を用いることが出来る。これは陛下からすれば喉から手が出るほど欲しい一手となるぞ」

ヒソヒソと僕の拠点作りに苦言を呈するパナメラ。僕を利用すれば簡単に爵位を上げることが出来るだろうに、気が強い割に優しいお姉さんである。

「大丈夫ですよ。だって、それだけ有用だと思ってもらえたら、僕が嫌がることはしないでしょう?」

暗に、裏切って敵国につかれてしまったら困るだろう、とパナメラに告げる。領土を広げたいと思っているなら拠点を短期間で作れる僕が敵になったら大いに困ることだろう。陛下の要望には応えられないが、敵対はしないからお目こぼしをしてもらおうという算段である。

成り上がっていこうとしているパナメラとは違い、陛下の期待に沿わない行動をしてしまっているが、僕は出世欲など無い。あるのは平穏で面白おかしい毎日である。パナメラとは考え方が違うから、理解はしてもらえないだろうが。

そう思って顔を上げたが、パナメラは苦笑して肩を竦めるのみであった。

「……なるほど。自身の力を見せつけて意見を通せるようにする、ということか。しかし、中々勇気のある選択だぞ? 陛下は聡明だからそのやり方も通ると思うが、下手な王族を相手にそんな交渉をすれば、言い方を間違えるだけで反逆者とされる。分かるか?」

パナメラにそう言われて、すぐに神妙な顔を作る。これは、パナメラの警告だろう。表情や言葉のニュアンスで何かを感じることが出来た。

どうやら、少し調子に乗ってしまったらしい。正直、バリスタで矢をばら撒きながら逃げれば十分亡命も可能だと思っているが、せっかくのパナメラの厚意を無駄にしてはいけない。

「……分かりました。気をつけます」

答えて頭を下げる。

そこへ、陛下が含みのある笑みを浮かべて歩いてきた。

「……話は終わったか?」

「もしかして、聞こえてました?」

首を傾げながら笑みを返す。その反応に陛下は肩を揺すってくつくつと笑った。

「いや、聞こえておらん……と、いうことにしておいてやろうではないか。はっはっは。まったく、大した度胸だ」

陛下はそう言って笑うと、一人で先に階段を登って上の階へ向かっていってしまった。どうやら、国王軽視とも取られかねない発言を聞かなかった事にしてくれるらしい。流石は陛下。器が大きい。

「大丈夫だったみたいですね」

パナメラを振り返ると、呆れた顔をされてしまった。

「……少年が四属性の魔術師だったとしても、戦争で十分な功績を残しそうだな」

「あはは。そんな前線に出そうな魔術適性じゃなくて良かったですよ。それじゃあ、僕は外で休みますから」

そう言って出入り口に向かうと、パナメラは目を瞬かせる。

「なんだ。こんなところで遠慮しているのか? 少年の基準が分からん。自分で作ったのだから、堂々と一室使って休めば良いだろう?」

「あ、いえ、自分の拠点は今から作ります。まだ明るいですし」