軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

え、僕が行くの?

横に紅茶を置き、パンケーキ的お菓子も準備。

その状態で渡される鉄の塊を手に武器を作成する。ドワーフの炉がまだまだ完全に稼働しているわけではない状況で、一番の武器生産工場は僕である。お茶とお菓子を口にしつつ、優雅に武器を作っていく所存だ。

「あ、ヴァン様。そろそろ今日の依頼分である剣三十、槍十、盾二十が出来上がります」

「もうそんなに作ったかな? よし、終わったら個人的に機械弓を改造してみよっと」

「ヴァン様。連続でそんなに働いては疲れてしまいますよ。先に一度銭湯で汗を流してはいかがですか?」

「あ、お風呂良いね! 冷たい果実水もお願い!」

「はい、もちろんです!」

ティル、カムシンと一緒に和やかに会話しながら武具製作を続ける。笑いの絶えない幸せな村の風景だ。こんな日々が続いてくれたら嬉しい。

と、そんな平和な昼下がりに望まぬ乱入者が現れる。息も絶え絶えといった様子の馬に乗り、汗だくになった騎士のおじさんだ。急にシリアスな世界に投げ込まれたかのような錯覚を受ける。僕が冒険者の街で作業をしていたこともそうだが、騎士のマントに王国軍の紋章が描かれていたことが単独で僕を訪ねることが出来た理由だろう。

「ヴァ、ヴァン、様……!」

息も絶え絶えの馬に乗ったおじさんは、息も絶え絶えな様子で僕の名を呼んだ。

「だ、大丈夫ですか? 行軍で何か問題が……?」

頑張って、シリアスな顔を作って返事をする。ダメだ。気持ちは銭湯に入って果実水を飲みたいモードになってしまっている。あまり長時間のシリアスは耐えられそうにない。

そんなことを思っていると、おじさんは馬から降りて、片膝を突いた。

「ご歓談中のところ、大変申し訳ありませぬ! 陛下より、急ぎ仮の拠点で休憩をしている陛下の下へ来てほしいと依頼が……!」

「えー……今から? もしかして、これから? ちょっと準備とか色々あって、すぐには出られないかもしれないけど……」

面倒臭さ極まってしまい、思わずごねてしまった。本来なら、国王からの勅命などイエス以外の返答はありえない。その証拠に、陛下の命令を伝えに来た騎士のおじさんは目を剥いて驚いている。

カムシンとティルが心配そうな顔をしているし、出来たら断りたい。

しかし、そうもいかないだろう。

「あ、あの……トラブルが発生し、行軍が止まってしまっているのですが……」

「冗談です。急いで用意をしてきます。この街一番の宿を用意するので、そちらでお休みください」

苦笑しつつそう告げると、騎士はホッとしたように肩の力を抜いた。

「あ、ちなみに原因は分かりますか?」

「詳しくは分かりませんが、どうやら冒険者と一部の騎士が衝突してしまったらしく……」

「え? まさかオルトさん達じゃないよね? 騎士と揉めたらマズいんだけど……」

おじさんの報告に思わず生返事をしてしまう。オルト達ならば騎士を相手に下手なことはしないだろう。恐らく、別の冒険者たちに違いない。

「カムシン。騎士の方をクサラホテルに案内して。料金は後で払うって言っておいてね」

「はい! 分かりました!」

カムシンに騎士のおじさんの世話をお願いして、次にティルへ顔を向ける。

「ティルはディーとエスパーダにこの事を報告してきて。セアト村と冒険者の街を守るのに人員が何人必要か確認しよう。後は、魔獣が多い山道を通るから装甲馬車を準備しないとね。移動の間の食料とかもかな」

「わ、分かりました!」

僕の指示に、ティルが慌てて駆け出した。

さて、面倒なことになった。まさか、またも最前線に行くことになるとは……敵の騎士団とぶつかる戦場ではないものの、身の危険はビシバシ感じる。

ああ、平和に生きたい。

「平和に生きたい」

「は? なんですかな?」

「いや、何でもないよ」

騎士団の集合と物資の準備をしている間に、思わず心の声が口から出たようだ。隣に立つディーが首を傾げる。

なんだかんだ、魔獣の襲撃によく晒されるセアト村の騎士団は集合して隊列を組むまでの時間が異常に早い。僕が独り言を呟いている内にすぐに形になった。よく訓練された消防隊員の出動のようだ。

「ヴァン様。騎士団の召集が完了しました。セアト村騎士団、エスパーダ騎士団全員集合しております」

ディーが代表して報告をして騎士団の面々に向き直る。いやぁ、素早い。準備も早いが点呼も早い。我が騎士団は素晴らしいじゃないか。

一人満足しながら皆を見回し、口を開く。

「皆ー! ウルフスブルク山脈に行きたいかー!」

冗談がてら適当な掛け声をかけてみる。何人かがよく分からないまま「うぉー」なんて返事をしている。良いリアクションだ。今返事をした者は一階級昇進させよう。冗談だけど。

「なんと、陛下から勅命が下りました! どうやら、行軍でトラブルが発生したようです! 仕方ないので、手助けにいきたいと思います! 皆、オラに力を分けてくれ!」

少しでもテンションを上げていこうと変なノリで檄を飛ばす。律儀に皆「うぉー」とテンションを合わせてくれた。若干名戸惑いを隠せない者もいるが、仕方がない。後日、僕が自ら教育をしてあげようじゃないか。

そんなことを思いつつ、咳払いをして顔を上げる。

「では、半数をセアト村及び冒険者の街の防衛に残し、半数は僕と一緒にウルフスブルグ山脈へ向かいます! 先頭には冒険者の皆さん、お願いします! 二列目と最後尾は装甲馬車と歩兵部隊! 中央には機械弓部隊と騎兵部隊! 騎士団を率いるのはディー騎士団長!」

「は!」

最終確認も兼ねて隊列と組織を通達。ディーが怒鳴るように返事をすると、他の騎士団員達もそれに倣った。

「よーし! それじゃ、行ってみようか!」

片手を挙げて出陣を告げると、大きな返事があり行軍を開始する。

さぁ、色々と準備もしたし、最大限安全に気をつけて山に入るとしようか。