軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

73 新たな転生者の情報と迷宮の宝箱

四十一階層に上がった俺達は驚いた。まず迷宮内の温度が下がっていたのだ。

そのため昨日作らせようとした耐熱効果のある魔道具は必要なくなり、魔石を無駄に使わず済んだ。

直ぐに必要になるかも知れない事態を想定して、念の為ポーラとドランに魔石を預けていたが、どうやら魔石はゴーレム様に使われることになりそうだ。

「それでケフィン隊が俺を護衛することは分かった。俺はちょっと前から聞きたかったんだが、冒険者ギルドで消えたよな? あれはどうやったんだ?」

俺はマンガ世界の忍術を決めた変わり身の術がどうしても気になっていたのだ。

「……あれは忍術と言われるものだそうです」

ここでもまた転生者?探るか。

「使用しているのに何故疑問系なんだ? その忍術っていうのはスキルなのか?」

「はい。前にイエニスに辿り着いた男がいて、そいつはボロボロで金も持っていなかった。だが足音を消して動いたり、何も無いところで何かがあるようにみせたり、人族の男だったはずなのに獣人に化けたりしたんだ」

徐々にスキルレベルが上がっていったんだろうな。

「そいつの能力があれば仕事もしやすくなると思って組織で雇った。それから忍術を教わっていたんだが、ある日この迷宮で死んだ」

「?! どういうことだ?」

「三十階層にいた奴等のことは話したが、多分奴等の仕業だと思う」

「迷宮で死んでも死体は残らないかも知れないが、生きている可能性だってあるだろう?」

「いや、一緒に探索していた奴等も二人以外は戻って来なかったし、その二人も帰ってきた翌日に死んだ。

そいつらが死ぬ間際に殺されたと言っていたから間違いない」

……まだ転生者とは決まってないだろう。落ち着け。まさか見ず知らずの人物が死んだと聞いて、ここまで動揺するとは思わなかったぞ。

「……それはいつ頃の話だ? それとそいつの名前は?」

「今から二年前ぐらいだな。S級様と同じぐらいの歳だった。嘘かどうかはわからないが名前はハットリと名乗っていた」

……まぁ考えていても仕方ないか。それにしても忍術か…俺も覚えられるかな?

「それって俺も覚えられるか?」

「……ああ、でも教えるなら頼みを聞いて欲しい。奴隷の分際で逸脱しているのは分かっているがこの通りだ」

「一応聞いてはやる。だから戦闘体勢を解くな。危ないから回りを警戒しながら話せ」

「……すみません。出来ればS級様の旅に連れて行って欲しい。一生奴隷の身分でも構わない」

ケフィンはそう言ってから頭を再度下げて前を向いた。

「……俺が旅立つのはまだまだ先だ。まぁ考えておく」

ケフィンは耳がピンっと立っているから緊張しているのか、嬉しいのか分からなかったが気合は入ったようだった。

その後にファイアベアが二体とファイアサーベルタイガーが現れたが、ポーラがゴーレムで二体のファイアベアを押さえつけている間に、犯罪奴隷七人がファイアサーベルタイガーに連携特攻を仕掛けて傷を負いながらも倒した。

ファイアベア二体をポーラが操る巨大ゴーレムが、片腕ずつにファイアベアを抱えてベアハッグで締め上げていき魔石へと変えた。

その親父ギャグのような仕打ちに、ポーラの性格がだんだん読めてきた気がした。が、まずは回復と労いの言葉をケフィン達に掛けることにした。

「四十階層でも十分な連携だな」

エリアミドルヒールで完全回復した彼らに、エリアバリアを再度掛け直してそう言うと微妙な顔をされたが、一言だけケフィンが言った。

「……頑張る」

魔石はファイアベアの二つをポーラに持たせてファイアタイガーサーベルの魔石は俺が魔法袋にしまった。

その後に何度かの分岐を歩きながら、五百メートル四方に拡がった四十一層を二時間掛けて探索を終えた。

「どうだ? 探索はまだいけるか?」

俺の問いにライオネル、ケティ、ケフィンがいけると判断した。

確かに探索隊はかすり傷だけだったから大丈夫なのだろう。

俺達は四十二階層に足を踏み入れ、ここで初めて宝箱が現れた。

四十二階層の探索終了間際にケティ隊が発見した宝箱を発見したと声を掛けてきた。

「マスター、宝箱があったニャ! 開けて欲しいニャ」

「何で俺が開けるんだ?」

するとケティ隊のバーデルが疑問に答えてくれた。

「迷宮の宝は開ける人物によって変わります。罠は解除しなければいけませんが、中身は開ける人の運なのです」

「初めて知ったよ。じゃあライオネル隊が合流したら言ってみよう」

十分後にライオネル達と合流して、ケティ隊が見つけた宝箱のある部屋まで行き宝箱を開いた。

そして出てきたのは……?

「……これ何?」

それは透明ではない緋色の玉だった。

一応浄化魔法を掛けてから持ち上げたり、魔力を流したりしてみたのだが、一向に何なのかは分からなかった。

ドワーフコンビは目を見開いたまま固まっていたが、直ぐには使えない物と判断して魔法袋にしまった。

「残念ながら魔法書でも装備でもありませんでしたね。そうだ。丁度良いですし、少し早めのお昼にしましょう」

そう告げて昼食を取ることにした。食事中にあれが何かをドランとポーラに聞いてみると俺の口元が思わずニヤける物だった。

四十三階層、四十四階層まで来ても一向に誰とも会わなかった事でライオネルが一言呟いた。

「……マズいかも知れん」

近くにいた俺はその呟きを拾ってしまった

「何がマズいんだ? 攻略が難しいということか? それとも強い敵でも現れるのか?」

ライオネルは顔を横に振って答えた。

「……最悪な状況を考えていたのです。単純に追っているなら良いのですが、下手をすればパーティが全滅している可能性も……」

「……どういうことだ?」

「今日が三日目の攻略であまりにも盲目的に進みすぎている。四十階層という未知の領域の進み方ではない。それに……あのシャーザとその側近を含めてそこまでの戦闘力があるのかがそもそも疑問なのです」

「もしかして俺が誘導してしまっただけで、シャーザはいないのか?」

「いや、いるでしょう。迷宮の入り口側で幾つもの馬の足跡を確認してます。ジャスアン殿に聞いたところ馬で迷宮に来る冒険者はいないのだとか。そのことからいるとは思うが……」

「……なら、四十階層に戻ろう。一時間もあれば戻れる距離だろ? ここで休むのと四十階層で休むのとでは大きな違いがあるだろう?」

確かに助けに向かうことも選択肢の一つだが、俺が大事なのはそちらではない。

俺の命とライオネル達の命だからな。

へんな感じがするけど皆の命と天秤にかけてまで救いに向かうのは違うと思った。

結局皆は俺の従いながら四十階層のボス部屋を占拠して、口数の少ないまま明日の探索へ向けての英気を養うのだった。

翌日の起床はみんな早かった。

俺は食事を取りながら、彼らが冒険者の為にこれほど考えて動こうとしていることに、少し胸が熱くなった。

「四十五階層までは一団で行くからと言って、気を抜かないように行くぞ!」

『はい』

一時間で昨日の引き返したポイントまで来たが、やはり誰とも会わなかった。

四十五、四十六、四十七階を探索し終えてもまだジャスアン殿達の姿は見えなかった。

「結局今日の収穫はあの腕輪だけか」

先程まで探索していた四十七階層で、二度目の宝箱を発見し、開けて出てきたのは腕輪だったが、結局何なのかはわからないので魔法袋の中にしまってある。

以前鑑定スキルを取ろうとしたら100SP だったのでサクッと諦めた。

「皆に相談したい。あと一階層行くか?それとも明日に出直すか?」

「……全体的に体力的も精神的も疲れは無さそうです」

「お腹もまだ空いてないニャ」

「S級様、俺達は二日三日寝なくても平気だ。五十階層のボス前はさすがに遠慮したいが、それまでだったら行ける」

ライオネル、ケティ、ケフィンの声が続くと他も問題無さそうだった。

「分かった。じゃあ進もう。但し何度も言うが安全第一だ」

こうして俺たちは四十八階層へと進み、漸く先行していた隊を発見した。