軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70 ドワーフコンビの戦闘力

総勢八十名近くまで膨れ上がった隊は、いくつのグループに分かれて行動することになった。

まずジャスアン殿の攻略に向けて進むグループ、次に三十階層のボス部屋前で拠点を作るグループ、そして外で待機するグループ、最後に俺達一階層から順番に進んで行くグループだ。

昨日鳥獣人さんから写させてもらった地図が信用で出来ない訳ではなく、何処かに見落としがあるかも知れないと思ったからだ………三割だけ。

試練の迷宮は一人で探索していたこともあり、一階層を調べるだけでもかなりの時間を要していた。

今回は人海戦術で地図の精度を上げるのと魔石を確保することが俺達の目的だ。

ポーラとドランに俺が作りたいモノに対してどれぐらいの魔石が必要なのかを聞いたところ、火属性の魔石だけでも相当の数が必要になると分かったからだ。

「あれが迷宮の入り口だ」

ジャスアン殿のその声に俺は考え事を止め、前方を見ると山間の崖下に入り口があった。俺はそこであることが気になって聞いた。

「この迷宮は下るのではなくて、上がるんですか?」

「そうである。それに上がる度に暑くなるのがまた厄介だ」

「……昨日はその情報……ありませんでしたよね?」

「そうであったか? それよりも本当に先行してもいいのか?」

ここで怒れば空気が悪くなるし、損失になる。

そう思って会話を続ける。

「先行していただいて構いません。四十階層の主部屋で休憩したり、罠に掛からないよう慎重に進んでいただくか、四十階層前後でレベル上げをしているかについての判断はジャスアン殿にお任せします」

「承知した。早めにルシエル殿達が追いつくことを期待している」

「まぁ頑張ります」

そんな会話をして直ぐに、迷宮入り口にあるベースキャンプの設置場所に到着した。

「諸君、今回は下からルシエル殿が追ってきてくれる。石化しようと猛毒にかかろうと混乱に陥ろうと助かる見込みは高い。目標はシャーザ達を捕らえることだが、機会があれば迷宮を攻略するぞ」

ジャスアン殿が拳を突き上げて宣言した。

次の瞬間『おおっ!』と荒々しい雄叫び辺りに響いた。

俺にも挨拶をして欲しいと言われたが謹んで辞退させてもらった。

「それでは先行させていただく。また後日」

「はい。御武運を」

俺は彼ら見送ってから、フォレノワール達のところへ向かい、浄化魔法を掛けてやった。

その後に首を優しく撫でるとフォレノワールの眼が頑張れ!っと、言っている気がした。

「頑張ってくるよ」

俺はそう言ってからフォレノワール達の事を残る獣人達にお願いした。

俺以外のパーティーは全員奴隷。

異世界モノの小説では良くあるパターンだけど……何かが違う! そう思いながらも俺は彼らに宣言した。

「治せる怪我、状態異常なら絶対に救ってみせる。だから無理はしても無謀な行動は絶対に止めろ! これは命令だ」

全員の顔を見渡して俺のモットーを彼らに押し付けることにした。

「優先事項を伝える。1、死なないこと。2、魔石の確保。3、シャーザの確保。 4……出来ればしたくないが迷宮踏破だ。全員生きて帰るぞ、いいな」

「おおっ!」「ニャ」「はっ」「はい」そんな色々な返事が混ざり、締まらないなぁと苦笑しながら迷宮に進んだ。

「やっぱり結構明るいんだな」

俺がそう呟くとドランが口を開く。

「迷宮はコアを取れば活動を停止して、薄暗くなると言われている。心臓のようなものじゃ」

「コアを取らないと?」

「迷宮の最後の主を倒してか? 確か長い年月を掛けて戻ろうとする、そう文献に書いてあったと思う」

試練の迷宮もいずれ元に戻っていくのか? そう考えたものの迷宮で考えることではないと切り替えて指示を出す。

「ライオネル達は俺の周辺で待機、ケフィン隊、ヤルボ隊、バーデル隊は地図に示された通りのルートを進み、魔物を殲滅しながら地図の整合性を確かめ、上がる階段の前に集合してくれ」

「「「はい」」」

命令は全てはいと返事をさせることにした。彼らには昨日製図した地図をさらに複写したものを渡してある。

自分の分を合わせて四セット作った俺の腕は……何ともなっていないが疲れた。

三隊は俺がエリアバリアを掛けたら、あらかじめ決めたルートを進んで行った。

「ルシエル殿、我らの出番は?」

ライオネルが心配そうに聞いてきたので、ちゃんと答えることにした。

「魔物の数が増えれば戦ってもらうし、三十階層より先は空白地帯も多いから出番は直ぐに来るさ。じゃあ俺達も行こう。魔物が出たら任せるぞ」

「はっ」

ライオネルの嬉しそうに先頭を歩いていく姿をみて、この戦闘狂の部下だった人たちは大変であったろうと同情した。

俺達が歩く道は既に先に出たグループが殲滅していたので、魔物がいないことに気がついたライオネルのガッカリとした感じには笑いがこみ上げたのは内緒だ。

十分もしないうちに三隊と合流し、二階層に上がりながら出た魔物について聞く。

「情報通りだったか?」

「はい。地図は問題なく、魔物もレッドラットでした」

襲撃者のリーダーであったケフィンがそう答えたが、思っていた以上に彼らは優秀だった。

俺は何故彼らが……そういう気持ちや考えが浮かんできたが、人が生まれ育つ環境や生活が平等では無い現実を知っている為に口を噤んだ。

一階層毎にエリアバリアを発動しなくても良さそうなので、ここからは一階層毎に一つのパーティーへエリアバリアを張りながら進んで行き、九十分前後で十階層のボス部屋に着いた。

「情報ではレッドリザードマンが出てくるはずだったけど、今回はレッドスネーク、レッドバッド、レッドラットだけみたいだから一気に殲滅していこう」

ケフィン隊が扉を開けて俺達も入ると、レッドスネークを中心とした魔物の群れが現れたが、ものの数分で次の階層へ続く扉が開いた。

戦評は各々が強くて、殲滅スピードが高かったこと、天井にぶら下がるレッドバッドへナーリアが短剣を投擲して次々と倒していたことが印象的だった。

「ナーリアは中距離がメインなのか?」

「いえ、これしきただ短剣を投げているだけに過ぎません。まだまだ上の方がいらっしゃいますから」

ナーリアはそう笑っていた。

その後も苦戦することなく進み二十階層のボス部屋前で俺は皆に告げる。

「この主部屋の敵を殲滅したら、食事と休憩を挟むから気合を入れろ」

『おおっ!』

随分と雰囲気が良くなってきた。ライオネルやケティも徐々に魔物と戦えることが増えてきて、楽しそうにしていた。

ただドワーフコンビは二人だけで色々話している状態だった。

今後どうなるか分からないから、戦闘もするように伝えると了承した。

そして扉を開けて出てきたのはレッドオークとレッドウルフだったが、ドランが地面を触りポーラが構えると五メートル級のゴーレムが出現した。

完全にスーパーロボットのそのゴーレムを見て俺達が驚いていると、なんとゴーレムが飛んでレッドオークを蹴り飛ばし、転がったレッドオークに追撃のジャンピングエルボーを放つとレッドオークは魔石へと変わった。

レッドウルフ達はケティが知らぬ間に倒していたが、あまりにゴーレムのインパクト強く、俺達は唖然とするしかなかった。

ドワーフコンビはハイタッチしながら満足そうにしていた。

「……あれって普通なのか?」

「……あんなに滑らかに動くゴーレムを私は見たことがない」

ライオネルも非常に驚いていた。

「ドラン、ポーラあれはどうやって、いや、あれがゴーレムなのか?」

「お爺と合作」

「俺は制御が出来ないから上モノを作ってポーラが制御する。だがポーラがしている腕輪の魔力が少ないと制御できるゴーレムの大きさも変わってくる」

そう言いながら魔石を強請るようにチラッチラッとこちらを窺ってくる。

「……あれを出すのにいくつ魔石が必要なんだ? 正直に答えろ。これは命令だ」

ドワーフコンビは悔しそうにしながらもポーラが口を開いた。

「ここで手に入れる魔石なら二十個を合成させれば大丈夫。でも時間を延ばすには少しずつ多くしないと駄目」

いつも問題ばかりを起こすが、製作面でも戦闘面でも二人で力を合わせると、このドワーフコンビはとんでもないな。

俺はそう思いながらゴーレム用の魔石として二人に命令し渡した。

二人は不満そうにしていたが、次の一言でやる気を漲らせた。

「ここは遊び場じゃない。言われたことをしっかりとやれば迷宮探索が終了した後、製作面で使う魔石の確保は約束する。だから命令厳守で頑張ってくれ」

「任せてくれ」

「頑張る」

俺は頷きながら部屋を浄化して、食事の支度をナーリアと始めるのだった。