軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

60 治癒士ギルドの地下施設

食事を摂ってからだと、部屋を片付けるのは面倒と思い、先に各部屋へベッドを置いていく。

二階の部屋は十畳程のスペースがあるために、ベッドを二台置いても寝起きするだけの空間なので十分な広さだと言える。

部下さん達にお礼を言われながら、キッチンへ向かう。

キッチンにはナーリアと何故かポーラが居たが、まずは先程ざっと浄化魔法を掛けただけのキッチンに、今回は隅々まで浄化魔法を掛けて衛生化に努める。

調理に関する魔道具関連は、キッチン周りに全て設置してあった。

これは買い物に出かける際にお願いしていたので、後は調理していくだけなのだが、先程から気になっていることがあった。

「ポーラはさっきから何をしているんだ?」

ポーラがさっきから魔道具を触り、使いながら、今度は持ち上げたりしていたのだ。

「魔道具興味ある。お爺の工房にいるときは良く作ってた」

魔道具の製作が出来るのか? 俺は魔法袋から魔石を一山ほど取り出すと浄化を掛けた。

「そっか。だけどここは今から調理で使うから、ここに居ると邪魔になってしまう。ドランも下にいるから、危険なことはしないと誓えばこれを渡そう」

ポーラは高速に頷き、嬉しそうに魔石を抱えて地下へ下りていった。

「さてと…ナーリア、今から食事を作るんだけど、その前にライオネルって結構な量を食べる?」

ナーリアは少し考える素振りを見せながら答えた。

「そうですね。普通の方よりも召し上がると思います」

そうだろうな……俺は考えながら献立を決めた。

「カリーと米とパンに温サラダにしよう。とりあえず人数分の倍の量を作るか。ナーリアはキラキラ君で野菜を洗って、スパスパ君の皮を剥くモードで野菜を剥き終えたら、次はみじん切りモードにしてもらう。一回見せよう」

野菜をキラキラ君で綺麗にしたら、スパスパ君に入れて皮を剥く。

「そうだ。この皮はこっちの乾燥肥料君に入れて、肥料にするから全部の皮を入れたら起動してね」

「あの?この肥料は何故作るのですか?」

「いつか畑仕事をしたいんだ。その時にこの肥料を痩せた土地に撒いて耕運すれば、きっと地力が少しは回復するからね。些細な夢だよ」

俺は笑いながらナーリアに答えて、魔法袋からいくつかの寸胴、野菜やスパイス、肉を取り出して下処理をしていくことにした。

浄水器から水を寸胴に入れて、魔導コンロで沸騰させたところに肉を入れる。

魔獣の肉は灰汁が多く血の臭いも強いためにそのまま使用すると料理が血生臭くなってしまうと、グルガーさんやグランツさんに教わり、この工程だけは絶対に飛ばすなとアドバイスを受けていたのだ。

二十分程肉を茹でたら取り出して、肉へ細かく包丁を入れてハーブなどをすり込んでおく。

その間に野菜を煮込みながら、カリーのスパイスを調合し、野菜から出る灰汁を取ったら、肉とスパイスを入れて弱火で煮込み続ける。

これを五回程繰り返していく。余れば魔法袋へ入れれば良いのだから、作りすぎても困ることは無い。

あとはパンと米を準備するだけでいい。

「ナーリア、まずは二階にいる神官騎士と治癒士達を呼んできてくれ」

「はい」

彼らの食事が終われば、俺と外にいる二人の神官騎士、購入した奴隷のライオネル達を先に食べさせる。

犯罪奴隷達には、その光景を見せながら喋ることを禁じておいた。

そして俺達は食べ終えた。

「君達の分も用意している。本日最後の命令は食後にしっかりと外の警備することだ。時間としては明日の朝までだ。それが終われば朝食を摂らせる。朝食後から八時間の睡眠を含む休憩時間を与える。警備中以外は原則治癒士ギルドから外へ出ることは禁止とする。治癒士ギルド関係に不利益な情報や、自分の近況報告などを書いたものを捨てるなど、そのような行為も禁止とする。警備に慣れてくれば、時間をずらして勤務してもらう。そうすれば今よりも楽な仕事になるだろう。諸君らが誠実であれば、食事や部屋の待遇をこのままにすることを約束しよう。が、裏切ればこれを飲ませるから覚悟するように」

俺が物体Xを出すと全員が震え出した?あれ?これって獣人さんにとって、それ程に嫌なものなのか?俺はそのことを疑問に持ちながら、食事の許可を出した。味覚に合ったのか、全員が完食していた。

「ライオネルとケティは彼らの監視を交代で頼む。そのうち神官騎士も彼らの監視に入れる予定だが、長旅だったから今日ぐらいはさすがに休ませてやりたいのだ」

「私達は奴隷なのだから、そこまで気を使われるな」

「そうニャ。任せるニャ」

「頼んだ」

二人も犯罪奴隷達と同じように裏切らないと誓ってもらっているが、出来るだけ彼らからも信用をしてもらって、俺も彼らが信用出来る…そんな関係が築ければと思った。

結局十人前程の量が残ったカリーは魔法袋へ詰めた。

ここからまた朝食の準備を始めた俺は、ナーリアに彼らの夜食を作りたいなら作ってもいいと許可出した。

そして朝食の準備を終えた俺は先に自室へ戻った。

「思っていた以上に、自分の時間が取れなくなってきているなぁ」

そんな当たり前のことを呟きながら、教皇様へ魔通玉で連絡を取る為に、目を瞑り念じた。すると頭に声が響いてきた。

《こちらフルーナじゃ。ルシエル、無事にイエニスに到着したのじゃな?》

教皇様の声だった。俺はイエニスの治癒士ギルドに無事着いたことや、今日の出来事を事細かに話しながら、今後の対策や治癒士ギルドとしての方向性を教皇様と相談し、明日も連絡することを義務付けられながら、魔通玉を切った。

その後に魔力の鍛錬をしてから就寝した。

どうやら俺も旅で疲れが溜まっていたのか直ぐに夢の世界だった。

翌日、いつものように目を覚ます……直前にドォーンと、ドデカイ音で目を覚まさせられた。

「襲撃?!」

俺は急いでフル装備に変身すると部屋を出た。

同じように各部屋から、部下さん達も出てくる。

「状況がわからないから全員一旦集まってくれ!」

俺は直ぐにエリアバリアを発動してから指示を出していく。

「治癒士達は一階の受付で待機。神官騎士達は外の確認後にライオネル達奴隷と合流して状況確認し、報告に戻れ!戦闘なら治癒士ギルドに立て篭もって応戦するから全員で引け!」

『はっ!』

寝起きだというのに彼らはキビキビと動き出した。

「ドランが居れば、地下からも脱出が出来るか」

俺は口に出しながら階段を下りて、地下へと向かった。

地下に下りた俺を待っていたのは驚くべき光景だった。

「あ、ルシエル殿うるさかったか?」

そう暢気に聞いてきたのはドランだった。

その彼の声は、随分と下から聞こえてきのたが、俺には彼の声が聞こえていなかった。

俺は拡がった地下一階を見渡しながら、ひらけた中央に行ってみた。そして地下の全容を把握した。

昨日、間違いなく地下にある部屋は三つだけだった。

買い物から戻ったら、今度は面積が六倍程に広がり、一階並みに面積が広くなっていた。

そして現在は、中央に何故か魔導エレベーターと階段が設置されていて、少なくとも地下が更に四階層増えていたのだ。

「お~い、ルシエル殿? 一応地下五階まで作り終わったぞ。地下五階は不埒ものを閉じ込めておく牢をイメージして作った。次に地下四階はライオネル殿にルシエル殿を鍛える訓練場が欲しいと言われたから訓練場を作った。地下三階は鍛冶場と魔道具工房を護衛の武器が必要になるだろうからと作らせて貰った。地下二階に奴隷の部屋を移して、地下一階は天井を高くして、馬達が外の厩舎からここに下りて運動が出来る様にしてみた。ナーリアから聞いたのじゃが、ルシエル殿が畑がしたいと聞いたから併せて畑も作ってみた。これで魔石が空になってしまったから、調整はこれからだ」

ドランはそう清々しそうに語った。その背中にはポーラが満足げな顔で笑って寝ていた。

俺は必死に頭を働かせる。

…襲撃ではなかった。

それは良かった。

あれ?俺って昨日、拡張を少しずつ詰めようって、ドランに言ってなかったっけ?いや、もうそれはどうでも良いが……ドワーフってこんなに凄いのか?まず俺は疑問から聞くことにした。

「……今朝の音は?」

「あれは魔導エレベーターの止まる場所をポーラが誤って直撃させてしまった音じゃ。この通り修正を終えたら寝てしまった」

ポーラが魔導エレベーターって、それも問題だろ!ポーラを見ながら笑う祖父の構図が出来ているが聞くべきことは聞く。

「ポーラって、魔導エレベーターを作れたんですか?」

「凄いじゃろ!小さい時から鎚は振らんが、魔道具ばっかり弄る子だったから、魔石を合成出来るんじゃぞ!」

あ、孫自慢が始まった。だけどポーラも凄いんだな……。

「ちなみにドワーフって、皆がこれだけの仕事が出来るんですか?」

「そんな訳がないだろう。ここまでの仕事が出来るのは、グランド兄貴か俺ぐらいだ」

グランド兄貴?

「そのグランドさんは、お兄さん何ですか?」

「いや、兄弟子だ」

なるほど。彼の弟弟子でしたか……。

「永世名工鍛冶士のグランドさんですか?」

「おおっ!兄貴を知っていたか」

凄く嬉しそうな彼をどう注意すればいいか分からなかったが、一言だけ言っておくことにした。

「まずは拡張お疲れ様でした。が、これ以上は管理出来なくなるので、大きくしないでください」

「安心してくれ。あとは手直しするだけだ」

それから外に異常がなかったことを神官騎士達が報告に来たが、俺と同じように固まってしまったのは言うまでも無い。

ポーラを部屋で寝かせたドランは順番に各階を解説してくれた。

久しぶりに魔道エレベーターを使う……ことはしなかった。さすがにまだ危なそうだからだ。そして階段を下りて地下五階までやってきた。

「ここは先程も説明したが、囚人を入れておく牢だ。まぁ念の為に作ってあるだけで、倉庫なんかとして使うことも出来ると思う」

そう言う割にはしっかりと作られた鉄格子。俺が押しても引いてもビクともしない頑丈なものだった。

「それにしても十部屋って多くないか?」

「奴隷に出来ないお偉いさんが来る様な気がしてな」

「不吉なことを言わないでくださいよ」

「うむ」

あながち冗談でもない、そんな雰囲気をドランが作ったまま階段を上がる。

「地下四階のこの訓練場は壁に魔法が当たっても、相当な威力じゃなければ傷は付かないポーラとの合作じゃ」

四~五十メートル四方に広がるその空間は、冒険者ギルドよりは小さいが、訓練するには十分な広さがあった。

「確かに鍛えてくれとは言ったけど……」

ブロド師匠と同等の戦闘狂だと認識して地下三階へ

「これは許可を取ろうと思っていたんじゃ。ただ……」

ドランの声は小さくなっていた。それもその筈、本格的な工房が二つ。

それも〔ドラン鍛冶武具工房〕〔ポーラ魔具工房〕と札が掛けられていて、明らかに他の層よりも丁寧に作られていた。

「じゃあ地下二階へ」

「ルシエル殿!ちょっと持ってくれ」

こうして彼の工房に引きずり込まれて、犯罪奴隷になったもの達の装備や要らなくなった装備、さらにグランド氏が作った聖銀の剣なども分解出来るらしいので、浄化した魔石と一緒に渡したらテンションが限界突破していた。

「あと、ポーラの魔石も頼む!作ることが我等には生きがいなんじゃ!」

そう力説されて浄化魔石を置いた。もう魔石は殆ど残っていないけど、持っていても仕方が無いので、魔法袋に入っている全ての魔石を出した。

「もう魔石はない。先に治癒士ギルドの為に使ってくれ」

「ルシエル殿、感謝致す」

ここで俺はやっと解放された。地下二階の奴隷部屋は温調機能がつけられていたので、地上の二階の俺達の部屋にもつけさせることが決まった。

やっと地下一階まで来て馬達が走れる環境を作ったと言っていたが、ここは少し改良をすることを伝えた。

フォレノワールたちが安心を確保しつつ、ストレスを溜めないようにする方法をヤンバスさんに聞いていたので、その環境を作ってもらう。

「わかった」

こうしてやる気を漲らせたドランだったが、徹夜は身体に悪いと言い聞かせて、食事を摂ったらちゃんと眠るように指示を出した。

「これが普通の治癒士ギルドの地下施設だって思われたらマズいよな…」

俺はそんなことを呟きながら、朝食の用意を思い出してキッチンへと直行した。