軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

399 見てはいけないもの

俺達は邪神と死闘を繰り広げていた。

邪神とはいえ、神は神なのだからレベルをカンストさせていようと人が抗うにはあまりに強大な存在だった。

それでも俺達は誰一人最後まで諦めることなく死力の限りを尽くして戦い、ようやくその時を迎えた。

「ルシエル、邪神の攻撃を誘導する」

「ルシエル様への攻撃は私が必ず受けきります」

「ルシエル、安心するのじゃ。この二人は妾が責任を持って守るのじゃ」

師匠、ライオネル、教皇様はそう告げると邪神へ攻撃を仕掛けていく。

それを煩わしそうに反撃に出る邪神。

「私達の出番だな。邪神の結界は何としても私が切り裂く。最後の攻撃はルシエル君に任せたよ」

ルミナさんはそう告げ俺を一度軽く抱きしめると、邪神の下へ飛翔していき展開していた赤黒い膜のような結界を見事切り裂いた。俺はルミナさんに遅れることなく幻想剣にありったけの聖属性魔力を込め、邪神の胸へと突き刺した。

《余をここまで苦しめるとは……。いいだろう。これで幕引きといこう。だが、秩序と均衡を守るため貴様達は道連れにさせてもらう》

邪神は最後の力を振り絞り、世界を黒く塗り潰すほどの漆黒の魔力が濁流となって空から俺達へ降り注いだ。

最初に感じたのは全身を刺されたような痛み、次に毒でも浴びたかのようなじわじわと侵されていく痛み、そして味覚と嗅覚を完全に破壊してくる 悍(おぞ) ましい味と臭いの暴力。

遠くで俺を心配する皆の声を聞こえてくるけど、皆は声をかけるぐらい余裕があるのだろうか? もしかするとこの攻撃は俺だけを対象にしたのかもしれない。耐性スキルをカンストしている俺だけで良かったと思う。

それにしてもこの悍ましい味と臭い、何だかとても既視感があるような気がするな……。そろそろ苦しくなってきた。

出来れば皆が無事でありますように。そう願いながら皆の声がする方へ身体を動かすと、液体が俺の鼻と口の中へ侵入し、苦しさのあまり顔を上げようとすると浮遊感を感じた。

「ごほっごほっごほっ ぜ~はぁ ぜ~はぁ」

口と鼻を蹂躙する液体を咳込みながら吐き出し、何とか酸素を取り込もうと呼吸をするが、液体が邪魔をして上手く吸えない。

「ルシエル様、魔力結晶球です。握ってください」

「ルシエル、さっさと回復しろ」

そこへライオネルと師匠の声が聞こえてきて、何かを握らされたので魔力結晶球なのだと理解した俺は魔力を回復させ、指示された通りにエクストラヒールを発動した。

すると重くなっていた身体が軽くなった。しかし何故か苦しみからは解放されず、浄化魔法を発動したことで視界は何とかクリアになった。

それでも嗅覚と味覚は目の前の液体で完全に破壊されたままだ。

「物体X?」

俺の疑問に答えたのは涙目になっている師匠だった。

「お前が死にかけているのにいつまでも起きないから、修行時代を思い出して水の代わりに物体Xで意識を覚醒させたんだ。まぁ樽から顔を上げたお前がゾンビみたいだったから本気で斬りそうになったがな」

「ルシエル様、叱責ならば後から受けましょう。まずは生死の淵からのご生還されたこと 幸甚(こうじん) の至りです」

ライオネルは次々と俺に魔力結晶球を握らせてくるが、心から安堵した雰囲気が伝わってくる。

「ルシエル、まずは邪神を討伐したこと大儀……いや、感謝いたすのじゃ」

教皇様はレインスター卿のことを聞きたいだろう。

そのレインスター卿が憑依を解く瞬間、本当は頼みたかった願いがあったけど、 旗(フラグ) を立てたくなくて、そのイメージだけを残して消えてしまった。

だからその願いは後で叶えようと思う。

「ルシエル君、無事でいてくれてありがとう」

ルミナさんからは色々な感情が伝わってくる。その感情に応えるのは全てを終えてからにしよう。

それにしても皆が俺の無事を喜んでくれている。それがとても幸せだ。

そこで視界の端に半魔神の姿を捉えた。彼からは俺を畏怖する感情が伝わってきたが、レインスター卿の言っていた通り彼が暗黒大陸を統治してくれた方がいいのだろう。

だから俺はまず彼と話すことにした。

「半魔神、これでレインスター卿と交わした約束を守ってもらえますね?」

「少なくとも貴様達が生きている間は暗黒大陸を我が統治し、人類から戦争を仕掛けてこない限り、こちらから仕掛けないことは我が名アヴァロスト・ダークネス・ノーブルアルダード誓おう」

半魔神アヴァロストからは約束を守るという確かな意思が感じられた。あとはアヴァロストが魔族と総べることが出来るかにかかっている。

「それなら良かった。それで現在侵攻している魔族はどう対処すれば?」

「殺す以外に選択肢があるのか?」

アヴァロストはかなり驚いた表情だが、別に俺は害とならない魔族まで浄化したいのではない。

「ええ。どうやら魔族の強さではなく、殺人衝動や残虐性が薄い者達は浄化の炎を浴びても火傷ぐらいで済ませることが出来るようになったみたいなので、問題なければ暗黒大陸へ転移させることも可能です」

本当にレインスター卿の置き土産なのか、ステータスを見なくても出来ることがかなり増えてしまっていることが分かる。

あれだけ神テミトポサスが禁忌だと言っていたから、もしかするとレベルやスキルの初期化も頭を過ったけど、逆の意味でステータスを見るのが恐ろしい……。

「魔族は力こそが全て……なのだが、邪神の影響で暗黒大陸に残った魔族の数は絶滅寸前。出来れば頼みたい」

アヴァロストが暗黒大陸を統治しようにも絶滅すると、神テミトポサスが邪神として復活する予感がするからそれだけは絶対に避けなければならなかった。

師匠達へ視線を向けると、皆も俺の考えに同意してくれたらしい。

「それでは私、賢者ルシエルは浄化されない魔族を救済すること、アヴァロストは私達が生きている限り魔族から侵攻しない約束を交わします。良ければ同意を」

「我名アヴァロスト・ダークネス・ノーブルアルダードは賢者ルシエルとの約束を誓う」

こうして俺と半魔神アヴァロストに誓約が結ばれた。

ピロン【称号 半魔神(魔王)と友誼を結ぶ者を獲得しました】

その瞬間、止めておけばいいのに俺はステータスを開いてしまった。

視界にホログラムウインドウが出現し、ステータスに並ぶ意味不明な数字の羅列と称号の数々……俺はその現実を受け入れることが出来ずにステータスを閉じた。

そして今は魔族や魔物から人々を助けることを決め、アヴァロストには暗黒大陸に残ってもらい転移させる魔族を任せ、俺達は俺達の住む大陸へと転移した。