軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

346 モチベーション維持

ランダムボスを一体倒しただけで、一番レベルの低かったクレシアは三十以上のレベルアップを果たし、師匠達も数レベル上がったことが確認された。

やはりあれだけの瘴気を垂れ流す存在なのだから、高レベルの魔物に間違いなかったのだろう。

今回それでも簡単に討伐出来たのは、魔物が浄化魔法に対しての耐性がなかったことと、聖域結界を破壊する力を持ち合わせていなかったからだ。

次戦はここまでうまく討伐出来る分からないけど、まぁ師匠達を含めて今の一戦で慢心するような人はいないから大丈夫だろう。

それにしても一度の戦闘でレベルが上がり、皆のやる気が俄然と高まってにきたな。

この調子なら魔族ぐらい余裕で相手に出来るかもしれないな。

「この調子で次も頑張りましょう」

すると各々から返答があり、俺はボス部屋を開いた――。

それから何度もボス部屋を開いたけど、さすがにランダムなだけあって、出現する魔物は超巨大コウモリだけではなかった。

上半身人が大鬼で下半身が蛇の魔物、空を飛ぶ羽があるライオン、山羊の頭をしたミノタウロスのような魔物。

瘴気をまき散らす人型のハエや、瘴気と属性攻撃を合わせた攻撃が特徴の三頭の巨犬、あの最凶最悪のアンデッドに漆黒の羽が生えた魔族など、他にも本当に色々とランダムで出現した。

もちろん戦った魔物がまた現れる場合もあったけど、二度目ともなると皆がその魔物に対しての動き方を考えていて、さらに短時間で戦闘を終えることが出来るようになっていた。

「ここまでは順調ですね」

「ああ……そうだな」

「問題はないですね」

レベル上げを始めてから数時間が経ち、皆のレベルは大幅に上がってきていた。

このパワーレベリングはやはり有効だな。そう思って師匠達に声を掛けたけど、返ってきたのは生返事だった。

そこで二人のテンションが明らかに低くなっているのを感じたので、理由を聞いてみることにした。

「二人ともテンションが低くないですか? 何かありましたか?」

「ルシエル、今の状況でレベルが上がることは嬉しい。だがな、一度ぐらい戦わせてくれてもいいだろう」

「私達のレベルも全盛期に近づいてきましたし、そろそろ実戦で感を取り戻したいのですが……」

二人とも武人だから言いたいことは分かるけど、今優先させないといけないのは皆のレベリングだ。

俺は心を鬼にして二人からの要求を突っぱねることにした。

「二人とも昼まで模擬戦をしていたんですよね? それに二人だけじゃなく、皆の危険も跳ね上がるから駄目です」

「そこはドラン殿達に休憩をしてもらえばいいだろう」

「一度は戦ってみたい魔物の宝庫なのですよ」

あ~もう生粋の戦闘狂が! でもこの二人のテンションが下がると他にも影響が出かねないんだよな……。

「はぁ~分かりましたよ。全員そこそこレベルも上がっていますし、そろそろ技術開発部はイエニスへ戻る時間ですから、最後の一戦はドラン達にサンクチュアリバリアを発動して、俺は観戦することにしますよ」

「さすが師匠想いの弟子だ」

「その信頼、従者冥利に尽きます」

本当に物は言いようだな。

明らかにテンションが回復した二人に俺は苦笑いを浮かべながら、ボス部屋を開こうとした。

するとそこへ声が掛かる。

「あのルシエル様、私達も援護させてもらってもいいでしょうか?」

俺は振り向き、リディアの問には答えず、師匠へと視線を移した。

今回は戦闘に加わるつもりがなかったからだ。

「ああ、こちらも過信するつもりはないから頼む」

「ありがとうございます。よろしくお願い致します」

こうしてリディアの参戦が決まった。

「一応俺も危なくなったら直ぐに救援しますからね?」

「それだけはされたくないが、死にそうになったら頼むぞ」

「分かりました」

「ならば私も参戦させていただきたい」

「私もいいでしょうか?」

結局バザックとクレシアも参戦を希望したことで、俺と技術開発部を除いたメンバーでランダムボスに挑むことになった。

「じゃあ開きます」

皆に声を掛けてから扉を開いた。

するとボス部屋の中心部から高濃度の瘴気が渦を巻くように発生した。

「強力な魔物が発生するようですから、皆にオーラコートだけは発動します」

あれだけ高濃度な瘴気を身体に浴び続ければ、さすがの師匠達でも次第に身体の動きは落ちてしまうし、体調も悪くなってしまうだろう。

さすがに無茶で無謀な戦闘をさせることは避けたかったので、補助だけはすることにしたのだ。

皆にオーラコートを発動した俺は約束通り後方へと下がり、入って来た扉付近で聖域結界を発動させた。

聖域結界の中には技術開発部だけではなく、バザックやリディア、クレシアも残っていて、遠距離攻撃による支援をすることに決めていたらしい。

それから間もなく瘴気が収束していくと、大型の魔物が出現した。

ボス部屋に現れたのはアンデッドドラゴンだった。

それもただのアンデッドドラゴンではなく、俺の見立てが正しければ古竜のアンデッドドラゴンだった。

「たぶん古竜のアンデッドドラゴンです。アンデッドになっている分、竜の谷で戦った古竜よりも戦い辛いし強いと思います」

「また相当な魔物が出てきたな」

「まぁこちらもほぼ全員が竜殺しだから、問題はないだろう」

二人とも凄く嬉しそうな顔をしてアンデッドドラゴンへと走り出した時だった。

「ガァアアアアア」

先制攻撃はアンデッドドラゴンの雄叫びからだった。

師匠とライオネルは身を 屈(かが) めて、何とか耐えているように見えた。

「凄い雄叫びだよな……って!?」

聖域結界は既に発動しているから皆は問題ないだろうと思っていたけど、どうやらあの雄叫びで恐慌状態に陥っているのか、地面に膝を突いて震えていた。

直ぐにドラン達へリカバーを発動すると、効果があったのか皆自分の身体を確かめながら立ち上がった。

俺は皆が回復したのを確認してから師匠とライオネルへと視線を戻すと、二人は険しい表情を浮かべながらも立ち上がり、アンデッドドラゴンへ向けて再び走り出していた。

「さすがだな」

どうやらあの二人は恐慌状態に陥ってはいなかったみたいだ。

ただあの雄叫びのせいなのか、動きが目に見えて遅くなっているように思える。

俺は自分の身体を確認してみるけど全く異常がないことから、レベル差で恐慌状態に陥るのかもしれないと思い始めていた。

クレシア以外の全員が竜殺しの称号を得ているし、それしか考えられなかったからだ。

「もしまたあのアンデッドドラゴンが雄叫びを上げたら、師匠達には悪いけど回復による介入はしようかな」

そんな俺の独り言に驚きも声を上げたのはクレシアだった。

「ルシエル様はあの雄叫びを聞いても平気だったのですか?」

「特に何ともなかったよ? どんな状態異常が起こったか分かる?」

……変なことを言ったかな? 何で皆から変人を見るような目で見られているんだろう?

「はい。いきなり身体が痺れたと思ったら、どんどん力が抜けていきました」

「麻痺に虚弱……クレシアありがとう」

なるほど。物体Xのおかげで耐性レベルがⅩだったから俺には効かなかっただけか。

まだ危機でもなさそうだし、勝手に回復させるのはまだまずいか……。

それにしても師匠とライオネルが何とか平気で、バザックが膝を突いて震えていたのは物体Xを飲んでいなかったからだな。

これを機に皆にはレベリングが終えたら、物体Xを飲んでもらうことしようかな。

たぶん邪神はこれ以上の状態異常攻撃をしてくるだろうから、備えあれば患いなし問題ないよな。

そんなことを考えながら師匠達を観察する。

二人とも攻撃を繰り出しているけど、いつものようなキレはなく、あまりダメージを与えているようには思えない。

リディアもそう感じたのか炎の大精霊を召喚し、アンデッドドラゴンを炎で包んでいく。

それに続くようにクレシアが魔力を込めた矢を、バザックが無数の炎槍を放っていく。

すると師匠とライオネルはアンデッドドラゴンから距離を取ってこちらまで戻ってきた。

「ルシエル、たぶん状態異常だから回復してくれ。このままでは決め手に欠ける」

「あの古竜だと思われるアンデッドですが、竜の谷にいた二体の古竜よりも強いです」

この二人は状態異常に陥っているのに、随分と楽しそうに話すよな。

でもこのままだとかなり時間も掛かりそうだしな……そう思ってある提案をすることにした。

「それと瘴気も濃くなってきましたし、一度ピュリフィケイションウェーブを発動しますか?」

「いや、このままでいい。弱体化された状態でも一撃も受けなかったからな」

「ええ。今度は倒し切ってみせます」

リカバーを受けた二人はそう言い残し、再びアンデッドドラゴンへと斬撃を飛ばしながら向かっていった。

それからの二人は援護射撃を最大限に活かした連携を取りながら攻撃を加えていく。

あれならいずれ倒せるだろうな。

そう思った矢先、今度はドランがポーラとリシアンを連れてやってきた。

「ルシエル様、ポーラとリシアンが“ルシエルン”を出したいようなのだが……」

ドランはそう申し訳なさそうにお伺いを立てるように述べた。

俺は驚いてポーラとリシアンを見ると、二人ともどこか申し訳なさそうにこちらを見つめてくる。

今までなら勝手に戦闘参加していた二人が確認をしてくるのだから、この成長は本当に嬉しく思えた。

だけど問題は“ルシエルン”が介入することなんだよな。

たぶんアンデッドドラゴンとの戦闘に参加すると、直ぐに終わってしまう可能性が高い。

そうなるとまた師匠達のわがままが……はぁ~。

「えっとそんなに参加したいのか?」

「お願い……します」

「お願いしますわ」

二人はいつになく真剣表情をしていた。

「分かった。ただし大型は禁止だからな」

「分かった」

「畏まりましたわ」

ポーラは三メートル級の“ルシエルン”を一体だけ作り出した。

「よし、リシアンこれを巻き付けろ」

「はい」

ドランが出したのは巨大な尖った石のようなものだった。

それをリシアンが“ルシエルン”の右手に植物で固定させると“ルシエルン”がアンデッドドラゴンへ向けて走っていく。

「なぁドラン、取り付けたのは一体なんだ?」

「あれは光龍の爪だ」

「光龍!? じゃあ――」

ドゴォォオン!!

俺がドランへ再度問おうとした時に“ルシエルン”が跳躍して、アンデッドドラゴンの頭へ豪快に右ストレートを撃ち込んだ姿が見えた。

するとそのその一撃が効いたのか、アンデッドドラゴンはゆっくりと後方へ倒れ込もうとした。

そこへ“ルシエルン”がボクサーのようなラッシュを浴びせていくと、一撃殴るごとにアンデッドドラゴンから瘴気が抜く。

そしてとうとうアンデッドドラゴンは“ルシエルン”の猛攻に耐えきれず、爆散するように大量の瘴気を撒き散らして消えた。

後に残ったのは巨大な魔石と、師匠とライオネルからの何とも言えない表情だったけど、こうして何とか技術開発部のパワーレベリングは無事終了することが出来た。

そして翌日から戦乙女聖騎士隊とケフィン、ケティを混ぜたメンバーでパワーレベリングする日々が続き、いつまでもこんな日が続けばと思っていた矢先、遂に恐れていた時が訪れることになった。