軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

336 増える同行者

転移によって視界が変わると、目の前には水の精霊がいる泉があった。

実は少しだけ結界が張ってあるかも知れないと思いつつだったので、転移が弾かれることも覚悟していたのだが、上手くいって内心ではホッとした。

それを皆に気づかれないように、俺は泉へと足を進めたところで、泉の一部が浮き上がり、直ぐに人型を形成していく。

すると瞬く間に水の精霊は以前リディアが召喚した時のような完全な人型になって大地に降り立ち、精霊女王に向かって歩み寄って抱き着いた。

「母様、本当にあの迷宮から脱出することが出来たのね」

「ええ。賢者ルシエルが時空龍を説得してくれたのよ」

すると水の精霊がこちらを向き、人族の俺に頭を下げた。

あの人嫌いな水の精霊の行動に、俺だけではなく、フォレノワール達も驚いていた。

「ありがとう。まさか貴方が母様を救出するなんて、私にも予知することは出来なかったわ」

「全ては成り行きだったけど、授かった加護分は働けたかな」

水の精霊には龍の谷へ行く前に心構えさせてもらったから、レインスター卿と邂逅した時も自分を見失わずに済んだしな。

「十分過ぎるぐらいの働きよ」

どうやら人嫌いが払拭出来たかは分からないけど、敵対するようなことは無さそうだ。

それなら今日中にやっておきたいことを優先させてもらおう。

「それは良かった。それで精霊女王と会えて早々で悪いんだけど、火の精霊と土の精霊、風の精霊のところにも向かいたいんだ」

「そう。それならせっかく母様と会えたんですもの、私もついて行くわ」

「えっと、そんなことが出来るのか? その泉がある場所じゃないと行動することが出来ないんじゃないのか?」

だから召喚契約をリディアと結んだんだろうし。

「ふふっ。光と闇の精霊が出来るのに、水の精霊が出来ない筈がないでしょ」

「確かにそうだけど、この近くにいる眷属達はどうするんだ?」

「ここには私の分体を置いていくし、森にはレーシーもいる。それにもし何かあったとしても、この泉を浄化してくれれば、直ぐ元に戻るから平気よ」

「でもな……」

さっきからフォレノワールと闇の精霊からの視線が突き刺さっているんだよな。

「貴方を予知することが出来るし、私がついて行くと役立つと思うけど」

それは確かに否定はしないけど……。

すると黙っていた フォレノワールと闇の精霊からは反対意見が出る。

「水の精霊よ。それは本当のことか? 母様に誓えるのか?」

「出不精の癖に何を考えているの?」

それを精霊女王はニコニコと傍観しているし、どうするかな。

俺は溜息を飲み込みながら、水の精霊を冷静に分析する。

水の精霊の強みは予知のように感じるけど、確定した未来が見えている訳ではないから、強力だけどそこまで重要ではない。

それよりも特筆すべきは情報収集能力だ。

他の精霊も似たようなことは出来るかも知れないけど、グランドルの冒険者ギルド本部にいる転生者の情報を瞬時に調べることが出来るかは分からない。

精霊女王が近くにいることで、その能力がさらに向上するのなら、水の精霊の諜報活動はガルバさんを凌ぐだろうしな。

するとデメリットは……こうして精霊同士でケンカするぐらいか。

なら条件付きで決まりだな。

「もしついて来るなら、水の精霊にはブランジュ内部への諜報活動してもらうことになるけど、それでもいいのか?」

「それぐらいなら誰かに教えることをしていないだけで、いつもしていることだわ。それで母様の近くにいられるなら、喜んでついていくわ」

まぁ薄々気がついていたさ。

「……フォレノワール達には悪いけど、水の精霊を連れて行くよ」

「はぁ~、まぁいいわ。悪さをしたらリディアに封印してもらえばいいし」

「それしかないですね」

「ちょっと何で封印なのよ」

「封印?」

「契約している精霊が暴走した時に、契約者はその能力を使えなくすることが出来るの。もちろん逆も然りね」

「なら安心だな。精霊女王もそれでいいですか?」

「ええ。賑やかなのは楽しいわ」

迷宮に封印されていた反動なのか、精霊女王の様子が迷宮にいる時と違い過ぎないか? もうほのぼのした保護者にしか見えないぞ。

「はぁ~それじゃあ次は土の精霊に会いに転移するよ」

俺はロックフォードの地下で土の精霊と会った場所をイメージしようとして、万が一崩落していたら困るので、ロックフォードの中心を転移先に選び集団転移を発動させる。

すると何か弾かれた感じがして、景色が変わるとそこは残念ながらロックフォードではなく、フェイクの街の入り口だった。

「ルシエル、ここはフェイクの街よ」

「フォレノワール、分かってる。この街を誰が作ったのか転移する前に気付くべきだったよ」

あの弾かれる感覚は始めてだった。

下手をすれば大事故に繋がりかねなかったな。

「そういえばレインは、外部から極力干渉されないような街にすると、魔力認証がない者を弾く強力な結界を張っていたわね」

「あれか……まぁさすがレインスター卿だと諦めて歩きますか」

精霊女王はどうやらレインスター卿と行動を共にしていたんだろうな。

そうなると教皇様とはもちろん会ったことがあるよな……。

まぁ今日中に会うだろうし、その時に教皇様がどんなリアクションを取るのか楽しみだな。

「ルシエル様、ここは何処でしょう?」

リディアが不安そうに聞いて来た。

「あ、ごめん。ここは聖シュルール共和国の西にあるロックフォードの街だよ。そしてこの街は当時の技術者達と、あのレインスター卿が作った街なんだよ」

止まっていても仕方ないので、フェイクの街へと入る。

リディアは人がいないことに違和感があるのか、辺りを見回している。

まぁこの街はフェイクだから、人はいないんだけど。

しかしさっきの精霊女王の話に出た魔力認証って、あの市役所で作ったものだよな。

一度登録はしたけど、あれから新たな属性が加わったし、リディアはそもそも登録していなかったんだから、弾かれて当然か。

そんなことを考えながら、プロジェクションマッピングで疎外認識された壁を通り、ゴーレムの間で出題された問題に正解して、ロックフォードには向かわずにそのまま地下へと下りていく。

ロックフォードにはちゃんと人がいることをリディアに説明すると、今度皆で来てみたいと言われたので、また今度来る約束をした。

地下へ潜ると闇の精霊から加護を得ているからか、暗闇の中でも問題なく進めるんだけど、ここでは闇の精霊が先頭を歩くと立候補した。

「本当に先頭になるのか?」

「エスティアの身体に憑依してまではしなかったけど……」

それだけ告げて歩き出すと、時折現れるコウモリやアリの魔物が一瞬にして細切れになったり、どこかへ吸い込まれたりしていった。

龍よりも精霊の方が怒らせてはいけないのではないだろうか? そんなことを思ってしまった。

そうしているうちに広い空間に出た。

広い空間だけど、土龍と戦った場所でも土の精霊と会った場所ではなかった。

土の精霊達と会うのはもう少し先かな。

そう思っているといきなり精霊女王が口を開く。

「来るわ」

すると地面が膨れ上がり、六人の小さな子供が現れた。

「「「母様」」」

「「「ママ~」」」

「皆、元気だった」

その光景はさながら、幼稚園や保育園に預けていた子供を迎えに来た親子の図だった。

でも確かに精霊の中では一番幼かったイメージがあった。

それから六人の子供は精霊女王に甘えつつ、フォレノワール達にも甘えだし、精霊女王に促されるまま、リディアと召喚契約を結んだ。

「なぁなぁルシエル、母様を救ってくれて感謝するよ」

「俺達の加護も役に立っただろ?」

「皆の加護を得るなんて、ルシエル凄いね」

「ルシエル、 僕(しもべ) として良く励んだな」

「まさかレインみたいに精霊と龍の力を自在に操るなんてな。もう勇者に……ん? 世界を守護する者になったのか」

「じゃあ私達と一緒だね」

「悪いけど、一度に言われても分からないぞ」

なんか不穏な言葉が混ざっていた気もするけど、それは無視だ。

「分かったよ。じゃあせ~の」

「「「 母様(ママ) を助けてくれてありがとう」」」

「加護をもらったお礼だと思ってくれればそれでいいさ」

これで次は火の精霊がいる場所へと転移出来るな。

「ルシエルは謙虚だな」

「仕方ない、俺達もついて行って、手助けしてやる」

「これでも色々出来るんだよ」

「それぞれ極限の奥義を持っているのだ」

「母様や姉様達とも、もう少し一緒にいたいしな」

「私達にして欲しいことがあるんでしょ?」

面倒だから連れて行きたくないけど、残念ながらやって欲しいことはあるんだよな。

それももの凄く重要なことを。

ただ任せるのはとても不安だ。

「世界樹の移植を頼みたいんだけど、任せてもいいか?」

「「「おおっ~さすがルシエル、分かってる」」」

「但し、六人はさすがに連れていけない」

「なんだって……まぁしょうがないか。一人ならいいんだよね?」

「ああ」

「じゃあいくよ。せ~の」

「「「合体!!」」」

六人が手を繋いで輪になると、眩い光を放った。

俺は一度目を逸らして、光が止むのを待って再び目を向けると、そこには一人の 鍬(くわ) を持ったイケメンが立っていた。

「もしかして」

「……土の精霊です」

どうやら合体すると無口になるらしい。

誰かにフォローをしてほしいと顔を向けると、闇の精霊がフォローに入ってくれた。

そして今までの経緯を説明してくれるらしいので、今度は火の精霊と会ったあのグランドル迷宮近くへと転移することを決めた。