軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

311 訓練の開始

謁見の間でのやり取りを終えた俺達は、龍神様や属性龍達に案内されて、訓練施設へとやって来たのだけど……。

「ここが訓練施設ですか? 先程古竜達と戦った龍の谷の麓のような場所にしか見えないのですが?」

「当然だ。それとその微妙な敬語口調をいつまでしているんだ」

何が当然なのかが分からない。

まぁ別に口調を崩すのに異論がある訳ではないから、崩すか……。

「どういう形で戦うのかを聞いている。そちらは龍の形態になるのか?」

「ああ、そういうことか。それは聖龍次第だな。後は任せるぞ聖龍」

龍神様は最初から決まっていたかのように聖龍へと声を掛けた。

「はい。炎龍、水龍、風龍、あとで土龍達にもこちらを手伝ってもらいます」

するとここで自己紹介が始まった。

「しょうがねえなぁ。いいか貴様ら、俺様が炎龍だ。死ぬ気でやらないと一瞬で灰になるから気をつけろよ」

赤髪を後ろまでだらりと飛ばした筋肉質の男が炎龍。

「風ちゃん、きっと楽しめるかな? あ、私水龍よ」

「う~ん、ルシエルの師匠って人もいるから遊べるんじゃない? 私は風龍よ」

外見そっくりな少女達が水龍と風龍で、見分けるのは髪や目の色だけだろう。

「はいはい、戦ってもいないうちから決めないの。こっちは任せてください」

聖龍が闘いを仕切ることになりそうだ。

「ルシエル、ナディアは加護持ちと巫女の訓練があるから、別の場所で訓練するぞ」

「……ここで一緒に訓練するんじゃないのか?」

「ああ。二人には龍神騎士と龍神の巫女としての特別な訓練があるからな」

「嫌な予感しかしないんだが?」

「ついて来れば分かるだろう」

龍神は笑って、来た道を戻っていく。

ここで反論しても意味はないんだろうな。

「じゃあ師匠やライオネルは、思う存分頑張ってください」

「おう、そっちもしっかり頑張れよ」

「こちらは邪神に負けない程度には鍛えてもらいますよ」

師匠はまだ分かるが、ライオネルの目指す場所がおかしい。

「じゃあ皆さん、また後で」

こうして俺とナディアは龍神様と一緒に訓練場から来た道を戻り、さらに廊下を進むと、今度はちゃんとした部屋の前で止まった。

「ナディアはここで巫女として光龍、闇龍、雷龍の力を引き出す訓練をしてもらう」

「もしかすると、また精神体になって戦えと仰られるのですか?」

ナディアは一度精神体で戦っているからな。

「そうだ。だが前とは違い、我らが創りだしたこの場所は、巫女の精神体を無理やり引き出す訳ではないから、あそこまで疲弊することはないだろう」

「そうですか……どうぞよろしくお願い致します」

ナディアは言われるがまま、訓練を受けることを決意したらしい。

まぁそれが一番建設的なんだろうけどね。

それにしても龍の巫女は戦巫女なんだな……精霊王の巫女はそうなるとどうなるんだろう?

そんなことを考えていると、先程のように龍達が自己紹介をしていく。

「僕が光龍だよ。しっかりと鍛えてあげるからね」

金髪の柔和な笑みを浮かべる光龍。

「我が闇龍。混沌を司るものだ。お主よりもそちらの賢者を鍛えたかったが仕方あるまい」

腰まで真っ黒な髪を下ろし、前髪をパッツンとしている闇龍。

「まぁまぁルシエル君の修行は楽しそうだけど、後で何とでもなるんだからね。あ、私が雷龍だよ」

その二人を取りまとめるのがきっとこのボーイッシュな雷龍なんだろう。

「ナディア、まずは三龍と戦い巫女としての能力を開花させろ」

「はい、龍神様。ルシエル様も頑張ってくださいね」

「ああ、お互い頑張ろうな」

「はい」

「いい感じじゃないか。さっさと 夫婦に(めおと) に……そう睨むな光の精霊と闇の精霊よ。雷龍、ここは任せたぞ」

「はい。また後でね、賢者ルシエル君」

「ええ。ナディアのことを頼みました」

「さて、行くぞルシエル」

「ああ」

フォレノワールと闇の精霊も人化したままついて来るので、龍神様には何らかの意図があるんだろう。

黙ってついて行くと、最奥の大きな扉へとやって来た。

「ここで龍神騎士としての修行を行ってもらう」

そう言って扉が開け放たれると、そこは深い霧がかかっていた。

「この中に?」

「ああ。ついて来い」

俺は言われるがまま、部屋の中へと入っていく。

すると龍神の気配がいきなり消えた。

それだけでなく、フォレノワールと闇の精霊の気配や魔力も一切感じない場所だった。

「あ~、凄く嫌な予感がする」

目を瞑り魔力や気配を探っても何も感じないので、念のためディスペルを自らに発動した。それでも何も変わらなかったため、幻覚の類ではないことが分かった。

俺はエリアバリアと聖域鎧を発動させ、霧の部屋を進んで行くことにした。

ホワイトアウトのような状態で前後左右が徐々に分からなくなってきたけど、ずっと歩いていても壁に当たる訳でもなく、ただ警戒して歩くしかなかった。

一体どれぐらいこの状態が続くんだろう? そう思っていると急に霧が晴れていく。

するとそこには広い草原で優雅にお茶を楽しむ一人の青年がいた。

その青年はこちらに気づくとにっこりと微笑み、話し掛けてきた。

「やぁ、よく来たね。まさかここまで来る転生者がいるとは思わなかったよ」

「……俺もこんなところで、貴方と会うとは思いませんでしたよ……レインスター卿」

そう俺を迎えてくれたのはレインスター卿だったのだ。

「おや、その感じでは違う場所で僕と会っているのかな?」

どうやらロックフォードのレインスター卿とは記憶がリンクしている訳ではなさそうだ。

「ええ、ロックフォードで会ったことがあります」

「ああ、なるほど……えっと、ルシエル君というのか。賢者で龍神騎士……ちなみに元は何の職業だったんだい?」

「治癒士ですよ……。あのここの空間も外の時間が止まっているんですか? それと時間切れになる可能性は?」

前は途中で消えて行ってしまって、ちゃんと話が出来なかったからな。

「そうだよ。ここはロックフォードの空間と同じく固定されているから、外の時間は進んでいない。そしてさらにここは特別な場所だから時間制限もほとんどないに等しい」

「それならゆっくり話が出来そうですね」

どうやらタイムアップはないみたいだな。

愚痴を言い続けてタイムアップだと笑えないからな。

まずは冷静に話をすることを心がけよう。

「もし転生者の君が困っているのなら、力になれると思うけど、何か相談事はあるかい?」

「ええ、ありますよ。出来れば……いや、本来は貴方に片づけていただきたい案件もあります」

今の現状で言えば、相談事というよりは、貴方に処理してほしい案件しかありませんよ。

「そうか。じゃあ先程君が言っていた治癒士であったところから聞かせてもらおうかな」

「それはロックフォードと同様に、娘である教皇様のことを聞きたいってことでいいですか?」

「……二番煎じになるなら、君が転生してからのことを聞こうかな」

どうやら定番のあれをしたかったらしい。

「分かりました。ちなみにロックフォードの時、レインスター卿に飲ませたかったものもありますので、後で一緒に飲みましょうか」

「えっ、何かな。ここでは提供する側で、提供されるのは楽しみだよ」

俺はそれから治癒士として転生してきたことから始まり、転聖龍、精霊、邪神、賢者、魔族、残り九人の転生者のことを話していった。

レインスター卿は楽しそうに聞いていたけど、物体Xの話と邪神の話、デストロイヤーの話の時は真剣な顔をして聞いていた。

もちろん治癒聖シュルール恊和国の現状もだけど。

全ての話を聞き終えたレインスター卿は開口一番、謝罪を口にしてきた。

「色々と迷惑を掛けているようで、大変申し訳ない」

「謝罪はいいんですよ。まずはこれを飲んでいただいて、何か俺が平穏に生きることの出来る起死回生の一手を導いていただけるのであれば。あなたにリヴァイブを発動したとしても、蘇らせることなど出来ないでしょうし……」

「……じゃあまずはこれを飲む前に、私が君を限界まで鍛えてあげよう。この空間は私が気絶したら維持出来なくなる仕組みだからね。もし嘘だと思うなら、帰る時にちゃんと飲んであげるから、それで納得しないか?」

「いいでしょう。ちなみに俺が気絶しても大丈夫なんですか?」

「ああ。じゃあルシエル君を邪神を退けるぐらいまで徹底的に鍛えてあげて、龍と精霊の力を最大限に活かせるようにしてあげればいいんだよね?」

「えっと、お願いします」

何だか色々と間違っているかもしれないと思いながら、龍神達との訓練の前にレインスター卿との訓練が始まろうとしていた。