軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

306 竜の墓場と待ち伏せ

洞窟からではなく崖の亀裂へと飛び込み、龍の谷の麓へ向かうことにした。

魔導具のライトで亀裂の底を照らす係には、戦乙女聖騎士隊から六名が選ばれた。

彼女達はもし戦闘になっても戦うことはなく、本当にライトで下方を照らすだけの担当だ。

実際はナーニャにもしてもらおうと思ったのだけど、レベルが高いだけで空中制御などまともに出来ないのでは? そう思い係からは外した。

もし下から魔物が現れてもいいように、ライオネルとバザックを配置し、後方にはルミナさんと師匠が配置されて、あとは極力動かないことを前提で、亀裂へとダイブしたのだった。

「風龍よ、空を自在に飛翔する翼となり、我の周辺に浮力の風を吹かせ」

俺がダイブしたと同じに、皆も一斉にダイブして一気に魔力を削られたけど、帝国のときよりも遥かに魔力の減少は少ない。

やはり詠唱やイメージって、需要なことなんだとしみじみ思いながら、風龍の力によって一定の速度を保ち落下していく。

時折、洞窟のあった方向に大きな大穴が開いていたけど、その穴に向けてフォレノワールがレーザービームを放って埋めたり、バザックが洞窟へ向けて最強魔法を放ちながら進んでいく。

翼竜も出てはくるのだけど、師匠とルミナさん、ライオネルの斬撃で撃ち落とされていくから、正直俺の出番はなかった。

俺の役目は無事に皆を麓まで送り届けることだと自分に言い聞かせ、魔力結晶球で魔力を回復しながら落下を続けた。

途中から徐々に身体が重くなり、空気もどこか瘴気を帯びていそうだったので、浄化波を発動していく。

するとようやくずっと闇が続いていると思われた崖の底が、ライトで照射され分かるようになってきた。

しかしそこは龍の谷の麓というよりは、龍の谷の墓場と呼んだ方が自然に思える程、酷い光景が広がっていた。

下を埋め尽くしていたのは、ボーンドラゴンやドラゴンゾンビ、他にも死霊系統の魔物が蠢いて、先程落下させた翼竜達を飲み込んでいるようだった。

本当に魔力結晶球を預かっていて良かったと思い、感謝しながら、俺は全力で聖龍剣を放つことを告げた。

「今から全力で下のアンデッドへ向けて聖龍の力を放ち消滅させていきます。下手をすれば落下速度が上がる可能性もありますから、申し訳ありませんが、自分達で体勢を整えてください」

「それでは私がルシエル様の後を継ぎます。【古の盟約に従い、我が魔力を糧に顕現せよ風の精霊。そして私達に浮力を与えて】」

『もっとゆとりのある時に呼び出さんか』

リディアが風の精霊を召喚すると、風の精霊は姿を見せずに声だけ聞かせると、降下速度が一気に緩やかになり、ほとんど止まっているような状態になった。

「あまり長くは持ちません」

「それなら私もお手伝いしますわ」

リシアンがそう告げると、壁面から植物が生え出てきて、網目を形成していく。

「それならばワシもやるぞ。ポーラ、魔石を……ヌンッ!」

ドランはがっちりとしがみついていたポーラから魔石を二つ受け取ると、気合いとともに両手を広げて魔石を壁面へ投げつけると、網目状の植物の下に一瞬で石の橋が架かった。

もはや皆が皆、一般的な常識が通じないことを理解した俺は、俺に出来ることをする。

「ははっ じゃあいくぞ」

俺は全力で聖龍剣を何度も放っていく。

ボーンドラゴンやドラゴンゾンビもこちらへとやって来ようとするけど、そこは師匠達が地に足をつけて嬉しそうに斬撃を飛ばしていた。

たださすがはアンデッドになったとはいえ竜種で、直ぐには浄化されずに、こちらへと瘴気のブレスを吐いてくる。

何とか聖域結界を発動させているけど、ブレスが下から浴びせ続けられたことで、ドランが掛けた石橋に亀裂が入りだした。

ドランは新しく石橋を築こうとするが……その必要はなくなった。

石橋に立ったことで安心できたのか、ポーラが壁面まで移動して手を着けると崖で動けるサイズの“ルシエルン”が次々と現れて落下していく。

そしてブレスを放つ竜の首を持って投げるだけで、それに巻き込まれた小さなアンデッドは踏み潰されていく。

そこへ聖龍がアンデッド達を飲み込み、先程よりも早くアンデッド達を青白い炎で燃やしていくのが分かった。

「ポーラ助かった」

「大型アンデッドには“ルシエルン”が有効」

ポーラは満足そうに頷いた。

そこからはまさに蹂躙だった。

“ルシエルン”から逃れた数少ないアンデッドは師匠達の斬撃で、実体持たないアンデッドにはフォレノワールがレーザービームを放ち倒していった。

俺は何度も浄化波を放つと、麓の瘴気が薄くなってきたからなのか、徐々にアンデッド達の動きが遅くなり、ついには全てのアンデッド達が魔石を残して消滅していくのだった。

それからフォレノワールに索敵してもらって安全が確保されてから、俺達は漸く麓までやってきた。

「ルシエル、ところでここが麓でいいのか?」

師匠の一言に不安を覚えた俺はナディアに確認を取ると、驚くベき答えが帰ってきた。

「ルシエル様、ここは竜が決闘で負けたときに捨てられる墓場みたいです。そして来る途中の穴に入ればちゃんとした麓に着いたみたいです」

「……もしかして龍神様はこうなることを始めから予測してたのか?」

一応神なのだから十分あり得ることだろう。

「いえ、ただもの凄く感謝しているみたいです。最近では浄化する方法がなく、竜達の立ち入りを禁止していたそうですから」

「それにしては、数が多かった気がするけど?」

「近づいた竜を操る場合もあったみたいです。たまに上空へブレスを放って、精神干渉を引き起こしていたらしいです」

……結果的に良かったのか、それとも悪かったのか。

「それで本当の麓へはどうやっていけばいいんだ?」

「えっと、あちらの方向みたいです」

ナディアの指し示した方向は洞窟側の壁面の斜め上だった。

「こうなったらドラン、ショートカットの道を作ってくれると嬉しいんだけど……っていったい何をしているんだ?」

散らばっている魔石等を拾っていたドラン、リシアン、ポーラの様子が少しおかしいので聞いてみると、三人は目を輝かせていた。

「竜輝石やアダマンイト、それに値打ち物の装備がゴロゴロ落ちているのだ」

「こっちも凄いですわ」

「まさに宝庫」

どうやらとても良い鉱石なのだろう。

そして確かにボロボロではあるけど、たくさんの武具や魔道具もチラホラ落ちているのが分かった。

ポーラが帝国の宝物庫よりも目を輝かせているから、とても凄い魔道具もあるのかもしれない。

しかしそれでも今は先に進みたかった。

折角ルートを変えたのに、龍神様にこちらの場所が特定されたからだ。

無論、俺やナディアが加護を持っているから、場所は分かっていたかもしれないけどな。

「たぶんまたここに来る時間はあるだろうから、まずは麓へ続くとされるあそこまで道を作ってくれ」

「ぬぅ……もし修行をするなら工房を作るぞ。それと、もし直ぐに帰ることになってもここにはしっかりと寄ってもらうがいいか?」

「分かった。誓約しよう」

ドランがこれだけの主張をするのは、ドワーフ王国以来だろうか。

まぁこれだけ言うのであれば、貴重なものなのは間違いないし、俺はそれ約束することにした。

「いや、信頼しているから誓約はいい。だが少しだけ待ってもらえるか?」

「分かった」

さらっと信頼していると言われると、嬉しいものだな。

そんなことを思いながら、皆と一緒に魔石の回収をしたり、残った瘴気を浄化させたりして、ドラン達の気が済むところまで待った。

それからいくつかの鉱石と魔導具をサンプルとして魔法袋へ入れて、ようやくドランの地形操作で、俺達は苦も無く龍の谷の麓までやってくることが出来た。

麓は巨大な円形の崖で囲われていて、聖都にある大訓練場よりも広く感じる場所だった。

それこそ竜専用の闘技場とも思える場所だ。

麓へ入ったところで、いろんな竜がこちらが出て来るのを待ち伏せしているようだった。

「待ち伏せね……それで、あそこにある俺達でも開けられなそうな扉の先に龍神様がいるのか?」

「はいそれと伝言が……」

「なんて?」

「“ここで恐れをなして帰っても構わない”だそうです」

「そうか……師匠、ライオネルどう思う?」

「全滅させてもいいんだろ? 眷属とはいえ魔物だしな」

「まさか挑発されるとは……ユーモアがあるみたいですな」

既に二人の修羅がそこにはいた。

「戦乙女聖騎士達の皆さんは無理はしないでください。危険もありますから、即死攻撃だけは何としても防いでください」

「こちらは集団戦だけは得意だ。自分達の身は自分達で守るさ」

ルミナさんも何気にレベルアップしているから大丈夫だろう。

師匠が技術は認めていたしな。

「ポーラ“ルシエルン”で皆を守ってくれ」

「あとで魔石の譲渡をするなら手を打つ」

「分かっているよ。ドラン、リシアン、ナーニャも気をつけてな」

「おう」「「はい」」

技術班に問題はなさそうだった。

「ナディア全滅させるまでに、屈服させる竜を頑張って捕らえろよ」

「頑張ります」

「バザック、リディア、エスティアは全力で頼む。もし魔力切れるようなら、俺を探してくれ」

「賢者ルシエル、助かります」「「はい」」

これで問題はないな。

「ナディア伝言を頼む」

「はい」

「この場所もきれいに浄化するから、安心してそこで待っているようにと伝えてくれるか?」

「はい、分かりました」

ナディアはこれが挑発だとは気づいていないようだが、その隙に皆へエリアバリアを発動した。

師匠、ライオネル、ルミナさんの斬撃と、俺の風龍の力を使った斬撃モドキが戦場に放たれたところで、竜種が崖から降ってくるのだった。