軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

303 挑発?

バーベキュータイムを終えたところで、ナディアにもう一度龍神様と連絡をとってもらうことにした。

一応、襲い掛かってきたので返り討ちにして、全滅させたことを伝えてもらうことにしたのだ。

下位の魔物だからなのか逃げ出す魔物は居らず、戦乙女聖騎士隊とナディア達が弱いと思って襲い掛かったみたいだけど、自分達が負けるとは理解出来なかったらしい。

無傷とは言わないまでも、連携しながら敵の数を減らしていった戦乙女聖騎士隊。

ナディア、リディア、エスティアは個の力量に加え、師匠達と同じように前衛、後衛、遊撃とバランスが整っていたため、無傷でその戦闘を終わらせていた。

まぁ師匠達は別格だから、師匠達よりも弱いと判断されるのは仕方のないことだけど……。

ナディアに龍神様と連絡を取り合ってもらったところで、俺達は日が暮れてしまう前に再度飛行艇を発進させる準備を整えた。

「それでこれからどっちへ向かえばいいのか、指示をもらえるか?」

「はい、あちらに見える山と山の合間を飛んでいけば、分かるそうです」

前方には山脈が見えるのだが、中でも特に大きな山が二つそびえ立っていた。

「行くのはいいけど、戦闘にならないか聞いてもらってもいいかな?」

これが物見の先遣隊だとすれば戦闘になりかねない。

まぁこれだけ倒したんだから、そこまで魔物も残っていないとは思うけど……。

「はい……えっ!? ……分かりました。あのルシエル様、既に戦闘は避けられないそうです……あの山と山の合間を進むためには、先程の竜種を倒して進まなければならないと……」

「あれは一部だったってことか? ちなみに竜種って全滅させてもいいのか?」

俺の発言にナディアは目を大きく開けて龍神様とコンタクトしているようだったが、師匠やライオネル達からは“分かっているじゃないか”とそんな視線が送られてくる。

これって既に苦行が始まっているんではなかろうか?

「ルシエル様、先程の回答と同じく、出来れば逃げる竜は追わないで欲しいみたいです」

「そうなると日が暮れるし、主砲を撃っていいかも聞いてもらえるか? 小山ぐらいなら消し去る威力があることも告げて……」

主砲を打ち込めば、それだけで終わる感じがしたので、そう提案しようとしたところで、唖然とした師匠達からではないところから、待ったの声が掛かる。

「ルシエル、それは勿体ない」

「そうですわ。それにあれぐらいの竜種だったら、私とポーラだけで十分ですわ」

止めたのはポーラとリシアンだった。

「どうしているんだ?」

「煮詰まった」

「さすがに飛行艇の中で全てを解析して複製するのは難しいですわ」

まぁさすがに帝国の宝物庫にあった国宝と伝説のアンデッドの魔石がそれほど簡単に解析出来る訳ないか。

「それで、何故二人で十分だと?」

「ん」

ポーラは魔力結晶球とあの指輪を差し出した。

「……また魔力を込めろと?」

「魔力結晶球の魔力はさっき拾った魔石で 完全充填(フルチャージ) が完了している。後は指輪に魔力を込めるだけ」

いつの間にそんな技術を身につけたのだろうか? ちょっと優秀過ぎて困ることがあるなんて。

でも確かに“ルシエルン”なら、わざわざ足を止めなくてもいいし、師匠達のレベルが急激に上がることもない。

……あれ? でも魔石はどうやって回収するつもりなんだ?

「後は巨大“ルシエルン”に私が作る緑の鞭を装備させれば、竜種が万が一襲ってきても安心ですわ。倒した竜は目的地まで引きずっていけばいいのですし」

「……却下」

“ルシエルン”って、完全に俺が鞭を振るっているだけの構図じゃないか。

しかも竜を引きずって歩くなんてことをすれば、一生の黒歴史になりかねない。

それなら自ら戦った方が気分的にもずっと楽だ。

「ぬぅ、これはその子の為でもある」

ポーラが視線を向けた先にはナーニャがいた。

「どういうことだ?」

「彼女はレベル一、これから先を進むのは厳しい。でも“ルシエルン”にリシアンの作った鞭を装備させて、先端にこの魔導具で作った石を装備させたら、たぶん彼女のレベルは上がる」

それはポーラが大事にしている腕輪だった。

魔力を込めれば少しだけ地面を動かせるものだったっけ。

確かにそれを使うことで関節攻撃になるならレベルは上がるか。

それにそれだと鞭ではなく、どっちかといえばフレイルに近い。

「でも、それで本当にレベルが上がるのか?」

「昔、お爺にしてもらった」

「ドラン?」

「それならレベルは上がる。やらせるかどうかは別として、強くなることは可能」

どうやら間違いがないらしい。

「はぁ~。ナーニャ、死ぬ確率を下げれるらしいけど、どうし……」

「お願いします」

あの縋りつくような目に、ノーとは言えないか……。

仕方ない。でも師匠やライオネルが悩ましそうにこちらを見ているのは、自分達が戦えないと分かっているからだろ。

「分かった。師匠とライオネルは闘いながら進んでもらって構いませんよ。それで遅れたら知りませけどね」

「それは大丈夫だ。何故ならルシエル、お前も一緒に走るからだ。懐かしいな」

「ルシエル様、邪神討伐に向けて、少しでも戦闘技能を高めましょう」

何故俺はこの二人を連れて来ようよ思ったのだろうか? これならケティとケフィンを連れてくれば良かった。

「俺は上空からでも龍剣が放てますから、わざわざ降りる必要がないですし」

「おおっ! その手があったか。まぁ今なら少しぐらいは斬撃も飛ばせるだろう。よし、それでいいぞ」

「では私もそのように……」

「まさかこのように楽をしてレベルを上げられる日がこようとは……」

師匠、ライオネル、バザックはただただ喜んでいるようだった。

まさか戦闘がしたかったのではなく、レベルを上げたかったとは……。

また師匠やライオネルの考えを読み間違えてしまった。

「ナディア、出来るだけ竜達を死なせなくないから、出来れば出て来ないように伝えてくれ」

これが最後の悪足掻きだった。

しかしこの悪足掻きは、俺にとっても竜種にとっても最悪な状態を作ることになってしまった。

「……ルシエル様、“そこまで竜種を侮るのなら、全滅させて麓まで来てみるがいい。”って、龍神様は何だか嬉しそうに言ってましたけど、これって完全に挑発してしまったんじゃないですか?」

そんなナディアの一言に、俺は純粋に自分が強くなる方法を選択することにした。

「ドラン、操縦は任せた。遠距離攻撃が出来る人達は今のうちに飛行艇の上に上がってください、ですが落ちないでくださいよ。その辺りは自己責任でお願いします。ポーラ魔力結晶球と指輪を」

「ん」

それから俺は魔力を指輪へ充填させていく。

きっと翼竜もいるだろうけど、問題となるのはブレスぐらいだろう。

近づいて来る翼竜には、俺とフォレノワールで当たればいいし。

「じゃあ、総員戦闘準備に入ってくれ」

こうして俺達と竜種の戦闘は避けられないものとなった。

生み出された“ルシエルン”は十五メートル級が二体で、確かにフレイル鞭を両手で持っているのだが、後方のもう一体はデストロイヤーと戦った大きさの“ルシエルン”が、石で出来た大きな背嚢を背負い、両手にはトングを持っていた。

戦乙女聖騎士隊は驚いたり、爆笑したり、唖然としたりと様々な反応を見せていたけど、遠距離攻撃が出来ない者達は全員が飛行艇の中でお留守番となった。

もう何も言う気にはなれず、俺はただフォレノワールと飛行艇の先端で翼竜が見えるのを待っていた。

『冷静ね』

「たぶんそう見えるだけだよ。それに頑張らないと平穏がやってこないんだろ? それなら頑張るさ」

『そう。じゃあ相棒の為に頑張るわ』

本当にフォレノワールはいい相棒だよ。

『今回は戦闘中でも魔力をもらうわよ』

「ああ。魔力結晶球も預かってきたから、飛ばしていこう」

『そろそろね。先行するの?』

「いや、本当はそうしたいけど、一番大切なのは俺を含めた皆の命、次に飛空艇だから無理はしないよ。だけどその上で俺自身の成長を促せるそんな闘いに出来ればいいと思っているよ」

『いつも全力じゃないといけないから大変ね』

「未来の平穏の為だよ」

俺がそう言って笑うと、フォレノワールの笑い声も念話によって聞こえてくるのだった。

そしてそれから間もなく、人類最高峰を含んだ俺達と竜種との闘いが始まった。