軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300 空戦準備

色々と思うところはあるけど、リディアが水精霊を召喚出来るようになったのは、これから先のことを考えてみると良かったのかも知れない。

それにしても召喚した場合は人型になれるってことは、フォレノワールや闇の精霊も、もしかすると人型に……そんなことを考えていたら、飛行艇のある場所まで戻ってきていた。

バザックと戦乙女聖騎士隊は短時間であったものの、ゴブリンやオーク等の魔物を倒していたらしく、その魔石を回収させてもらい、魔物の死体を一纏めにして聖域円環による浄化の炎で消し去ってから、俺達ら再び飛空艇に乗り込んだ。

その後、飛行艇を発進させたのだが、戦闘がいつ起こってもいいように主砲担当のドランと副砲担当のナーニャ、龍の巫女のナディアと精霊の巫女のリディア、従者筆頭としてライオネルを残し、あとの皆には客室へと移動してもらった。

あれだけの大人数だとさすがに落ち着かないし、邪魔になると思ったのは秘密だ。

「じゃあナディア、このまま南の方向へ飛行を続けるから、龍の谷の正確な場所まで誘導してもらえるかな?」

「はい。龍神様に問いかけながら、方向を確認します」

ナディアはそう言って、リディアと仲良く席に着いた。

ドランとナーニャは既に自分達の席に着いているし、ライオネルはブリッジの入り口から外を眺めているようだった。

そんないつものメンバーが揃ったところで、飛行艇は目的地へ向け進むのだった。

再出発から早数時間、見渡す限り未開の森がずっと続いていた。

時折、下に魔物のようなものを捕捉することはあったけど、こちらの飛行速度が速いからか、それとも射程外だからなのか、攻撃を受けることはなく順調に飛行を続けていた。

「暇すぎてやることがないわい」

「たまには景色をゆっくり眺める時間も必要だって」

ドランの声に同意しながらも、この暇という時間が俺にとっての唯一の平穏な時なのではと思っていた。

まぁ確かに暇ではあるけど……そろそろ昼の時間だし、飛行艇を降下させる場所が欲しいところだけど、一向に平地は見えてこない。

「お二人は何故、そんなにも余裕なのですか!」

ナーニャは少し神経質なぐらい辺りを見回していた。

リィナが留守番になったことで、一般人の彼女を連れて来てしまったのは申し訳ないけど、彼女の射撃能力は案外高いのだ。

仮に飛行艇が飛行する魔物と対峙した時には、きっと活躍してくれるだろうと思っている。

まぁさすがに副砲で魔物を倒したからといってもレベルは上がらないので、一般人の彼女には悪いけど、龍の谷へ着いたら一度、パワーレベリングを経験してもらうつもりだ。

「ナーニャはリィナがいなくても、しっかり発言の出来る人材で良かったよ」

「褒めても特別手当を無しにするとかは無しですよ」

少し血走った目で見られて怖いが、彼女は大家族の長女らしく、お金を稼がないと不味い立場だったらしい。

リィナのお店にいたのも、一般の仕事より給料がそこそこ良かったかららしい。

昨日、フォレンスさんと話し合って正式にルシエル商会と雇用契約を結び、今までの給料の二倍が支給されることになった。

さらに今回の旅の同行する場合、危険手当として年収の五倍の額が支払われることを説明すると、リィナのリの字も出さずに即断即決したのだった。

もしかするリィナよりも大きなことをする人物になるのではないかと思っている。

それから少しして、永遠に続くかと思われたこの平穏な森の上空に、突如こちらへと飛んでくる何かが複数見えた。

「あれって、魔物か?」

「うむ、どうやらそのようだ」

ドランが口角を上げた。

きっと暇だから主砲を撃ちたいんだろうな。

本来なら魔導具の解析がしたいところを縛り付けているし、ストレスが溜まっているだろうから……。

だけどそれは俺も同じだった。

「フォレノワールと露払いに行った方がいいか?」

「あれぐらいの魔物なら、撃ち落とせるが、判断は任せよう」

ドランは腕組をして俺からの回答を待つことにしてくれた。

魔力も余裕があるし、主砲の魔導砲で蹴散らした方が早いか?

「フォレノワール、戦闘に行くか?」

『これから龍の谷へ近づくと、徐々に魔物が増えていくから、焦らなくてもいいと思うわ』

「分かった。じゃあ主砲と副砲で片づけるぞ?」

『ええ』

フォレノワールは気乗りしておらず、あまり問題ないと思っているのか、精霊結晶から出て来ることもなかった。

「ドラン、主砲は三十%充填でも放てるのか?」

「十%からいけるぞ。だが、このまま体当たりでもいいとは思うが?」

ドランは飛行艇の装甲と耐久に、絶対の自信を持っているみたいだな。

「ははっ、さすがにそれは……」

「何を言っているんですか。万が一ってこともあるから、そんなことはやめてください」

ドランの強気な発言に笑ってしまうと、ナーニャがドランに叫んだ。

まぁ確かに万が一の可能性も無くはないし、怖いからな。

「じゃあ主砲は三十%充填、ナーニャもよく狙って、近づいてきたら頼むぞ。慌てなくても、もし危なくなったら外へ出て行って倒すから、落ち着いてしっかり狙って副砲を撃ってくれ」

「「分かった(はい)」」

それから十数秒で魔物の形が徐々に分かってきた。

角が生えているコウモリのような飛行型の魔物で大型犬くらいの大きさだった。

それの輪郭を捉えたのか、ナーニャが壊れた。

「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い……」

そんな呟きを連呼しながら、副砲を発射し始めたのだった。

距離はまだまだあったけど、それを感じさせない命中力で一発、二発と魔物達を撃ち落としていく。

本当に凄まじい狙撃の腕だ。

俺がそう感心しているといきなり攻撃されたことに怒ったのか、魔物達はこちらへ向かって突っ込んできた……。

しかしそこへドランの主砲が発射されると魔物達は光の渦に飲み込まれて大半が一気に消滅したみたいだ。

光の渦から免れた魔物にはナーニャの副砲が追い撃ちを掛け、魔物は直ぐに散り散りとなって逃げて行った。

この飛行艇の戦闘力は、平和になったら他国から責められそうだな……。

そんなことを思ってナーニャへ視線を向けると、蒼い顔をしたナーニャが副砲の射撃レバーを力いっぱい握りこんだままだった。

「おいナーニャ、もういいぞ」

「……」

「ナーニャ?」

どうやら全く気が付いてないようだ。

「ナーニャ、落ち着かないと解雇するぞ」

すると、ハッとした表情で、ようやくナーニャはこちらを向いた。

「えっと……」

「いくら優秀な狙撃手でも、我を忘れる者と戦場に入ることは出来ない。集中することはいいことだけど、仲間と連携も考えてほしい。大丈夫か?」

「……はい、頑張ります」

全然、大丈夫ではなさそうだった。

「頑張らなくていいから、リラックスしていこう」

「はい」

返事はするものの、やはり元気がないので、最後に少しだけ褒めることにした。

「狙撃手としてはとても優秀だ。引き続き頼む」

「はい!」

すると今度は嬉しそうに返事をしたナーニャを見て、これからはちゃんと褒めてあげようと心に決めた。

これなら大丈夫そうだと思ったところで、ナディアが発進してからようやく声を上げた。

「ルシエル様、龍神様からの念話のようなものが聞こえました」

「龍神様は何て?」

「龍の谷へ近づいてくる私達を獲物だと感じた、下位の竜がこちらへやってくるらしいです」

やる気満々だな。

確か知性がないんだったか……。

一度飛空艇を……降下させる場所がないんだよな……。

「ナディア、未開の森はあとどれぐらいで抜けられるか聞いてもらってもいいかな?」

「はい……このまま進むともうすぐで森は終わるみたいです。ただ……そこからは直ぐに龍の谷らしいです」

まぁそうだろうね。

「ドラン、下位の竜の魔石って、需要はあるよね?」

「うむ。竜種は翼竜を含めて、捨てるところはない」

竜の肉が食べれることは分かっているし……時間的にももうすぐ龍の谷の麓だ。

そこまで飛行艇で行ったら、大変な闘いになりそうだな。

「ナディア、その下位の竜を倒してもいいか聞いてくれるか?」

「はい……逃げた竜は追わないでもらえるなら、いいとのことです」

「よし。フォレノワール、今度はどうだ?」

『しょうがないわね。そんなに闘いたいなら、付き合ってあげるわ』

「助かる。ドラン、操縦を変わってくれ。ライオネル、状況に応じて翼竜や下位の竜退治だ。師匠とバザックにも伝えて欲しい」

「はっ。ようやくですね」

ライオネルは笑ってブリッジを出て行った。

「ナディアとリディアは、戦乙女聖騎士隊とエスティア、技術班にも伝えてほしい」

「「はい」」

二人もブリッジから出て行ったところで、俺も飛行艇の操縦をドランに預けた。

「ナーニャ、竜ぐらいならこの飛行艇は落ちないし、ドランの技術なら触れさせることもないから、安心して、自分の仕事に集中するんだ。くれぐれも俺とフォレノワールは打たないでくれよ」

「……はい」

「ドラン、任せた」

「出来るだけ回収を頼むぞ」

「ははっ、もちろん分かっているよ。じゃあ皆よりも先に出るぞ」

「武運をな」

「ああ」

こうして俺はブリッジからリフトへと向かい、フォレノワールが精霊結晶から出て来ると、未開の森の上空へと飛び出すのだった。