軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

286 正々堂々

闇龍の力を使った魔法は強力だったらしく、俺が魔法を解除するまで闇の霧が晴れることはなさそうだった。

ルミナさんがローブを纏ったところで声が掛けられた。

「ルシエル君、もうこちらを向いても大丈夫だ。今回のことは事故だから気にしないでいい」

振り返って見ると、少し頬を赤くした珍しいルミナさんがいた。

罪悪感もあるが、そのルミナさんに少しだけ見とれてしまった……。

しかしどうしようか……。

これが二人の時なら、まだ少しだけ気まずい雰囲気になるだけだろうが、時間が経てばいつかは元通りになるだろう……。

しかし今回はいくらギャラリーからルミナさんを守るためだったとはいえ、この闇の霧で隠れたのがルミナさんだけであればまだしも、俺も一緒に隠れてしまったのは非常に不味い。

咄嗟に闇龍の力を使って姿を隠すことしか考えていなかったから、俺も一緒に隠れることになってしまったのだ。

きっと闇の霧を解除したら、ルミナさんがローブを着ていることに対して色々聞かれることになるだろう。

実際に肌は傷ついていなかったけど、剣圧で鎧と中に着込んでいた鎖帷子を斬り裂いてしまい、不可抗力だったとはいえ、胸部付近を露出させてしまったのは間違いないし、それを見てしまったことも間違いないのだから……。

「ルミナさん、今回の件で破損させてしまった鎧等は、俺が全て弁償させてもらいます。それと裸を見てしまった件は……」

そこまで告げるとルミナさんが手を前に出して俺の言葉を制して、自らの考えを口にした。

「ルシエル君、私は私を守ろうとしてくれたルシエル君が不可抗力で私の……を見たからと言って、何かを要求することはないよ。私はそんな関係を望んでいる訳ではないから」

ルミナさんはそう言って頬を少し赤く染めて微笑んだのだが、それが妙に色っぽく感じた。

「……分かりました。でも鎧の件は本当にこちらで弁償させてください」

「ふふっ、それではお言葉に甘えるとしよう」

「じゃあ闇を解除しますね」

「ええ」

俺が闇の霧を消すと、戦乙女聖騎士隊が闇の霧を囲み隠すようにボロボロな状態で立っていた。

特にマイラさんは膝上を斬られていたけど、

「あ、エリアハイヒール」

すっかりと忘れていた彼女達に直ぐエリアハイヒールを発動させた。

「それでルシエル、隊長の大事なところを見てどうだった?」

「だからいつまで経っても何でそうおっさん発言するんです」

顔を赤くしながら、わざとゲスイ質問をしてきたサランさんにエリザベスさんがツッコミを入れる。

この辺りは変わっていないな。

「まさか片手の槍を力任せに振ってあの威力は想定外です」

「晴天の霹靂」

クイーナさんとキャッシーさんは俺になら何処かで勝てる、もしくは足止めくらいなら出来ると思っていたんだろうな。

やはりレベルアップの恩恵はあったらしい。

きっと同レベルなら、ここまで意表を突くことも出来なかっただろうしな。

「ルシエル君の従者は一人一人がおかしいわ。特にあの魔法を使ってきた子、あんなん詐欺やろ」

「そうですぅ。氷柱を躱しきったところで視認出来る程に圧縮された風の玉を放ってくるなんて……まだ目が回っています」

マルルカさんとガネットさんはリディアのことをただの魔法士だと判断を見誤ったな。

初見なのだから魔法攻撃を仕掛けるとかした方が良かったと思うんだけど……。

二人が共同で作った炎嵐とかは凄かったのだし。

ショックを受けているのはリプネアさん、マイラさん、ベロリーチェさん、ルーシィーさんだ。

一対一で戦ったのにも関わらず、全員が身体強化だけのケフィン、ケティ、ナディアに完敗したのだから分からなくもないけど……。

そこへ 判定(ジャッジ) を下したブロド師匠とライオネルがやってきた。

「ルシエル、まさか狙ったんでは……まぁお前にそこまでの技量がないのは俺も分かっているが……」

師匠は勘ぐるような話し方ではなく、純粋に俺のことを心配してくれているように見えた。

「ルシエル様、三龍の力を使って魔力は大丈夫なんですか?」

ライオネルは今まで以上に龍の力を使った俺の身体を心配しているようだった。

「師匠、その通りです。私にそこまでの技量はありませんよ。今回は斬らずに止めたつもりでしたけど、まさか剣圧で鎧を破壊してしまうとは思ってもみませんでした。ライオネル、魔力量は一瞬だからそこまで使用しているわけじゃないよ」

「チッ、早くそれぐらいの技量を身につけろ。お前は天才じゃないんだから、毎日剣を振らなければ、成長は止まってしまうのだぞ。龍の谷で竜種と戯れながら、一から徹底的に鍛えてやるからな」

……どうやら師匠は心配ではなく、ただ単純に俺の技量が上がったのではと期待していたみたいだった。

そうじゃないと分かった時の落胆ぶりが、会話の中から容易に読み取れる。

「……期待していただいたのに、なんだかすみません。それで二人のジャッジは?」

「自己責任でついて来たいと思った者だけ同行だろうな。少しでも迷いがあれば死ぬことになるだろう」

「そうですね。最低限の強さは持ち合わせているようには感じました。しかしレベルが上がって調子に乗るような者は、いらぬことをしてしまうことも多いので、それをそちらの隊長殿がしっかり統率出来るなら問題ないでしょう」

ライオネルの発言で、視線はルミナさんに集中した。

「私達は弱く、このままではいざという時、聖都を、国を守ることが出来ないでしょう。誠に勝手だとは思いますが、どうか本物の力を持つ皆様に同行して、指導を賜れればと思っております。どうかよろしくお願いします」

ルミナさんが頭を下げると、他も戦乙女聖騎士隊の面々も綺麗に揃って頭を下げた。

「……まさか聖騎士が頭を下げる時代がくるとはな……それでルシエル、どうするんだ?」

師匠がニヤニヤしている時点で決まっているじゃないですか……。

本当に向上心のある才能を持った人が好きなんだから。

まぁ即死攻撃以外なら何とかなりそうだし、個々の能力も実は思っていた以上に高かった。

さすがは聖騎士という上級ジョブを授かっているだけはあると感じたし……ルミナさんに対する罪悪感をここで少しだけでも軽くしておくか……。

「はぁ~戦乙女聖騎士隊の同行は認めます。ですが、指示には従ってくださいね」

「はい。畏まりました賢者ルシエル様」

ルミナさんは茶目っ気たっぷりに笑う。

「~「「賢者ルシエル様、よろしくお願いします」」~」

それに続いて戦乙女聖騎士隊の皆も全員がルミナさんの茶目っ気発言に乗っかった為、急に気恥ずかしさがこみ上げてきた。

「そういうのはやめてください」

すると何故か場には笑い声が上がるのだった。

こうして戦乙女聖騎士隊が龍の谷の麓へ同行することが決まり、騒がしい旅となる予感がするのであった。

その後、ルミナさん達は治癒士ギルドに滞在しているらしく、治癒士ギルドへと向かい、ライオネル達もドラン達の待つ宿へと先に向かっていった。

俺はグルガーさんの物体Xが入った料理と、俺が冒険者ギルドにいた時に好んで食べていたラザニアを食べて腹を満たした。

それから緊張した面持ちで、アリスとエスティアに同行してメラトニの街を歩くことになった。