軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274 最凶最悪のアンデッド

飛行艇から風龍の力を借りて飛んだポーラとリシアンだったが、地面に着地する頃にはグロッキー状態だった。

「ポーラは二度目だし、一度目はそんなに怖がっていなかったよな?」

「……あの時はルシエルの背中にしがみついてて、下は見てなかった」

そんな涙目になって言わなくても……。

「リシアンは精霊魔法や魔道具で空を飛ぶ実験とかしたことはなかったのか?」

「ありましたわ。ですが、物事には順序というものがありますのよ。いきなりあんな高いところから“じゃあ行こうか”なんて、さも当たり前のように風龍の力で舞い上げるなんて……」

いやいや、手を差し伸べたのに、その手を取らなかったんだから仕方ないよね。

「……飛行艇に戻るか?」

さすがに護衛は問題ないと思うけど、これならケフィンとエスティアについて来てもらえば良かった気がする。

「地面があるところがホーム」

「閉鎖的な空間にいるよりも、自然とともいるのがエルフですわ」

……いつも閉鎖的な工房にこもっているのに、何かがおかしいと感じた。

しかしその何かが分からないまま、俺達は翼竜が落下した場所へと到着した。

『周囲は警戒しておいてあげる』

フォレノワールのサポートがとても心強い。

「頼むよ」

「ありがとう。任せる」

「精霊様、深く感謝いたしますわ」

どうやら二人にも同時に念話を送っていたらしい。

「しかし翼竜が落とされたというのに、誰もいないな」

帝国軍は砦の外に落下した翼竜部隊の三機を確認しに来ることすらしていなかった。

きっとライオネルは帝国流で扱いているんだろうな。

最初に俺が立ち会った時は、容赦なく俺の腕を切り落としたし、聖都の騎士団もボコボコになるまで指導していたからな……。

きっと逃げることも許されないんだろうな。

そんなことを思いながら、とりあえず翼竜と翼竜を操っていた竜騎士の安否を確認することにした。

「……さすがに地上百メートルから叩きつけられて、翼竜の下敷きになったのだから助からないか。翼竜の方も見事に撃ち抜かれているな」

「魔石を回収してから各部位の解体、あとは自然に還す」

「ポーラさん、今回は翼竜の血も持ち帰ると言っておいたはずですわ」

血を使うとか、若干マッドサイエンティスト化してきているのか?

「えっと、翼竜の血は何に使うんだ?」

魔族化などの分析を進めるための研究じゃないことを祈りながら、リシアンに問いかけた。

「あの索敵する魔道具の強化に使うのですわ」

「あれって一応は完成しているんだろ?」

ドランも範囲は狭いけど、ちゃんと機能するって言っていたしな。

「はい。ですが、気づかないうちに、翼竜に二度も接近されてしまいました。本来は魔石を魔道具の強化に使いたいのですけど、それはさすがにもったいないので、血を使うんですわ」

「呪われたりしないのか?」

「ふふっ。 そうなったらちゃんと解呪してくださいね」

リシアンの笑みが怖い……。

ポーラに目を向けると、ポーラは翼竜から取り出したばかりの魔石を背中に隠す。

「分かったよ。解体が終わったら浄化して成仏してもらう。そうしたらルーブルク王国軍へ一緒に来てもらうぞ?」

戦場だし、アンデッドが生まれる可能性がある以上、浄化した方がいいだろう。

「約束だから仕方ない」

「護衛するだけで、喋ることなどはしないですわよ?」

やはり護衛するよりも、ここに来ることが目的だったか。

「えっと何故?」

「その方達に興味がないからですわ。それこそ魔石を山のように頂けるなら話は別ですけど……あ、ルシエル様やルシエル商会の方々は別ですわよ。皆さんにはとてもいい風が流れていますもの」

だいぶ抽象的だけど、きっとリシアンにとってルシエル商会は居心地がいいと思ってくれているんだろうな。

そう考えると、素直に嬉しい。

イエニスで働いてくれている皆とも会っていないけど、そう思っていてくれれば嬉しいな。

「……それは良かった」

それから暫く翼竜の解体を進めて、大体の使える部位を取り終えるとポーラから声が掛かった。

「ルシエル、これで全部。回収お願い」

「分かった」

言われた通り魔法袋に解体して取り分けた部位を収納していく。

そして全て収納してから、浄化魔法のピュリフィケイションを発動させたその時、フェルノワールから鋭い声の念話が飛んできた。

『これは!? ルシエル警戒しなさい。戦場に集まった負の魔力と感情が一か所に集まっている……とても強力なアンデッドが生まれるわ』

「なっ!? 何で急に?」

何の前触れもなかったし、フォレノワールの索敵にも引っかからなかったのか?

『ルシエルの浄化魔法が引き金になったみたいね』

俺は一瞬、フォレノワールの言っている意味が分からなかった。

「さっきはもっと強力な聖龍に力を使ったのに……」

『あの時は戦場に人がたくさんいたから、負の魔力と感情が分散されていたの。今は誰もいなくなったから、負の魔力と感情が救いをルシエルに救いを求めて集まってしまったのよ』

アンデッドにならないように浄化魔法を使ったのに、それが引き金になるのか? 冗談じゃない。

「そんな理不尽だ」

『私も協力するけど、かなり厳しい戦いになるわよ』

しかしフォレノワールはいつも通り冷静で、既に戦うことへ思考が切り替わっているようだった。

そのおかげで俺も冷静になることが出来た。

しかしフォレノワールがそこまで言うのなら、もしかして邪神クラスの化け物が現れるのか? そう思っていると、戦場の真ん中辺りに黒い霧が巻き上がっていくのがはっきりと視認出来た。

きっと両国軍からも同じ光景を見ているだろう。

せっかく和平交渉の道が見えてきた矢先で、こんな化け物が生まれるなんて……。

そして巻き上がった黒い霧が晴れると、そこには全身から瘴気を立ち上らせる黒紫色をした二十メートル級の骸骨の化け物が現れた。

『ルシエル、今は貴方しかあれを止められる人はいないわ。それに早くあれを止めないと、人の恐怖や憎しみの感情が高ぶって、さらにあれが強くなっていってしまう』

「……フォレノワールはあれが何だか知っているのか?」

『ええ、今までに二回。あれは世界に混沌と厄災を招く最凶最悪のアンデッド、ワールド・デッド・デストロイヤー……一度目はレインが倒し、二度目は前の賢者がその命を賭して消滅させたのを知っているわ』

世界を破壊する亡者? 聞き間違えじゃなければ、レインスター卿は……まぁ普通に倒したんだろうけど、前任の賢者さんはその命を燃やしたのか? 暗殺されていたと思いこんでいたけど、世界を守っていたのか……。

「フォレノワールもあれと戦ったことがあるの?」

『ないわ。でも貴方と組んで負けるつもりもないわ』

フォレノワール……頼もし過ぎて惚れてしまいそうだよ。

はぁ~きっとこれも覇運先生が引き寄せてしまったんだろうな。

神様がこんな試練ばかり与えるなら、他の転生者達にも同じような試練を与えているだろうし……。

そうと決れば、最初からフルパワーで行くしかないな。

「二人とも、あれを倒さないといけなくなったから、ライオネルがいる帝国軍の砦に逃げるんだ」

「一緒に戦う」

「きっと凄い闇の魔石が手に入りますわ」

「遊びじゃないんだぞ!」

さすがにリシアンの発言は容認出来なかった。

「大丈夫。ルシエルの力は借りるけど、私には、私達には戦う準備がある」

「そう、分かって言っているのです。ルシエル様の魔力をお借りすることになると思いますが、きっと力になれるのです」

二人はやけにはっきりと自己主張してきた。

こんなことは魔石を俺から貰う時と魔道具を開発する時以外には見たことがなかった。

『そこまで言うのなら、何をするかルシエルに伝えるべきよ。時間だってあまり無いわ』

フォレノワールが割って入ると、二人に説明を求めてくれた。

「分かった。ぶっつけ本番になるとは思わなかったけど、これを使えばあれに対抗出来る……はず」

ポーラが俺の前に握った手を出して開いて見せると、そこには帝国の宝物庫でポーラが貰った指輪があった。